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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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122/191

122.交流戦開始

 第2エラルダ国の騎士団と、代表のリオ、奥様のカーサが、第1の騎士団に到着したのは、午後1時だった。


 国家特別人物で騎士団長であるロイと、その妻のミコト、代表名代のマリーの3人がお迎え役である。



 第2エラルダ国代表で国家特別人物であるリオは、目を見開いた。


「なんと…。アレンさんに、こんなに美しいお孫さんがいらっしゃったとは…! マリーさん、お会いできて光栄です」


 マリーはニッコリと微笑む。


「こちらこそ、お会いできて光栄です。本日は遠路はるばる第1までお越し下さいまして、本当にありがとうございます」


 第2の騎士団員は10人ほどいたが、ほぼ全員が、マリーに見惚れている。


 さすがマリーだ。

 いるだけで、外交が成立している。


 ただ、リオの奥様であるカーサの視線が痛い。

 ミコトはカーサに挨拶しようと、一歩前に出た。

 すると、ミコトの目の前に、突然、真っ赤なバラの花束がずいっと、登場した。


「ミコトさん! どうぞ受け取ってください!」

「ええっ!?」


 驚いたミコトが目線をあげると、そこにはバラの花束を差し出すソマイがいた。


 ちょっと、意味が分からない。


 既婚者のミコトに、バラの花束を渡す意味が、全く分からない!

 しかも、旦那様が隣にいるのだ。


 第2の騎士団員たちも、驚きを隠せない様子でこちらを見ている。


「ミコトさんのご自宅には、花がたくさんありました。花がお好きなのかと思いまして…」


 ソマイはニッコリ笑う。


 なるほどね。

 お土産、ということだ。

 セイラが略したとおり、馬鹿イケメンだ。


 ミコトはニッコリ微笑んで、バラの花束を受け取った。


「ありがとうございます。騎士団長室に飾りますね!」


 騎士団長室をかなり強調して言うと、バラの花束をロイにバサっと渡す。

 これで、絵面的には、ソマイがロイに花束を渡したように見える。

 ロイは花束を抱えると、笑顔を引きつらせて「ありがとうございます…」と言った。


 その後、ミコトとカーサが挨拶をし、ロイとリオが挨拶をして、会場である練習場に向かったのだった。





「聖女起きて! 第2が来た!」

「んあ?」


 セイラは、練習場の聖女の席で寝ていたところを、リントに椅子を揺らされて目を開けた。


「よだれふいて!」


 リントに言われて、セイラは袖で口元をゴシゴシとこする。

 コランとイワンは、セイラをあまり見ないように目を逸らす。


「そんなんで、試合観戦できるの? さすがに寝てるのはフォロー出来ない…」

「ミコちゃんの試合以外は、聖女の渾身の力で見てるフリをするからだいじょぶ!」


 セイラはドヤァと笑ってリントに言う。

 聖女の渾身の力をそんな事に使って欲しくない、とリントとコランとイワンは溜息をついた。


 セイラはスッと席を立つ。


「ああ、聖女様! お会い出来るのを楽しみしておりました!」


 リオは両手を広げてセイラに挨拶をする。

 セイラは祈祷服のスカートを両手でつまんで礼をする。


「本日はご招待いただきありがとうございます。わたくしもこの2国の交流戦を心待ちにしておりました」


 セイラの笑顔に、リオは感嘆の声を上げる。

 リオは、本当に聖女という存在を敬っているのだろう。

 しかしその聖女の笑顔と言葉の9割は嘘である、とリントは心の中で思う。



 練習場の南側に急遽作られた観覧席、と言っても椅子を並べただけだが、向かって右側にマリー、次にセイラ、リオ、カーサ、の順番で着席する。


 護衛のため、リオとカーサの間にソマイが立ち、セイラの後ろにリントが立つ。


 練習場の東側に、椅子はないが、第2の騎士団員が座り、西側と北側に第1の騎士団員が座った。


 第1も基本通常勤務のため、観戦は20名程だ。

 ロイとミコトは、試合に出るので、他の団員たちと一緒に適当に座る。


 ロイはバラの花束を持ったまま座るので、周りの団員たちを困惑させている。


 第1の審判は中隊長のコランで、第2の審判は、小隊長のサンスという40代の黒髪色黒の大男だ。


 時間もないので、代表の挨拶等はない。


 コランは対戦表を読み上げる。


「それでは第1試合を始めます! 第1エラルダ国10代代表はミコト。第2エラルダ国10代代表はクリス」


 ミコトとクリスと呼ばれた男は、練習場の中央に出る。


 クリスは19歳で、190センチはあろうかという長身だ。

 筋肉もモリモリとしている。


 女性のミコト相手に、この人選。

 第2は勝つ気満々である。


 クリスはミコトを見て、ほう、と言った。

 挨拶の時は遠目でよく分からなかったが、巨乳でかなりスタイルの良い美人である。

 尊敬するソマイ団長が入れ込んでいるのも納得だ。

 あの国家特別人物である第1の騎士団長の妻らしいが、不仲の噂があるし、実際2人は会話さえしていない。


 この女性を、か。

 少々、罪悪感はある。


「はじめ!」


 コランの合図に、練習場の2人は相手に向かってダッシュした。


 ちなみに、試合時間は10分。

 まいったと言ったら負け。

 相手をダウンさせたら勝ち。

 その他審判に従う事になっている。


 ミコトはクリスと木剣で2〜3回打ち合うと、バッと離れた。


 試合を見ていたロイとリントは、ミコトの普段取らない行動に、違和感を感じた。


 ミコトは、マズイ、と思っていた。

 ロイの力がまだ残っているのだ。


 様子見で軽く打っただけなのに、かなりの力が出ていた。

 このままでは、小隊長たちのように、クリスを半殺しにしてしまうかもしれないし、なんだか、ドーピングのようでもある。

 

