102.第4の騎士団長
ロイが1人でカラスの調査に出て行った後の第4エラルダ国のセタの実家で、ミコトは3日目の朝を迎えていた。
昨日、護衛のオルバと共にいろいろな仕事をしたせいか、昨夜はぐっすり眠れた。
今日も、張り切って魔物を倒しちゃうぞ! と思っていると、オルバに、今日は非番だと告げられた。
「そうなんですね。でも、オルバさんが非番だと、誰が魔物を倒すんですか?」
ミコトはオルバに素朴な疑問を投げかけた。
大変失礼な話だが、自警団のオジサンたちでは、魔物が10体以上出たら、やられてしまう。
「週に一度、首都から騎士団員が派遣されてくるんだよ。来るのは9時頃だから、それまでに見回りはするけどね」
オルバの言葉に、ミコトはなるほど、と頷いた。
「ミコトさん、今日の予定は、リタがいろいろ考えているようなんだよ。見回りの後は、私もここにいるから、リタとシェナとゆっくり過ごすいい」
「はい。ありがとうございます」
ミコトのために、ありがたいことである。
しかし、この後、リタとシェナとゆっくり過ごす休日は、派遣されてきた1人の騎士団員によって、壊される事になるのだった。
ミコトとオルバが山道の見回りをしていると、その男はやってきた。
「オルバさん!」
オルバに声をかけて、第4の騎士団の制服を着た男が駆けてくる。
茶髪で中肉中背の40代の男である。
「だ、団長!? 団長が今日の派遣団員なんですか?」
オルバが驚いている。
ミコトは、その「団長」と呼ばれた男に見覚えがあった。
第4との会食時、第4の国家特別人物夫妻の後ろに護衛として立っていた男だ。
「それがさぁ、聞いてくれよ。先日休みの日に、突然第1の国家特別人物夫妻が来てさぁ、会食にコッチの国家特別人物夫妻も出るとか言い出してさぁ、護衛任務で休みが潰れちゃって、シェナに会いに来れなかったんだよね。ホンット迷惑な話だよー。だから、今日の派遣団員を代わってもらったってわけ」
「団長」は気だるそうに、一気に愚痴をオルバに話す。
すみませんね、突然来た迷惑な国家特別人物夫妻で。
つまり、この男はシェナ狙いということだ。
オルバは困惑した顔で、ミコトをチラリと見る。
ミコトは笑顔で先に行く旨のジェスチャーをすると、歩き出した。
オルバのせいではない。
村に戻る山道を、先頭がミコトでその3m後ろをオルバと「団長」が歩いていく。
「まぁ、会食自体は、第1の代表の名代とかいう女性がものすごい美人だし、聖女は綺麗だし、良かったんだけど、第1の国家特別人物夫妻がふざけててさぁ、会食中、ずっと妻に食べさせてるんだよね、あの顔だけの優男が!」
「ス、スミス団長、あの、ですね…」
どうやらスミスという名前らしい。
スミスは声が大きく、悪口がミコトに丸聞こえである。
「でも、あれ、絶対演技だね! 知ってる? 第1の国家特別人物夫妻は仲悪いって噂。普通、会食の場であんな事できないよ。仲悪いくせに、取り繕おうとしちゃって大変だよねー」
「スミス団長…!」
キダンの言った通り、ロイの行動は演技と思われているようだ。
もちろんロイは、ものすごく真面目にミコトに食べさせていたのだが。
しかし、このスミスが第4の騎士団の団長って、本当だろうか。
どう見ても、強そうに見えない。
ミコトは、試しに、横から現れた犬型の魔物を、剣を抜かずに、スミスの方に蹴り飛ばしてみる。
「どぅわっ!?」
情けないスミスの声が上がり、見事に魔物はスミスにぶち当たる。
横にいたオルバが、慌てて魔物にトドメを刺す。
ええー!?
今のが避けられないの?
いや、剣も抜かずにぶち当たっちゃったの?
これが第4の騎士団長だなんて、ガッカリなんですけど!?
「おい! お前、危ないじゃないかっ!?」
スミスは怒鳴りながらミコトを睨みつける。
どうやら、ミコトと第1の国家特別人物の妻が同一人物と分からないようだ。
「すみません、びっくりして、つい、蹴ってしまいました」
平然とした顔で言うミコトに、オルバは苦笑している。
派遣で護衛に来たのなら、口ばかり動かさずに働いてほしいところだ。
結局、スミスは、ミコトが誰かも分からないまま、シェナに会えるというだけで、リタの家までついてきたのだった。




