127.お見舞いと報告
朝礼の後、医師団本部の病棟へ、アレンのお見舞いと報告に、ロイとミコトとリントで行く事になった。
医師団本部は、政務棟のすぐ横に位置している。
到着すると、アレンの病室には、マリーがいた。
「リントから、今日の午前中に報告に行くって聞いたから、時間を合わせてみたのよ」
マリーは微笑む。
確かに、報告なんて、一度で済んだ方が良い。
さすがマリーだ。
「寝たままですまんな。報告を聞こうか」
アレンのベッドの斜め後ろの棚の上の花瓶にバラが飾ってあるのを見て、ロイとミコトとリントは、「あ…」と言った。
どうやらマリーは、ソマイからのバラを、アレンのお見舞いに使い回したようだ。
無駄にはしない。
いろいろさすがである。
「どうした?」
「いえ、報告します」
ロイは、バラから目を逸らし、アレンに報告をはじめた。
報告を聞き終わったアレンは、深い溜息をついた。
「みんな、ご苦労だったな…」
後味の良い話ではないから、仕方がない。
「私、お祖父様を尊敬するわ。あんな気持ち悪い変態クソ狸オヤジと外交をしているなんて」
マリーはアレンに微笑む。
悪口のキレが違う、とロイとミコトとリントはマリーを尊敬の眼差しで見る。
アレンは苦笑した。
「あー、まあ、リオは20歳から代表をやっているからな。初めから腹に一物ある若造だったが…」
アレンはミコトを見た。
「ミコト。カーサやソマイは、ミコトを敵視はしていないようだが、あの2人は決してリオを裏切らないんだ。あまり肩入れはするなよ」
「か、肩入れなんて…」
していないが、同情したのは事実である。
うつむいたミコトを見て、ロイは「決してって?」とアレンに言った。
アレンは、ふぅと息を吐く。
「あまり言いたくはないが、カーサとソマイは、いわゆる、貧民街の生まれなんだよ」
アレン以外の全員は、目を見開いた。
残念な話だが、この世界にも、貧富の差はあるのだ。
「娼館に売られるカーサを助け、妻に迎えたのがリオなんだ。そして、カーサの家族を援助し、ソマイを騎士養成所に通わせた。カーサもソマイも、リオには多大な恩がある」
そ、そうだったのか…。
全員、押し黙ったまま、下を向く。
「だが、この事とミコトを狙うことは、全く別件だ。切り離して考えるように。特に、ミコト」
「は、はいっ!」
ミコトは背筋を伸ばして返事をした。
アレンは、ミコトが情に流されやすいことを、よく知っている。
だから、今まで、何も言わなかったのだろう。
「しかし、よく聖女が暴れなかったなぁ。ミコトに求婚なんて、怒りそうなものだが、聖女も成長したってことかな」
アレンは話題を変えるように、アハハと笑った。
「ね、寝てたみたいなので…」
ミコトは目を逸らしながら、ぼそっと答える。
「聖女は、寝ながら起きて見ているフリが出来るそうですよ」
リントは真顔でアレンに説明する。
アレンは口をポカンと開けた。
「ま、待て! それじゃあ、今までの式典は、もしかしたら、寝ていたってことか!?」
その可能性は大いにある。
というか、寝ていたのだろう。
全員の様子を見て、アレンは体を起こした。
「な、何てことだ! あたっ、腰がっ!」
「お祖父様!」
ウチのセイラがすみません…。
ミコトは心の中で謝った。




