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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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118/191

118.特訓

 騎士団の基本就業時間は、8時から18時である。

 休憩はお昼に1時間だ。


 しかし、騎士団は、いわゆるブラック企業だ。


 各部署の警備や管轄区域の治安維持が主な仕事のため、全くこの時間通りに勤務できないのである。


 とはいえ、18時以降は時間外だ。


 ロイによる、交流戦に向けての特訓は、交流戦まで毎日、練習場で18時から行うことになり、早速、イワンはロイに練習場の隅にまで吹っ飛ばされていた。


 イワンはロイより体躯がいい。


 そのイワンをあそこまで吹っ飛ばすなんて、馬鹿力にも程がある。


「イワンさんは、力に頼りすぎです。防御も浅い」


 ロイはコランに特訓メニューを渡す。


「こんな感じでお願いします。3日後に仕上がりを見ます」

「了解」


 どうやら、イワンはコランと特別メニューのようだ。

 イワンはゴホゴホと咳き込みながら、コランに起こされている。


「次は、リントね」

「はい」


 練習場には、就業後に勤務のない20人程の団員が見学に来ている。

 騎士団長と副団長の試合だ。

 見るだけでも稽古になる。

 もちろん、ミコトも最前列で見学だ。


「いつでもいいよ」


 ロイの言葉に、リントはダッシュする。

 木剣を低い位置から繰り出す。


「早いっ!」


 団員たちがざわついている。

 

 リントの次々に繰り出す剣をロイは全て自分の木剣で受け流し、納得したように、リントをイワンのように吹っ飛ばした。


 吹っ飛ばされたリントは、イワンのように壁にはぶつからず、くるりと体を回転させて着地する。

 ミコトは、あの着地を真似したい、と思っていた。


「リントは、まあまあかな。強いて言えば、攻撃が単調すぎるかな。あと、間をとる癖をなおそうか」

「…はい」


 どこに間をとっていたのか、さっぱりわからない。

 見学の団員たちも、間なんかあったか? とざわざわしている。


「次はミコト」

「はいっ!」


 やたら元気なミコトに、ロイは笑うのを何とか抑える。


「いつでもいいよ」


 ミコトは頷くと、リントのようにダッシュした。


 剣技だけじゃなく、体術も使う!

 実際、ミコトは体術の方が得意なのだ。

 剣を持った相手だとリーチで負けるので、あまり使わないが、今回の特訓では、ロイは吹っ飛ばす時以外は仕掛けてこないので有効なはず!


 ミコトは体勢を低くして、剣を薙いだ後、足払いを仕掛ける。

 ロイはひょいとジャンプしてかわす。


 でも、かわされるのは、想定内である。

 ミコトも素早くジャンプして、剣でロイの顎を狙う。

 ロイは体を反らしてかわす。


 今度は肘でロイのお腹を…!

 ロイはミコトの両手首をがっと掴んで、ミコトを地面にふんわり立たせた。


 あれ、吹っ飛ばさないの?


「えーと、スピードも技もまあまあなんだけど、この体格差で体術は力で押し負けるからお勧めしない。次は剣だけで来ること」

「は、はいっ!」


 ミコトは再び元気に返事をして、そうか、剣だけでいけば…と頷いた。


「リント、もう一度」

「はい」


 ロイとリントはもう一度試合して、リントは再び吹っ飛ばされる。

 リントは今度もくるりと回転して着地をしている。

 ロイはリントに、やっぱり間が…と伝えている。


「ミコト、どうぞ」

「はいっ!」


 ミコトは、言われた通り、剣だけでロイに攻撃を続ける。

 ミコトも速い! と団員たちが話しているが、ロイは余裕で受け流している。

 ロイは先程と同じく、ミコトの両手首を掴んで持ち上げると、そっと地面にミコトを立たせた。


「リントより間が大きい。自分で気付いてる?」


 ロイに言われて、ミコトは「これとこれの間?」と、剣を振る。


「分かってはいるんだ。じゃあ次はそこ気をつけて」


 終わり?

 リントより短くない?

