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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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119/189

119.名代はマリー

 第2エラルダ国騎士団との交流戦が、明日に迫っていた。


 ミコトは、昨日まで、ロイによる交流戦に向けた特訓を受けていた。

 特訓は初日が一番軽く、日を追うごとに厳しくなっていった。


 アリアンの記録を読もうと思っていたミコトだったが、聖女の部屋に帰ってきた時にはすでにクタクタで読む事が出来なかった。


 ロイもまた、小隊長への訓練と指示に忙しく、一緒に過ごせたのは特訓の初日の夜だけだった。


「明日は交流戦ね。今日はもう寝た方がいいわ」

 

 聖女の部屋で、マリーはミコトに言った。

 時間は午後9時。


「ミコちゃん、添い寝してあげるよ」


 セイラはベッドに寝転がり、おいでおいでという仕草をする。


「セイラも明日は観戦で出席でしょ?」

「ミコちゃんの試合以外はどーでもいいもん。見てるフリする」


 セイラは、第2を聖女を召喚する国にしたいリオが聞いたら、卒倒しそうなことを言った。


 でも、聖女は元々普通の女の子なのだから、これが現実である。


 と、その時、ドアをコンコンとノックする音が聞こえた。


「ロイとリントとキダンさんだ」


 ミコトは、マリーがドアを開ける前に言う。


「なんかミコちゃん、人間離れしてきたねー」


 セイラは呆れ顔だ。

 マリーはドアを開けて、3人を確認すると、「正解ね」と言い、腕を組んでキダンを睨みつけた。


「お父さんは、聖女棟は禁止よね?」


 キダンはリントの後ろにサッと隠れる。


「ほらぁ! マリーに入れてもらえないって言ったじゃん!」


 ロイとリントは苦笑した。


「マリー、ちょっと緊急事態でさ。今日だけいいかな?」


 ロイは両手を前で合わせる。

 マリーは溜息をつくと、「どうぞ」と言った。


 ロイはミコトとセイラがベッドにいるのを見て、気まずそうな顔をする。

 ミコトはベッドからぴょんと飛び降りた。


「大丈夫! まだ寝ないよ!」


「あー、実は、ミコトと聖女には直接関係ない話なんだよ。だから寝ちゃってもいいよ」


 ミコトは首を傾げた。

 マリーは3人をテーブル席に座らせると、お茶の用意をしながら、「私ね」と呟いた。


「結論から言うと、マリーに明日の交流戦の観戦を代表の名代でしてほしくってね?」


 キダンの言葉に、マリーは顔をしかめた。


「理由をきいてもいいかしら」


 マリーは3人の前に、お茶を置く。

 キダンはロイをチラリと見る。

 ロイは頷いた。


「アレンさんがギックリ腰で立てなくなっちゃったんだよ」


「えっ!?」


 さすがにマリーは驚いた様子だ。


「お祖父様、大丈夫なの!?」


 ロイは苦笑した。


「結構元気だったから安心して。ただ、座ってる姿勢が一番痛いらしくて…」


 それでは観戦は無理だろう。

 ミコトとセイラも顔を見合わせる。


「でも、それだったら、政務官の誰かが代わりに観戦すればいいじゃない」


 マリーはベッドの方へ来ると、ミコトの隣に腰掛けた。

 確かに、とミコトとセイラは頷く。


「それは、込み入った事情があるらしくて…。ここからはキダンさんが説明するよ」


 ロイはキダンを見て言った。

 キダンは頷くと、話し始めた。


「まず、どのエラルダ国にも、副代表がいないのはみんな知っているよね」


 ロイ以外の全員が頷いた。

 ロイは表情を変えていないが、知らなかったのが丸わかりである。


「これは、副代表の横領が立て続けに起こったからなんだけど、その代わりに、名代制度があるんだ。あー、ロイ君は頭に力回して聞いてくれる?」

「普通にちゃんと聞いてますよ!?」

「聞いてるのと理解してるのは違うから」


 キダンの言葉に、ロイは仕方なく目を閉じる。

 キダンはお茶を一口飲んだ。


「でね、この名代制度も悪用できないように、期限が1ヵ月に定められてるんだよ」


 そういうキダンは、先日普通に悪用していた気がする。


「逆にいうと、1ヶ月間、名代は原則同じ人がやるんだ」


 マリーは溜息をついて、「もう分かったわ」と言った。


「偽造でも、私が先日第4で名代を名乗ってしまったから、よね」


 なるほど、とミコトとセイラは顔を見合わせて頷く。

 ずっと黙っていたリントは、スッと手を上げた。


「第4でマリーが名代やったことなんて、第2は知らないんじゃないですか?」


 どうやらリントは反対らしい。

 きっとマリーを第2の騎士団に見せたくないのだろう。


「それがさぁ、あの第4の代表、ペラペラとマリーの事言いふらしてるんだよねー。スッゴイ美人だった、また会いたいって」


