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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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106.ロイの報告

 第4エラルダ国の首都の隅に位置する宿屋の一室で、ロイは目を覚ました。


 頭を押さえて、ベッドから起き上がる。


「あ! ロイ君、大丈夫?」


 キダンはテーブルで何か書き物をしていたようだ。

 顔だけベッドの方に向けて、ロイを心配そうに見ている。


「今、何時、ですか?」

「お昼の1時だよ。2時間くらい寝てたよ」


 キダンの言葉に、「結構寝ちゃったな」とロイは呟いた。


「驚いたよー。帰ってくるなり、ベッドで寝だすから。一体何があったのさ?」


 キダンは、お昼ご飯あるよ、とばかりに、何種類かのパンが入った籠をロイに見せながら言う。


 ロイはベッドから立ち上がると、キダンの前に座り、パンと果実水を無言で口に入れる。


「寝るのも食べるのも、本能なんだねー」


 キダンはその様子を見て呟いた。





 キダンの分のパンまで平らげたロイは、キダンに先程カラスで聞いた事を話した。


 頭に力を回したので、一言一句記憶していたが、とにかく疲れたので、これは今後の課題である。


「キダンさんが教えてくれた、ふかん? が役に立ちました」


「教えてないけどね。ロイ君のヤツを俯瞰って呼ぶのやめてよ。全然違うものだから」


 感謝を伝えたつもりが、キダンに迷惑そうに言われ、ロイは首を傾げた。


「今はロイ君の能力の話はとりあえずいいよ。チェコさんの方だよ」


 キダンは頬杖をついて溜息をついた。

 ロイはふっと笑った。


「キダンさんの言った通り、チェコさんに悪意はありませんでした」


「あっても良かったのに! 部屋に誘われたかったよ!」


 問題はそこじゃない、とロイは思い、苦笑する。


「初代聖女が古代魔法を使えたっていうのは、第1の記録には残っていないんですか?」


 キダンは頬杖をついたまま、「ない!」と断言する。


「初代聖女が召喚されたのは、200年以上前だよ。その頃は、まだ国が出来ていなかったんだ。つまり、アリアンの男の前に召喚されたけど、そこは第1ではなかったんだ」


 ロイは、なるほど、と頷く。


「位置的には、ココだったのかもしれないですね」


 キダンも頷く。


「第1にある『聖女記録』は初代から5代目までの記録が極端に少ないんだ。絵姿さえない。ヤトラ君の家にあった絵は、かなり貴重だよ」


 ロイはチェコの言葉を思い出していた。


「チェコさんは、ヤトラさんの事を第4の尋問員と言っていたけど、知り合いではない口ぶりでした。でも、初代聖女の顔は知っていました。初代聖女の絵姿は、他にもあるということですよね」


 ロイの言葉に、キダンは頬杖をやめて腕を組んだ。


「あー、恋人の方ってことか。そっちの子孫なのかな、チェコさんは」


 あの絵の男か、とロイも頷く。

 キダンはロイをじっと見る。


「あの絵の男って、ロイ君の先祖だったりするの?」


 ロイは大きく首を捻った。

 いくら聖女がアリアンの男のいる場所に召喚されるとしても、聖女と恋仲になるとは限らない。


 ロイはアリアンの記録という分厚い本を思い出した。


「あ! セタ兄が持っていた本を見れば分かるかも!」


 キダンは身を乗り出した。


「なになに!? アリアンの本か何か? 僕も見たい!」


 キダンはかなりの本好きだ。

 ロイは、しまった、と思った。


「ごめんなさい。セタ兄曰く、俺か俺の愛する人しか見ちゃいけないそうです」


 おそらく、アリアンの男が愛する人にしか殺せないことや女児が育たないことが記されているからだろう。


「じゃあ、そういう本がある事自体、僕に言っちゃダメじゃん!」


 キダンは怒ったように言う。


「そうですね。内緒にしてください」


 ロイはニッコリ笑った。

 キダンは口をパクパクとさせる。


 内緒にして、と言っても、「内緒なんだけどね」という前置き付きで、内緒話は広がるものである。

 これだから、素直なヤツはそういう事を疑いもしない。


「あーもう、分かったよ! 内緒にするよ! そんで、どーするの? チェコさんたちの古代魔法研究兼初代聖女信仰は?」


 半ば投げやりのキダンに、ロイは真面目な表情になる。


「チェコさんは、はっきり、ミコトには関係ないと言いました。俺もその通りだと思います。ミコトに手を出さないのなら、古代魔法研究も初代聖女信仰も、別に続けていても構いません」