 吹っ飛ばされてないし…。


「何か言いたい事があるなら言って?」


 ミコトの返事がないので、ロイはミコトを覗き込んだ。


「あの、私も吹っ飛ばされたいです」


 ロイは、そんなことか、と溜息をついた。


「ミコトは吹っ飛ばしません」

「なんで!? くるって着地できるよ!」


 ミコトは壁を指差して訴える。


「着地の練習じゃありません」

「ちょっと、ミコト! くだらない事言ってないで俺に代わって! もう少しで掴めそうなんだから!」


 リントはツカツカと歩いて、ロイとミコトのところに来る。


「リントの方が時間が長いじゃん!」

「知らん! ミコトの実力不足だ!」

「なっ!?」


 ミコトとリントは睨み合う。

 ロイはハァーと息を吐いた。


「分かったよ。もう2人同時にかかってきていいよ」


 ミコトとリントは「同時?」と呟くと、顔を見合わせて頷いた。


 2人はパッと離れると、ロイに向かって木剣を構えた。


 ロイは、今までケンカしてなかったか? と驚く。

 

 ミコトとリントは同時にロイに向かって剣を繰り出した。


「おお!?」


 ロイはリントの剣を木剣で受けながら、ミコトの剣を全て避ける。


 見学していた団員たちの歓声が上がる。


 2人ともかなりのスピードで、息ピッタリで合わせている!?


 リントがふっと体を反らせると、その陰からミコトが剣を振る。

 ミコトがしゃがむと、上からリントの剣が振り下ろされる。


 これは、危ないか!?

 

 ロイはまず、リントを足で蹴り吹っ飛ばす。

 壁までは飛ばず、リントは着地した途端にロイに向かってくる。


 ミコトを吹っ飛ばしたくない。

 リントの攻撃を受けながら、ミコトの腕を掴み、地面に叩きつける。


「あぅっ!」


 と、同時に向かってきたリントを再び壁まで吹っ飛ばす。


 力が強すぎたようだ。

 リントは回転できずに、壁に叩きつけられた。


「がっ!!」


 練習場は、しんと静まり返る。


 副団長とミコトの連続攻撃をものともせずに、団長は2人を壁と地面に叩きつけたのだ。


 特別メニューのイワンとコランも、口をあんぐりと開けている。


「いったぁ…。ロイ強いよー」


 砂まみれになったミコトが起き上がる。


「くっそー。割といい線いったと思ったのに…」


 リントも起き上がって歩いてくる。


 その通りだ。

 かなり、いい線だった。


「あのさ、何で2人はそんなに息ピッタリなの? こういう練習してるの?」


 ロイはミコトとリントの顔を交互に見た。

 ミコトとリントは顔を見合わせる。


「そんな練習はしてないですよ。ミコトは単純だから合わせやすいんです」

「練習はしてないけど、リントならこう来るかなって?」


 2人同時に喋るので、ワケがわからないが、練習せずに、ここまで息が合うらしい。


「あー、そうなんだね…」


 センスが似ているのか、5年の月日がそうさせるのか、ロイとミコトはすれ違いばかりだというのに…。


「今日はここまでにしようか。明日またこの時間で」


 ロイはパンと手を叩いた。

 ミコトもリントも「はい」と頷く。


「団長、練習場の整備は私たちでやりますよ。試合見学させてもらったので!」


 周りで見学していた団員たちが、片付けを買って出てくれた。


「じゃあ、お願いします」


 ロイはそう言うと、ミコトをひょいと抱き上げた。


「ふえっ?」


 驚いて変な声を上げたミコトに構わず、ロイはスタスタと歩き出す。


「一緒に自宅に帰ろうね。砂まみれだから、お風呂に入れてあげるから」


 ミコトは赤面した。


「い、いいよ! 急にどうしたの?」

「ミコトはお風呂沸かすの苦手でしょ?」

「そうだけど…え? え?」


 困惑するミコトを抱えたまま、ロイは練習場を出て行った。


 残された団員たちは、ポカンとしている。


「あれは、ヤキモチやいてますね」


 コランはリントの横に来て、ぼそっと呟く。

 リントは「はあ?」と言う。


「副団長がミコトと息がピッタリだから…。俺たち昨日のような目に遭うの嫌なんで、ほどほどにして下さいね」


 コランの言葉に、イワンも大きく頷いている。


 リントは「めんどくさ…」と溜息をついた。

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