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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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13/24

13. 5年後

 ミコトとセイラがエラルダにきてから、5年の月日が経ち、2人は15歳になっていた。


 この5年間でいろいろ分かった事がある。


 エラルダには第1エラルダから第5エラルダまで国があり、町や村はたくさんあるが、絶対にどこかの国に所属している。


 どこの国も王制ではなく、というのも、300年前の戦いで王族と貴族は全員亡くなってしまったそうで、各国は争いのない様に、身分制度を廃止して、民主主義で政治を行っている。

 アレンや騎士団員や神官、マリーのような侍女も、全員国家公務員という事だ。


 エラルダでは、15歳で成人となり、15歳で結婚する人も多い。

 そもそも、絶滅しかけた人口を増やすため、結婚、出産はかなり推奨されている。


 異世界なのに、というのは偏見かもしれないが、魔法がない。

 でも昔はあったそうで、古代魔法の研究を各国がしているが、成果は出ていない。

 ミコトの勝手な想像だが、魔法は神様が消してしまったのでは、と思っている。


 聖女のお祈りで力が弱まるとはいえ、魔物はいろいろなところから生まれる。

 各国の騎士団の討伐だけでは間に合わないため、魔物討伐などを生業とする、冒険者という職業がある。

 こういうところは、異世界っぽい。


 当然だが、エラルダと地球の日本では、言葉も文字も違う。

 ミコトとセイラは最初から言葉も文字も理解していたので、これだけは神様に大感謝である。


 時間と暦と季節は地球の日本にとても似ていて、1日は24時間、1月は30日前後、1年は365日、日本ほどの寒暖差はないが、春夏秋冬がある。


 電気や水道はなく、火をおこしたり、井戸や川から水を汲んできたりと、生活が結構大変。

 日本でいう明治時代初期くらいだと思われる。


 ミコトが異世界人だということは、混乱を防ぐために当時関わって事情を知ってしまった人には箝口令を敷き、機密事項となっている。

 ミコトは聖女の護衛のために選ばれた辺境の村の強い女の子、という事になっている。


 国家特別人物という存在は各国に1人〜3人いて、第1エラルダは騎士のロイだが、第2エラルダは代表をやっている人、第3エラルダは古代魔法研究者…と、優秀であれば分野は問われない。

