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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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115/191

115. 5年ぶりの神様

 ミコトは夢を見ていた。

 

 何故夢と分かるのか。


 それは、真っ白な空間にいて、目の前に、10歳の時に会った白ひげおじいさん姿の神様がいるからだった。


「とんでもない男に好かれてしまったのう…」


 神様がミコトの前に現れるなんて…。

 もしかして、存在を消されてしまうのだろうか。


 神様は「いや、消さないぞ?」と笑った。


「ミコトには力がないから、今まではこちらから話しかけることが出来なかったんじゃよ。先程アリアンの子孫がミコトに力を入れたから、話せそうだなと思って出てきただけじゃ」


 ミコトは首を傾げた。


「ロイが、力を入れた…?」

 

 神様は頷く。


「息が苦しかったじゃろう? アイツの強い念じゃ。思い、とも言う」


「ロイは怒っていて、私を倒そうとしたんじゃ…?」


 ミコトはイワンとコランが倒れた光景を思い出していた。


「アイツがミコトを倒す訳がない。俺だけのミコトなのに、という思いが流れ込んだのじゃよ」


 ミコトはホッとした。

 さすがに、嫌われたのかと思っていた。


「思いは捉え方次第じゃ。今回は怒っていると思ったから、息苦しくなったのじゃろう。普段はこんな事はないはずじゃ」


 ミコトは驚いた。


「普段から、ロイの思い? 力? が私に入っているんですか?」


 神様はふぅと息を吐いた。


「異例なんじゃがな。最近になってミコトは普通に受け入れておるな。ほら、怪我の治りが早いのもそのせいじゃよ」


 神様はミコトの右手を指差した。

 なるほど、とミコトは頷いた。


「ロイはアリアンの子孫の中でも一番力が強い。努力はしておるようじゃが、抑えきれていない。ミコトがおらんかったら、一生伴侶は望めなかったじゃろう」


「ええっ!?」


 どういう事?


「ミコトには父親譲りの体力と筋力がある。加えて初代聖女の子孫でこの世界の力に耐性があった。全てが作られたかのようじゃ…」


 父親似で良かった? ということ?


 というか、ロイはイケメンで女性にモテるのに、ミコト以外の女性ではダメなのか。

 それは、ミコトにとっては良いが、ロイにとっては、何というか、気の毒である。


「あの、神様は、力のある人となら話せるんですよね。ロイやセタさんとも話すんですか?」


 神様は首を横に振った。


「初代アリアンとの約束でな。縁を切っておるから話しかけたりはしないのじゃ」


 そうなのか。

 戦争になったからだろうか。

 そうだ、セタといえば…!


「神様! 私、セタさんを治したいんです! やっぱり古代魔法を習ったりしたら、私の存在を消しますか?」


 神様は、ほっほっほ、と笑った。


「実に真っ直ぐな質問じゃな」


 神様は白いひげを触りながら「そうじゃのう…」と呟いた。


 かなり長い沈黙が続く。

 

 やっぱり神様は古代魔法は反対なのだろうか。


「まぁ、セタが哀れではあるの…」


「じゃあ、あの、神様がセタさんの呪いを解くとか…」

「セタの症状は呪いではないぞ」


 神様はキッパリと言う。


「やっぱり、病気ですか?」

「病気でもない。強いて言うのなら、アリアン自身が能力を得るために、己に課した使命の様なものじゃ」


 ミコトは「使命…?」と呟く。


「そうじゃ。そして、セタはそれを正しく理解しておる。セタもまた、アリアンの子孫の中では特別なヤツじゃ」


 特別兄弟!

 なんか、かっこいい!