「は!? もう二度と会わせないよ!」


 リントはイライラして叫ぶ。

 それにはミコトも同感だ。

 親子で女好きも大概にしてほしい。


 キダンはリントに、まあまあ、と言う。


「それで、その噂をリオはすでに耳に入れちゃってるんだよ。リオも美人大好きだからさぁ」


 リントはテーブルをドンと叩いた。


「どいつもこいつも!」


 ミコトもウンウンと頷く。

 リオの奥様であるカーサも美人だし、3番目の20歳の奥様も美人と聞いている。

 ホント、どいつもこいつもだ。


 マリーは、ハァーと息を吐いた。


「仕方ないわね。本当に、お父さんと関わるとロクなことにならないわ」


 全くその通りである。


「お父さんも、チェコさんには振られるし、ロイ君には置いてかれるし、傷ついてるんだよ? 優しくして欲しいなぁ」


 そう言うとキダンは泣き真似をした。

 しかし、全員呆れ顔である。


 マリーは思い出したように、ミコトを見た。


「そうだ。明日の早朝に、ヘアメイクのお二人がここに来るのよね? 私のメイクもお願いしてもいいかしら?」


「もちろん! ウミノさんもネルさんも、やりたがると思うよ!」


 ミコトとマリーのやり取りを聞いて、ロイとリントは席を立った。


「え!? ミコト、メイクして試合するの!?」

「マリーはそれ以上綺麗にしたら、危ないから!」


 2人で同時に話さないで欲しいが、言っている意味は分かる。


「えーと、メイクは汗で取れちゃうから、少しだけ。実は騎士服を仕立てて貰っていて届けに来てくれるんだ」


 ミコトは、先日第4でブス扱いされたことを、結構気にしていた。

 しかし、フルメイクやドレスで試合をする訳にはいかない。


 この事をウミノとネルに相談したら、男性用と女性用では洋服の裁断と仕立てが違うので、男性用の騎士服では、野暮ったく見えてしまうと指摘を受けたのである。


 それならと、ミコトのお金で、同じ生地とデザインで騎士服を仕立ててもらうことにしたのだ。


 自分で働いたお金で、綺麗になると決めていたし、ちょうど良かった。


「騎士服? そう、なんだ?」


 ロイはよく分かっていないようだ。


 マリーはふふっと微笑んだ。


「私は代表名代を名乗るなら、恥ずかしくない格好をしたいだけよ?」


 リントはぐっと黙る。

 ミコトはマリーを見た。


「私も綺麗なマリーを変な男たちに見られるのは嫌なんだけど、マリーに試合を見てもらえるなら、すごく嬉しいかも! カッコいいところ見せたい!」


 マリーはミコトのちゃんとした試合をほぼ見たことがないのだ。

 マリーがカッコいいと思ってくれたら、嬉しすぎる。


「ちょっと、ミコト! それ、俺のセリフだよね!? マリーにカッコいいところを見せるのは俺! お前は前座!」


「前座!? ひどっ!」


 ミコトとリントは睨みあう。

 

 また、妙な気の合い方をしてるな、とロイは苦笑する。


「2人の試合、楽しみにしてるわね」


 マリーはクスクスと笑った。

 リントは椅子に仕方なく座ると、ロイを見た。


「言おうと思ってたんですけど、ロイさんは明日、ミコトと喋らないでくださいね」


 ロイは驚いた。


「え!? なんで?」

「なんでって…」


 リントは溜息をついた。


「バレバレなんですよ! もう、ミコト大好きって!」


 ロイはハッとなり、ミコトは赤面した。


「あ、明日は抑えるから…、話すくらいは…」


 リントは首を横に振った。


「無理です! ここ数日、一緒に訓練をしてよく分かりました。ミコトに話しかけるだけでも、好きが出まくってます!」


 そうだっけ!?

 ミコトは顔を手で覆った。


「あー、ロイ君はそうだよね。演技できないだろうし、話さないのが一番かも」


 キダンもニヤニヤしながら言う。


「もういっそのこと、ケンカしてる設定でいきましょう。今ここで、2人はケンカしました!」


 リントはロイとミコトを見て言った。

 ケンカしてないのに、ケンカしたことになった!?


 ロイは右手をばっと挙げる。


「待った! 明日の午前中は話してもいいよね? 第2が来るのは午後だから…」


 そうなんだよね。


 第2は早朝に自国を馬車で出て、午後に交流戦をして、すぐに帰るという強行スケジュールなのだ。

 余程第1には泊まりたくないらしい。


 リントは頷いた。


「まあ、そうですね。じゃあ、明日の午前中に騎士団長室でケンカすることにしましょう」


 ケンカは必須らしい。

 そんなにロイから好きって出てるのだろうか。

 ミコトにはよく分からない。



 結局ロイとリントとキダンは、10時頃には帰り、ミコトは10時半には眠りについたのだった。

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