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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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111/189

111.浮気疑惑からの…

「あー、これ、母さんの衣装なんだね」


 セタの説教が終わり、ロイに模擬戦の経緯を説明して、ロイは納得した様に呟いた。


 暖炉の部屋のテーブル席に、ミコトとロイとリタとオルバが座り、少し離れてセタの車椅子、セタの隣にシェナが座っている。


 セタは頭と会話に力を配分していると体をあまり動かせないため、シェナが飲み物を飲ませたり等のお世話をしている。


「ミコトちゃんに似合ってるでしょ? 髪飾りもあると良かったんだけどね」


 リタの言葉に、ロイは「あっ」と言い、荷物の中から、今朝購入した真珠のカチューシャを出した。


「これ、ミコトにあげようと思って…」

「え! 本当に? すごく綺麗!」


 ミコトは驚いて、ロイとカチューシャを交互に見た。


 ロイがアクセサリーのプレゼントをくれるなんて、信じられない!


 しかも、わかりやすいキラキラした石ではなく、真珠である。


 早速リタがミコトの髪につけてくれて、手鏡を見せてくれた。


「ミコトちゃんの黒髪にすごく似合ってる! ロイがこんなの選べるなんて驚きだわ!」


 リタの言葉に、ロイはサッと目を逸らした。

 あ、これは、ロイが選んだ訳では無さそうだ。


「もしかして、キダンさんが選んだの?」


 ロイはミコトの笑顔をチラリと見て、「キダンさんは、振られて落ち込んでいて…」とボソボソと言った。


「あ、そう…」


 キダンはチェコに振られたのか。

 今度会った時に、触れないようにしよう。


 ロイの態度が明らかにおかしいので、リタはロイの顔を覗き込んだ。


「なんっか怪しいわね! よく考えたら、こんなにピッタリなもの、ロイに選べるとは思えないし、まさか、奥さんへのプレゼントを他の女が選んだとかじゃないわよね?」


 そういえば、リタは元々、ロイの浮気を疑っているのだった。

 

 ロイは慌てて首を横に振った。


「違っ、それは、チェコさんが選んで…」


 ミコトは「え!?」と声を上げた。


「チェコさんは、キダンさんを振ったのに、ロイと買い物に行ったの?」


 どういう事?

 キダンさんよりロイが好きだから振ったの?


「いや! 一緒に買い物に行ったわけじゃ…」

「ミコトちゃん、チェコさんって誰!?」


 リタはロイの言葉を遮る。


「チェコさんは、サロン・カラスの店員の女性で…」


 ミコトが馬鹿正直に答えると、リタは鬼の様な形相になった。


「ロイ! あんたやっぱり…っ!」


 オルバが慌ててリタを止める。


「ま、待ちなさい、リタ! ロイ君の話も…」


 ロイは頭の中が、大混乱になっていた。


 何故ミコトにプレゼントを渡しただけなのに、こうなってしまったのだろうか。

 本当に、怪しいことなんて何もないのだ。


「セタ兄、助けて!」


 ロイはセタを見て助けを求めた。

 セタなら、ロイがミコトを一番に思っている事を知っている。


「え? えーと、助けるにはちょっと情報が足りないな。俺はロイが浮気をするとは思ってないから、初めからちゃんと説明して?」


 セタの言葉に、一旦、リタは落ち着いたようだ。

 もちろん、ミコトだって、ロイが浮気するとは思っていない。

 でも、ロイは、意図せず、女性をその気にさせてしまうのだ。


「初めから…。えーと、その、チェコさんのことを説明するには、口外して欲しくない話があって…」


 ロイは、シェナをチラリと見た。


「シェナは大丈夫だから、事情を話していいよ」


 セタはハッキリと言う。

 シェナは微笑んで頷いた。


 ロイも安心したように頷いた。





 ロイの、チェコを含めた、古代魔法研究と初代聖女信仰の話を聞いて、暖炉の部屋にいた全員が神妙な面持ちになった。


「ミコトさんが狙われている悪党とは、そういう事だったのですね…」


 オルバが納得したように、呟いた。


 実際は、第2の代表からも命を狙われているのだが、この場ではもちろん伏せてある。


「そんな団体に、ミコトちゃんは全く関係ないじゃない! 似てるとか、適性があるとか、ミコトちゃんが望んだわけじゃないじゃない!」


 リタは悔しそうに叫ぶ。


「チェコさんはミコトを狙うのは反対しているんだけどね」


 ロイは苦笑するとミコトの頭に手を置いた。


「ミコトは、古代魔法がらみで何度も襲撃に合っている。足の傷はその時のものだし、実際、この結婚は、公式な手段で古代魔法研究に引き抜かれないようにするためのものなんだ。国家特別人物の妻には手出し出来ないからね」


