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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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117/192

117. 3人で自宅

 久しぶりのロイとミコトの自宅の中に、ミコトとロイとセイラはいた。


 ロイは火を灯したランプをミコトに手渡す。

 

 灯りで照らされた、4LDKの家を、セイラは走り回った。


「広ーい! おっきいテーブル! お庭暗くて見えなーい!」


「明日の朝に見れるよ。お花がいっぱいあるんだー」


 セイラとミコトは楽しそうだ。


 それなら、まあ、いいか、とロイはリビングの椅子に腰掛けた。


「ねえねえ、お風呂! お風呂入ろうよ!」


 セイラはお風呂場を覗きながら言う。

 お風呂は空だ。


「準備するね」


 実はこの家は、外に水を貯蔵するタンクがあり、お風呂場に繋いだパイプの栓を開くだけでお風呂に水が入れられるのだ。

 外の貯蔵タンクは、水の業者が定期的に補給してくれるという、この世界では、なかなかの高級住宅だ。


「ロイはどうする? 先に入る?」


 ミコトがお風呂場から顔を覗かせる。


「俺は後でいいよ」


 ロイは、話があったのでは? と思ったが、タイミングが合えばでいいか、と苦笑した。


 ふと、セイラと目が合う。

 セイラはニヤリと笑った。


「残念だったねー。2人きりじゃなくて」


「ミコトが元気なら、いいよ」


 ロイは心底そう思っていた。


 ミコトに威圧をかけた訳ではなかったが、ミコトを苦しめたことには違いない。

 つまり、こちらがミコトを好きだという思いを出しても、ミコトが怒っていると捉えた時点でミコトを苦しめてしまうのだ。


 不安や嫉妬は、出来るだけ抑えなくてはならない。


「ほーんと、ミコちゃん、驚くほど元気だよね。普通は力ある人の思いなんて、受け取れないはずなのに」


 セイラは呆れたように言う。

 ロイはセイラを見た。


「そうなんだ?」


 セイラは頷く。


「最近になってだと思うけど、ミコちゃんは、受け取るだけじゃなくて、自分の力に変えてる。その内、アンタみたいに怪力になるかもしれないよ?」


 ロイは、ロイ自身を軽々と持ち上げるミコトを想像した。

 吹き出しそうになり、口元を押さえる。


「ど、どんなミコトでも、いいよ」


 すると、ズボンを脱いだミコトが、お風呂場から出てきた。


「あっ! 2人、仲良くなったの?」


 ロイはミコトの格好を見て、ギョッとする。


「何で脱いでるの!?」

「ミコちゃん、セクシー!」


 ミコトは「水がかかっちゃって…」と苦笑する。

 ミコトのシャツは、ギリギリ下着が見えない丈だ。

 ミコトはその格好のまま、ロイの隣に座った。


 何かを試されているのか?

 ロイは視線を逸らした。


「お風呂入れるの慣れないんだよね」


 ミコトは溜息をつく。


「元の世界では、ボタン押すだけだったもんねぇ」


 セイラはミコトの隣に座りながら笑う。

 ミコトの元の世界の話を、ロイは聞いたことがない。


「元の世界って、便利そうだね?」


 嫌がられるかもしれないと思いつつ、ロイは話をふってみる。


「めっちゃ便利だよ! 車とか、スマホとか! 何でも機械!」


 ミコトではなく、セイラが手をバタバタさせて答える。

 ミコトは笑った。


「えーと、この間行った第4まで、車っていう乗り物なら3時間くらいで着くんだよ」


「へえ…」


 ロイはピンときていないようだ。

 そういえば、ロイも3時間くらいだった。

 ロイは時速50キロ?

 ちょっと意味がわからない。


「そうだ! セタさんの部屋に、前の聖女が描いた絵があったよね。あんな感じの乗り物なんだよ」


 ロイは「あー、なるほど」と呟く。

 実はあまり覚えていないのだが。


「前の聖女、絵を残していたんだ?」


 セイラの質問に、ミコトは曖昧に頷いた。


「絵もなんだけど、メッセージが英語で書かれていて…」

「何で英語? お兄ちゃん読めないじゃん!」


 メッセージなんてあったのか、とロイは内心驚いていたが、黙って聞くことにする。


「なんて書いてあったの?」


 セイラは身を乗り出す。


「セタを永遠に愛します。デイジー」


 ミコトはうつむいて答える。

 ロイもうつむいた。

 セイラはアハハと笑った。


「それ、私へのメッセージだよ!」

「ええ? そうなの!?」


 ミコトとロイは驚いてセイラを見た。


「鈍感夫婦だなぁ! そんなミコちゃんでも読めるような簡単な英語でわざわざ書くなんて、次の聖女あてに決まってるじゃん! セタと私は愛し合ってたの! 盗らないでね! って感じ? きっと次の聖女の護衛も、お兄ちゃんがやると思ったんだろうねぇ」