 いや、問題はそこじゃなかった、とミコトは首を横に振った。

 

 神様は、ミコトの様子を見て、ふふふと笑っている。


「使命を断ち切るには、どうしたらいいんですか?」


 神様は「断ち切る…」と呟いた。


「使命を失くす、断ち切る、は、アリアンにとっては、アリアンでなくなるということじゃ。しかし、そうか。そういう考え方もあるのじゃな」


 神様が何を言っているか分からず、ミコトは首を傾げる。


「ミコト、アリアンの記録をしっかり読んで、再びここに来るが良い」


 あの分厚い本か。

 ミコトはウンウンと頷いた。


「よ、読みます!」


「それと、もう戻った方が良いぞ。大変な事になっておる」


「大変な事?」


 神様は頷くと、白い空間に、何やら画像を映し出した。


 地球のテレビのように、騎士団の救護班の様子が映し出される。


「すごい! プロジェクターみたい!」


 ミコトが喜べたのは、そこまでだった。

 何とロイが、セイラに叱られているのだ。


「アンタほんっとうに何考えてんの!? ミコちゃんまで威圧で倒すなんて!!」


 何故セイラが救護班に!?

 というか、威圧で倒された訳じゃないよ!


 よく見ると、ベッドに横になっているミコトが見える。

 自分を上から見るなんて、変な気分だ。


「いや、威圧はやってないんだけど、でも、もう5時間も起きないんだ! 聖女の力で何とか…」


 5時間!?

 そんなに経ってるの?


「その前にお前が死ねっ!!」


 聖女が死ねって言っちゃった!?


 セイラは包帯をカットするためであろうハサミを振りかざす。


「待って! セイラ! リントも止めて!」


 マリーまで騎士団にいる!


「いや、えっと、ロイさん逃げて!」


 知ってる! リントはセイラを止められない!


「俺、もう死ぬでいい…」


 ロイが諦めてるっ!?


「皆さん落ち着いて下さい! ミコトさんは脳しんとうです! そのうち目覚めますから!」


 シーマさん正しい!

 しかし、誰も聞いてない。


「アンタさぁ! 昨日も一晩中ミコちゃんを襲ってたんだよね? ミコちゃんはアンタの性欲の捌け口じゃないんだよ!?」


 ぎゃー!!

 聖女なのにとんでもない事言っちゃったよ!?


 救護班にいた全員がドン引きしている。


 ミコトは白い空間にバタッと倒れ込んだ。


「下に送るぞー」


 神様はお構いなしに画像を消すと、手を振ったような仕草をした。


 ミコトの意識は、一旦暗くなり、直後、画像で見た喧騒が聞こえてきた。


「してない! 捌け口にはしてないから!」

「じゃあ何で寝かせないのっ!?」

「昨日は、ミコトが可愛かったからっ!」

「はぁ? ミコちゃんは毎日可愛いのっ!」

「その通りですっ!」


 この言い合いの中を、起きられる人がいたら、お目にかかりたい。

 

 というか、もう誰も止めてないよね。


「ミコトさん! 目が覚めましたか!?」


 シーマがミコトの肩を揺する。

 起きてるのがもうバレた!

 さすがお医者様である。


「ミコト!」

「ミコちゃん!」


 セイラはミコトにガバッと抱きつく。


「セイラ…」


 後頭部がズキンと痛む。


「ミコちゃん、もうコイツとは離婚しよう! 体がいくつあっても足りないよ!」


 待って!

 ミコトと離婚したら、ロイは他に女性がいないのだ。

 いや、これはバラしてはいけない事だ。

 そもそも、ミコトは離婚なんてしたくない。


「離婚、しない…」


 うまく喋れない。

 後頭部の痛みのせいだろうか。


 そうだ!

 ロイに力を入れてもらえば、治るかも。


 ミコトはロイに手を伸ばす。


「ミ、ミコト!」


 ロイもミコトの手を取ろうとする。


「ミコちゃん! 捌け口になっちゃうよ!」


 捌け口?

 捌け口ってなんだっけ?


 とにかく頭が痛いから、ロイに力を入れてもらって治してほしい…!


「捌け口でいい…。ロイに入れてもらいたいの…!」


 ミコトの絞り出した言葉に、救護班にいた全員がセイラの発言以上にドン引きした、という話を、後でマリーからミコトは聞くことになるのだった。

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