125.結婚してください
交流戦後の夜は、久しぶりに、ロイとミコトは自宅で過ごす事になった。
甘い夜を…と言いたいところだが、ミコトにはやらなくてはいけないことがある。
「と、いうことで、まだ本は読んでないけど、神様に会いに行こうと思います!」
ミコトは、ベッドの上で、ロイに宣言した。
「あー、そう…」
ロイは、ガックリと肩を落とした。
ミコトはどうしても、ロイの力をミコトが使う事に、納得出来ないらしい。
「なので、力を下さい!」
「どうやって?」
ロイの問いに、ミコトは恥ずかしそうにうつむく。
「キ、キスとかっ?」
この子、本気だろうか。
ベッドの上で、キスをねだって、何もするなと言っているのだ。
ロイは腕を組んで、ミコトを見た。
「俺は、力に限らず、全部ミコトにあげたいと思っているよ」
ミコトはパチパチと瞬きをする。
「全部?」
「そう、全部。力もお金も体も…」
ロイは、命さえも、という言葉を飲み込んだ。
「だから、俺の力はコントロールを覚えて使っていいし、騎士服の仕立ても俺のお金でやってくれたら良かったのにって思ってる」
ミコトは少し考えて、ロイに向き直った。
「あの、じゃあ、欲しい言葉があるんだけど…」
「言葉?」
ミコトは頷く。
「今日、第2の変態最低代表にね、妻にって言われた時に思ったの」
さりげなくかなり悪口入ってるな、とロイは頷く。
「ロイから結婚してくださいって言われてないって」
ロイは「あ!」と頭を押さえた。
「もう結婚してるけど、言ってほしいなぁって…。あんな奴のウソゼリフ消してほしいの」
ロイは天井を仰いだ。
「確かに言ってない。俺、最低だ…」
結婚してほしい、という言葉を、リオに先に言われてしまった。
花束でさえ、ソマイに先を越された。
ロイは、ミコトの肩に、両手を置いた。
「ミコト、俺と結婚してください」
ミコトの黒い瞳に涙があふれる。
「はい…、はい!」
ミコトは涙を流しながら、満面の笑みで答える。
こんなに喜んでくれることを、何故今までやらなかったのだろう。
「ミコト、他には? 他にして欲しいこと…、ミコトの世界のことでもいいから…」
ロイはミコトの肩に手を置いたまま、懇願するように言った。
ミコトの世界のことで、結婚といえば…。
「あのね。私の世界では、結婚する2人は、お揃いの指輪をするの」
ミコトの父と母である、大吾と琴子も同じ指輪をしていた。
この世界には、指輪はアクセサリーとしては存在しているが、結婚に使用する風習はないようだ。
ロイは頷く。
「分かった。指輪を買おう」
即決で買うことになった!
でも、結婚指輪には憧れていたので、嬉しい。
そういえば、元の世界では、婚約も指輪だった。
この世界は、あの短剣?
それにしては、短剣を持っている女性を町で見かけたことがない。
「あの、婚約の短剣って、みんな意味を知ってるのに、持ってる人あまりいないよね?」
ロイでも、意味を知っていたし、ニアも知っていた。
ロイは、「あれね」と言う。
「短剣は危ないし、扱える女性はいないからね。今は小さな短剣の飾りがついたネックレス? をあげる人が多いんだよ」
実は、お値段も、ネックレスの方がかなり安価である。
「そ、そうなんだ!」
「ミコトは短剣扱えるから問題ない…そうだ、そのネックレスも買おう」
買うもの増えた!?
「他にもいいものがあったら…」
ミコトは、両手をぶんぶんと横に振った。
「も、もう十分! ありがとう!」
ロイは「そう?」と不満げに頷く。
「明日の午前中に、報告も兼ねてアレンさんを見舞う予定なんだ。一緒に行って、帰りに買いに行こう」
ミコトは、勤務中では?と思ったが、頷いた。
騎士団長であるロイは、時間外勤務ばかりである。
少しくらい、いいだろう。
それにしても、ロイは、本当にミコトに何でもあげたいのかもしれない。
なんか、愛されている…よね…?
「えーと、それでミコトは今夜は神様のところに行くんだっけ…?」
ロイの言葉に、ミコトは我に返った。
「あ、うん。でも、やっぱり、今日はやめて、本読んでからにしようかな…なんて…」
ミコトは、しどろもどろに答える。
「じゃあ、今夜は二人で過ごそうか?」
ロイはミコトの顔を覗き込む。
ミコトは小さく頷いた。
ロイは、よし! と心の中で頷いていた。