 キダンは、ハァーと息を吐く。


「相変わらず、甘いよね。そう思ってるのはチェコさんだけで、他の人はミコトちゃんを狙ってくると思うよ?」


「誰が狙ってこようが、俺は、ミコトを守ります。そのための力です」


 ロイは自分の両手に目を落としてから、キダンを見た。


「キダンさんは、これからどうするんですか?」


 キダンは、腕を組んで椅子の背にもたれた。


「今日も行くってヤトラ君と約束しちゃったんだよね。だから今夜もカラスに行くよ。チェコさんに脈なしでもね」


 ロイは首を傾げる。


「脈なしですかね?」


 キダンはムッとした表情をする。


「そういう報告を、たった今、受けたけど?」


 確かに、聞いた言葉だけ並べると、そうかもしれない。


「ちょっと、助けて欲しそうでしたけどね…。まぁ、勘ですけど」


 キダンは、顔を輝かせた。


「勘!? ロイ君の勘なら信じるよ!」


 ロイは再び、しまった、と思った。


「あの、チェコさんに俺やミコトを仄めかして部屋に誘うとか、そういう事はしないで下さいね。俺、明日の午前中にもう一度調査しますから」


 キダンはチッと舌打ちをする。

 完全にするつもりだったようだ。


「ロイ君はぁ? 夜は一緒に行かないの?」


 キダンはふてくされたように言う。


 ロイが同行したら、仄めかしているのと変わらない。

 それに、ミコトに、他の女の子と遊んだら嫌と言われたし…。


「俺は、能力の練習をします。ちょっと、ふかん…じゃないやつと、頭に回す力の配分がうまく出来なかったので…」


 ロイの言い方に、キダンは呆れた。


「ロイ君の能力は俯瞰じゃなくて、透視に近いよね? 女性の着替えだって、お風呂だって、覗けちゃうよ、それ」


 ロイは驚いた様に、目を見開いた。


「え!? あれ、あっ!?」


 キダンはさらに呆れる。


「今頃気付いたの? あんまり人には言わない方がいいよ、その能力のこと」


 ロイは赤面しながら、キダンを見た。


「キダンさんは、これで覗きをした事があるんですかっ!?」


 キダンはテーブルをバンッと叩いた。


「僕に、というか、普通の人に、そんな能力ないから! 俯瞰は比喩だって言ったでしょ! 上から見るつもりで自分を見て、冷静に考えるようにしてるってこと!」


 ロイは頭を抱えて、「あー、そういうことか!」と叫んだ。


 キダンはニヤリと笑った。


「ロイ君が覗きが出来る事は、内緒にしといてあげる。覗くのはミコトちゃんだけにしときなよ?」


「覗きませんよっ!?」


 頭を抱えたまま、ロイは叫ぶ。


 キダンはニヤニヤしたまま頷いた。


「そうだねー。別に覗かなくても、夫婦だから、お風呂も一緒に入ればいいもんね」


「入りません……え? 一緒に、入ってもいいんですか?」


 キダンは、必死で笑いを堪える。


「僕に聞かれてもっ…?ミコトちゃんがいいなら、いいでしょ?」


 ロイとミコトは、一緒に住んでいないので、そういう機会はあまりなかったが、確かに夫婦なら、効率面でもお風呂に一緒に入るのは、おかしくない。


 ミコトはいつも聖女とお風呂に入っているので、1人で入る主義という事でもないはずだ。


「そっか。そうですね」


 ロイは一人頷いて納得した。

 キダンは顔を背けて肩を振るわせている。


「ロイ君って、ほんっとに、なんていうか、いいよねぇ。父たちが、ロイ君に嫁候補を見つけられなかったのも、分かる気がするよー」


 ロイは、馬鹿にされている? と首を捻った。


 確かに、アレンたちは、北の大地に行く前に、嫁候補を見つけておくので1年で帰ってこい、と言っていた。

 しかし、見つかったという連絡はなく、ならいいか、と結局5年北の大地にいたのだ。


 セタが言っていた「ミコトを待っていた」が、アレンたちにも、そうだったのだろうか。


「セタ兄が言ってたんですけど、ミコトは俺に会うためにこの世界に来て、俺はミコトを待っていた状態? だったらしいですよ」


 キダンは笑うのをやめて、ロイを見た。


「それは、随分とロマンチックな話だね…」


 ロイはふっと笑った。


「ですよね。でも不思議とそうなんだと思いました」


 キダンは軽く頷くと、席を立った。


「能力の練習するんだっけ? 僕は食べ物を調達してくるよ。さっきの様子だと、たくさん寝て食べないと無理でしょ?」


 ロイは「ありがとうございます」と笑顔で言う。


 キダンは部屋を出ると、ふーっと息を吐いて呟いた。


「セタ君が言ったのなら、ロマンチックな話じゃないよねぇ…」

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