 ロイの説明に、ミコトも頷いた。


「でも俺は、政略結婚とは思っていない。再会した時から、ミコトが好きだった」


 ロイのハッキリとした口調に、リタもオルバもホッとした表情になった。


 ミコトは赤面しながら、「私も…」と小さな声で言った。


「うっ、あのロイ君が立派に…」


 シェナはセタの隣で、涙ぐんでいる。

 ロイは驚いた様に、シェナを見た。


「あの、シェナさんって、俺のこと知っているんですか?」


 セタはふふっと笑った。


「シェナは2歳までのロイの面倒をよくみていたんだよ。俺より3歳年上だから、記憶もハッキリあるんだろう」


 ロイは赤面した。


「そ、そうだったんですね。俺、覚えていなくて…。あの、子どもの時はご迷惑をおかけしました」


 シェナは首を横に振った。


「覚えていなくて当然よ。それに、ロイ君は凄すぎて、面倒を見たと言っても、お漏らしを片付けたくらいで…」


 ロイは顔を両手で覆って「うわぁ」と叫んだ。

 ミコトはプッと吹き出す。


「小さいロイ、見たかったなぁ」


 リタは、ふふふと笑う。


「あら、ミコトちゃんは、産めばいいのよ。きっと2人の赤ちゃんなら…ええと、なんか、凄そうね…」


 可愛いって言いたかったのかもしれないが、凄そう、になってしまった。


 そういえば、セイラも5年の間に産んでって言っていた。


 ミコトはぐっと手を握った。


「わ、私、ロイに似てる子を産みます!」


 ロイは「えー?」と言った。


「ミコトに似てる子の方がいいよ」


 何を血迷った事を言っているのか。

 イケメンに似た方がいいに決まっている。


「あの、私はパパ似だから、ロイ似の女の子が産まれるの、きっと!」


 ロイはギクッと体を強張らせた。

 女の子はダメなんだ、とここでは言えない。


「ロイ、それで、何故、プレゼントをチェコさんが選んだんだ?」


 セタは察したように、ロイに聞く。

 ロイは内心ホッとして、頷いた。


「カラスに潜入しようと街を歩いていたら、露店がたくさん出ていて、その、俺、ミコトに何もあげてないなと思って、アクセサリーの店を見ていたんだよ」


 ミコトは驚いた。


「何もって、短剣とか、家とか、もらったよ?」

『家っ!?』


 リタとオルバとシェナが当時に叫ぶ。

 ロイは苦笑した。


「短剣はともかく、家は必要経費かなと。お互い住んでないしね」


 ちょっともう、2人の言っている意味が分からない、とリタとオルバとシェナは目配せをする。


 ロイは気にせず、話を続ける。


「そう、それでアクセサリーを見ていたら、急に後ろから『奥様の黒髪には真珠が似合いますよ』ってチェコさんに言われて、それを、ね」


「私、チェコさんに会った事ないのに…」


 つまりチェコは、数分会っただけのロイを第1の国家特別人物と認識していて、妻であるミコトの容姿も把握していた、ということだ。


「それに、少し気になる事を言われて…」

「気になる事?」


 首を傾げたミコトに、ロイは頷いた。


「奥様の希望があれば、いつでも頼ってほしいって、言われたんだ」


 ミコトは、背中がゾワッとするのを感じた。


 ミコトの希望、それは、古代魔法だ。

 

 今までは、古代魔法を避けていた。

 自分の存在が消えるかもしれない恐怖が強かった。


 でも、セタの症状が治せるかもと、聞いた時から、恐怖よりも古代魔法を知りたいと思っていた。


 何よりも、セタが治ったら、ロイは喜ぶに違いない。


 何故そんなことを、チェコが知っているのか。

 ミコト自身、そう思ったのは、一昨日なのだ。


「ミコト?」


 ミコトは、ハッと顔を上げた。

 と、同時に、セタは「ロイ!」と言った。


「少し疲れたから、部屋まで連れて行ってくれないか?」


「うん、分かった。セタ兄、大丈夫?」


 ミコトは、セタを抱き上げて部屋に連れて行くロイをぼんやりと見送った。


 シェナはドアを開けたり、ベッドを整えたりしているようだ。


「ロイ、ミコトちゃんには、勘は働かないのか?」

 セタはベッドに寝かせられながら、ロイに小声で言った。


「よく分かったね。何故か、ね。そのせいでよくすれ違う…」

「ミコトちゃんから目を離すな」


 セタの言葉に、ロイは目を見開いた。


「セタ兄、それは…」

「ミコトちゃんは、古代魔法に関わろうとしている」

「なっ!?」


 そんな事、あるだろうか。

 ミコトは古代魔法を恐れているのだ。

 消えたくないと泣くほどに。


「おそらく、俺の症状を古代魔法の治癒魔法で治せるのでは、と思っているのだろう」

「な、治せる…の?」

「ロイ!」


 ロイはハッとなる。


「お前のしなければいけない事は何だ!? ミコトちゃんを守ることだろう? しっかりしろ!」


 そうだ。

 ミコトを守らなければ…。

 古代魔法に関わったら、ミコトが消えるかもしれないのだ。


 ロイの体から、血の気が引いていく。


「お、俺、第1に帰る…」

「それでいい。第4の首都にも立ち寄るな。キダンさんには第1から手紙を送れ」


 ロイは頷いて、シェナの横を通り過ぎて部屋を出て行く。


 シェナはセタを見つめた。


「シェナも、もう俺の事は…」


 セタの言葉に、シェナは首を横に振る。

 セタはふっと笑った。


「シェナは、本当に男運が悪いな…」


「そうかな。私ほど運が良い女はいないと思うよ」


 シェナは微笑んだ。

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