 2〜3回打ち合って分かったが、クリスはパワーはあるようだが、スピードが遅い。

 いつものミコトで十分勝てる相手だ。

 それなのに、ドーピングは不本意である。



 クリスは、馬鹿力の女だ、と思っていた。

 木剣を持つ右手がジンジンとしている。

 しかし、やはり女である。

 恐れをなしたのか、かなりの間合いをとっている。


 クリスは迷う事なく、ミコトに向かってくる。

 ミコトは仕方なく全ての剣を受け止める。

 きっと体格から、クリスは馬鹿力なんだろうけど、今のミコトにとっては、全ての剣が軽い。



 ロイは試合の様子を見て、まだ力が出過ぎているのか、と頷いた。

 しかし、あのクリスとかいう男、ミコトのお腹ばかり攻撃しているのは、どういう事なのだろう。


 ミコトは、変だな、と思っていた。

 クリスはお腹ばかり狙ってくるのだ。

 全て受け流しているからダメージはないが、何だか不自然である。

 顔を避けているとも思えない。


 すると突然、「ストップ!」という声が響いた。

 この声は、審判のコランである。


 ミコトとクリスは、試合を止めて離れる。


「すみません、ミコトの腹部を攻撃するのは、やめてもらえませんか?」


 コランの言葉に、クリスは驚いた表情をした。

 ミコトも瞬きをする。


「それは、おかしくはないですか?」


 コランに意見したのは、クリスではなく、観戦していたリオだ。

 リオはその場で起立している。


 コランはリオに向き直る。


「ミコトは女性です。腹部にダメージを受けると、妊娠・出産に悪い影響が出るかもしれません」


 ミコトとロイとリントは、ハッとなった。

 

 そういう事か!

 リオは、アリアンの子孫を作らせない気なのだ。


 そもそも、ミコト指定で試合を組んだのも、そういう意図あってのことか。


 セイラとマリーも目配せをする。


 リオは手を口元に当てた。


「そういう話でしたら、やはり、女性に騎士団員なんて、無理、ですよね。お辞めになったらどうですか?」


 うわぁ…。


 言いたい事は分かるが、日本だったら完全に女性差別でアウトな発言である。

 今すぐ代表を辞任させられるだろう。


 コランは、理解出来ない、という表情をしている。


「いいえ。ミコトは臨時団員ですし、普段は内勤です。第1では、ミコトに危険が及ぶような仕事はさせていません」


 コランは堂々とリオに意見する。

 リオは顔をしかめた。


「これは、試合ですよ? 女性に配慮しながらやれと?」


「はい。親交のための、交流戦です。力ある男性が、職場の女性に配慮するのは、当然です。男性への急所攻撃だって、暗黙の了解でないでしょう? 同じ事です」


 すごい!

 ミコトはコランを尊敬の眼差しで見ていた。


 娘がいて、出産を控えているからだとしても、こういう考え方が出来るなんて、素晴らしい。


「素晴らしいですわ!」


 声を上げたのは、セイラだった。

 セイラは立ち上がり、両手を前で合わせて、祈るようなポーズをとった。


「実はわたくしの元いた世界では、コランさんが言われた考え方なのです。わたくし、感動で涙が…」


 リオは隣に立っているセイラを見て、ぐっと黙る。

 聖女の意見に対立する訳にはいかないのだろう。


「分かりました…。クリスも、そのように…」


 リオは渋々席に座った。


「ご配慮、感謝いたします」


 セイラはリオを見て微笑むと、優雅な動作で着席をした。

 マリーは、ホッとした表情をしている。


 コランも「ご配慮ありがとうございます」とリオに一礼すると、ミコトとクリスを見た。


「試合を中断させてしまい、すみませんでした。それでは、再開します。はじめっ!」


 ミコトとクリスは、再び、木剣を構える。


 ミコトは、もうコイツどうなってもいいか、と思っていた。

 リオの指示とはいえ、ミコトの腹部ばかり狙ったダメ男だ。

 半殺しやドーピングを気にしていたが、そんな男に遠慮していた事自体、馬鹿馬鹿しくなってしまった。

 

 ミコトはいつものスピードでクリスに剣を繰り出し、本当にあっという間に、クリスを地面に叩きつけた。


 意識は、ないようだ。


 コランとサンスが、クリスの意識がない事を確認して頷く。


「勝者、ミコト!」


 うおー!と歓声が上がる。


 リオは間抜けな顔をして目を見開いている。


 カーサとソマイは「おお!」と感嘆の声を上げている。


 セイラとマリーは優雅な仕草で拍手をしている。


 リントは無表情に見えるが、笑いを抑えている。


 ロイはバラの花束に顔を埋めて、体を震わせている。

 完全に笑っている。

 というか、花束、まだ持っていたのか。


 担架で救護班に運ばれていくクリスを見て、ミコトは、次はリントだから、セイラの護衛を交代しなくては、と思っていた。

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