「そ、そう言われれば…。なんだぁ。セタさんに伝えなくて良かったぁ!」


 ミコトは机に突っ伏した。


「前の聖女は独占欲が強かったみたいだねー」


 セイラはニヤニヤと笑う。


「ミコト、もしかして、セタ兄に伝えるかどうか悩んでた?」


 ロイの言葉に、ミコトは突っ伏したまま、首を横に振る。


「シェナさんいるし、伝えないつもりだったけど、その判断で良かったかなぁって…」

「シェナさんって?」


 セイラは好奇心で目を輝かせている。

 ミコトは顔を上げて、ロイを見た。


「恋人、のような?」

「恋人、かも?」


 ミコトとロイの曖昧な回答に、セイラは不満げな表情になる。


「ハッキリしないなぁ! どんな人?」


 ミコトは「えーとね」と言う。


「ふわふわの茶髪で、美人で、セタさんより3歳年上で、バツイチで、幼馴染で、セタさんの身の回りの世話をしに毎日家に来ていて、ロイのお漏らしを片付けた人?」


「ミコト、最後の要らないよね…」


 ロイは顔を両手で覆う。


 セイラは「おお!」と言った。


「バツイチ幼馴染! いいねぇ! 実は子どもの頃からお兄ちゃんのことを好きだったってヤツだね! ミコちゃんと一緒だね!」


 ミコトは赤面して立ち上がる。


「ちょっと、セイラ!?」

「ミコちゃん、お風呂は?」


 ミコトは「あっ!」と言って、バタバタとお風呂場の方へ駆けていく。

 ロイは走るミコトの脚を見て、ハッとなった。


「傷が、ない…!」


 先日までは確かにあった、結婚式の日の襲撃の右ふくらはぎの傷跡が消えているのだ。


「あぶなかったー。沸きすぎるところだったよ」


 戻ってきたミコトをロイは抱きしめた。


「え!? どうしたの?」

「足の傷が、消えていて…、良かった…」


 ミコトも、ハッとなる。

 

 ロイの治癒力がミコトに入って、消えたんだ!

 ふと見ると、セイラもホッとした表情をしている。


 あの傷は、何よりもロイを苦しめていた。

 ミコトはロイの背中に手を回した。


「良かったぁ。ありがとう、ロイ」


 


 ミコトとセイラがお風呂に入った後、何故か3人で2階のベッドの部屋で、ミコトの話を聞くことになった。


 ミコトとセイラはベッドに横たわり、ロイはベッドに腰掛けている。


「ミコちゃんも神様と話せたんだねー」


 セイラはベッドをゴロゴロと転がりながら言う。


「うん。私には力がないから、今まで話せなかったんだって。セイラはよく話すの?」


 ミコトの質問に、セイラは「お祈り中はヒマだからねー」と言う。

 神聖な気持ちでお祈りしていないところが、セイラらしい。


「俺の力が入ったから話せたってこと? 俺、神様と話したことなんてないけど…」


 ロイは首を傾げている。


「なんかね、初代アリアンとの約束で、縁を切ってるから、話しかけないんだって」


 ロイは「ふぅん」と言う。

 ミコトは、「それでね!」と起き上がった。


「話したいのはここからで、私、セタさんを治せないか聞いたんだよ」


 ロイは、やっぱりか、と頷いた。

 セタのために何かやらかしてしまうのでは、と思っていたが、ミコトは神様に質問をしていたのだ。

 予想外すぎる。


「あの症状は、呪いや病気じゃなくて、アリアンの使命なんだって。神様は治せるとはハッキリ言わなかったんだけど、あの、アリアンの記録の本をしっかり読んだら、また来ていいって言ってくれたの!」


 ミコトの言葉に、ロイは考える仕草をした。

 ミコトにはあの本を読んでもらうつもりだったが、思った以上に大きな話になりそうだ。

 そもそも、セタの意思を確認しないで進めていいものだろうか。


「俺の気持ちはミコトと一緒なんだけど、セタ兄は、治ることを望んでいないように見えた。セタ兄に確認した方がいいんじゃないかな…」


 ミコトは頷いた。

 確かに、ロイの言う通りだ。


「私、とりあえず本を読むよ。それで、ロイに伝える。その先は、ロイの判断に任せるよ」


 ロイは頷くと、真剣な表情をした。


「あの本には、ミコトにとって、辛いことが書かれているかもしれないんだ。俺は、ミコトと全てを共有したいと思っているけど、もしミコトが嫌なら…」


 ミコトは後ろから、ロイにガバッと抱きついた。


「私も全部共有したい! 辛くても、ロイと一緒なら大丈夫だから!」


 ロイはミコトの手を握って「ありがとう」と呟いた。





 結局この日は、12時頃にミコトが就寝し、まさか3人で寝る訳にもいかないので、起きているセイラにロイは1階にいると言い、1階の椅子で仮眠をとった。


 朝方にお風呂を沸かし直し、お風呂にも入った。


 家というのは、住んでみると分かる。

 

 こんな時のために、1階に寝ころがれるソファが必要だ。


 ミコトに手配してもらおうと、ロイは1人で頷くのだった。

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