 その中で、誰とも結婚していないのがロイだけらしく、第1エラルダではロイの婚活が問題となっている。




「ロイが今度の定期馬車で帰ってくるぞ」


 第一エラルダ国、騎士団長室で、騎士団長のカイルがミコトに言った。


 15歳になったミコトは、背中まで伸ばした髪をポニーテールにして、騎士団の制服を着て、ほぼ毎日騎士団で勤務をしている。


「そうですか」


 ミコトは、騎士団員派遣に関する予算案の書類をチェックしながら、カイルにそっけない返事をした後、その書類をカイルに渡した。


「これ、計算合ってました」

「ああ、ありがとう…って、ロイが帰ってくるんだぞ? それだけか?」


 カイルは驚いたようにミコトを見る。


「はい。次の書類はこれですか? あ、すでにここ、計算違いますよ」 


 カイルはミコトから書類を受け取ると、差し戻しの紙を貼り付けて、箱に入れた。


「この間まで、ロイはいつ帰って来るの? って言ってたのになぁ」


 カイルは苦笑いをしながら呟いた。



 ロイと兄妹の約束をした後、ミコトはずっとロイの帰りを待っていた。


 ロイが帰ってくるまで、いっぱい頑張ろうと決心もした。


 聖女であるセイラの護衛と、強くなったなって褒められたくて頑張った訓練、ミコトの計算力が意外と高かったことで、騎士団長の事務補佐まで頑張っている。


 女性が全くいない騎士団で、臨時団員という扱いではあるが、ミコトはある意味出世していると言っていいだろう。

 もちろん、それ相応の給金もいただいている。



 でも、ミコトが頑張ろうが何しようが、ロイはこの5年、1回も帰って来なかった。


 最初の1年は、ただ寂しかった。


 その後2〜3年は、何で帰って来ないの! って怒っていた。


 4年目には、諦めと兄妹の約束なんかするんじゃなかったという後悔で、今はもう、怒りとは違う、後悔とも違う、悟りの域まできているのだ。


 そう、ロイは所詮は他人なのだ。


 その他人に、ミコトは勝手に期待して腹を立てていたのだ。


 地球にいた時の、セイラに勝手に期待して腹を立てていた人たちと自分が同じだと気付いた時の、あの気持ちがヒューッと冷める感じ。



「終わったので、今日は帰ってもいいですか?」


「ああ、お疲れ。明日もよろしく」


 カイルは、ロイは本当にバカだなぁ、と思いながら、ミコトに手を振った。




「ロイ、帰って来るそうね」


 聖女の部屋に帰ってきたミコトに、マリーが言う。


 ミコトは溜息をついた。


「それ、今日5回目だよ」


「あら、そう」


 マリーはふふっと笑う。


 マリーは今年で20歳だ。


 相変わらずの銀髪と切れ長のパープルの瞳で、ミコトは、第1エラルダ国一の美人だと思っている。


 マリーは、いろんな人から求婚されているが、誰にもなびかないため、今や謎の美女となっている。


「ミコちゃんは、あんなヤツ、どーでもいいんだよ、ね?」


 セイラは祈祷服に着替えながら言う。


 15歳になったセイラは、美少女っぷりにますます磨きがかり、セイラを一目見ようと他国から訪れる人もたくさんいる。


 地方巡礼の時は、護衛がとても大変だ。


「どうでもいいというか、私とは相入れない人だと理解したというか…」


 ミコトも騎士団の制服を脱ぎながら、答える。


 ロイはこの国の最重要人物である。

 

 異世界人と兄妹ゴッコをしている場合ではないのだ。


「ミコト、また胸が大きくなったわね。服のサイズ、直すから出しておいてくれる?」


「胸、戦うのに邪魔なのに…」


 ミコトはこの1年で急に背が伸び、体も女性っぽくなってしまった。


 もう誰も、ミコトを男だとは思わないだろう。


「私の服も直す?」


 セイラがマリーにきくと、マリーはセイラの胸を見て、「直さなくても大丈夫よ」と微笑んだ。




 ロイが帰ってくる日、ミコトはいつものように書類を抱えて騎士団長室へ向かっていたところを、リントに呼び止められた。


「あれ、ミコト、ロイさんを迎えに行かないの?」


「うん、忙しいし」


 実際、本当に忙しい。


 カイル騎士団長がロイを騎士団長にして引退するとのことで、引き継ぎの書類が大量にあるのだ。


「なんか、大人になっちゃって…」


 リントは複雑な表情をする。


「リントも忙しいでしょ? 副騎士団長になるんだし」


「俺は元々ロイさんのせいで副騎士団長代理をやっていたんだから、あんまり変わらないよ」


 それもそうか。

 ロイが5年帰って来なかった事の、一番の被害者は、リントかもしれない。


「俺もカイル騎士団長も停留所まで行くけど、本当に行かないの? 国家特別人物であり次期騎士団長のロイさんを迎えに行くという仕事なのに?」


 リントの言葉に、ミコトは、ハッとした表情になった。


「仕事! わかった。書類置いて、行くよ。」


 パタパタと走り去るミコトを見て、「ま、連れ出しは成功か」とリントは呟いた。




 リントが停留所に着いた時、もう北の大地からの馬車は着いていて、帰還した騎士たちを家族や仲間が囲んでいた。


「ロイさん!」

 リントは大声を上げる。


「おお! リントじゃん! しばらく見ないうちに、男前になったな〜!」


「ロイさんはあまり変わってないですね」


「だろ? ストレスなくて、老けなかったー」


 北の大地での勤務は、戦闘好きのロイの性に合っていた。


「こっちはストレスだらけですよ!」


「ごめんごめん、これからは覚悟決めてやるからさ」


 これは、ロイの本当の気持ちだ。

 流石に国が猶予をくれたのは分かっていた。


「リント、ミコト連れて来いって言っただろう?」


 騎士団の小隊長イワンは、まわりを見回しながら言う。

 イワンはロイやリントより年上の30歳の男だ。


「もうすぐ来ますよ」


「ミコトかぁ! 大きくなったんだろうなー」


 ロイは呑気な声で言う。


 ミコトはずっと待っていたけどな…と、リントがミコトの事を少し気の毒に思っていると、イワンはニヤニヤと笑いながら、ロイの肩をガシッと抱いた。


「そりゃあ、もう、特に胸が!」


 周りにいた騎士団員たちは、あー、と呆れた顔になる。


「え!? 胸板がそんなに厚くなったの? どんな大男になったんだよ、ミコト」


 周りにいた騎士団員たちが、あ? という顔になる。


 リントはここに来て初めて、ロイがミコトをまだ男だと思っていることに気がついた。


「あの、ロイさん、ちょっとミコトに会う前に言っておきたいことが…」

「ロイ! やっと帰ってきたな!」


 リントが言いかけたちょうどその時、カイルの声がした。


 振り向くと、カイルとミコトが一緒にこちらに向かってきている。


「もう、なる様にしかならないか」


 リントは溜息をついた。

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