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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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1.プロローグ

 熊崎ミコト、10歳。

 格闘技が特技で大好きなことを除けば、普通の女子小学生だ。

 

 そのミコトは、今、全く意味がわからない状況にいた。


 石の壁に囲まれている、薄暗く広い場所。

 前の方には教会の祭壇のようなものがある。

 目の前には、白いローブを着た大人が3人。


 そして、隣には、パジャマで冷たい石の床の上でスヤスヤと眠る、ミコトの従姉妹のセイラ。

 

 どういうこと!?

 さっきまで、早朝の公園で格闘技の練習をしていたのに!?


 何で、こんな、知らない場所にいるの!?


 落ち着こう。

 落ち着いて、思い出そう……!


 ミコトは、昨日から今朝までの事を、必死に思い出そうとした。






 

 昨日は、9月1日で、2学期の始業式だった。


 ミコトとセイラが2人で小学校に向かっていると、6年生男子2人が突然前に立ちはだかったのだ。


「ホントだ。スッゲェかわいい! セイラちゃん、だよね? 俺と付き合ってよ!」


 割と背の高い、もしかしたら顔もまあまあかもしれない、6年生男子が偉そうに言う。


 ミコトは、またか、と溜息をついた。


 ミコトの従姉妹であるセイラは、日本人とフランス系カナダ人のハーフで、超美少女なのだ。

 ハニーブロンドのふわふわの髪に、アッシュグリーンの大きな瞳、隣に並びたくない小顔。


 ちなみに、ミコトは、純正の日本人で、ショートカットの黒髪に、いたって普通の顔である。

 髪型とボーイッシュな服装のせいか、男子に間違われることも多い。


「付き合わない!」


 セイラは一言そう言うと、ミコトの手を引っ張って行こうとした。


 男子2人は、さらに立ちはだかる。


「やっぱり、ウワサ通り、セイラちゃんは性格悪いんだな!」


 ミコトはその言い方にカチンときて、6年生男子の前に堂々と立った。


「セイラは性格悪くないよ! 謝って!」

「うっせーんだよ! ゴリラブス!」


 ゴ、ゴリラブス……!?

 

 さすがにショックを受けたミコトの前に、今度はセイラが立ちはだかる。


「ミコちゃんにひどいこと言うやつは、今すぐ死ねっ!!」

「なっ!?」



 もちろん、この後、大騒ぎになった。

 学校近くだったこともあり先生が来て騒ぎを止めた。


 悪いのは6年生の奴らなのに、何故か、ミコトとセイラも叱られた。



 

 それから、始業式とホームルームの後、学校のカウンセリングを受けているセイラを教室で待っていたんだ。


 何故セイラがカウンセリングを受けているのか。


 それは、セイラに事故の後遺症があるからだ。


 セイラの両親は、セイラが5歳の時にカナダで車の事故で亡くなっている。

 セイラも同乗していたので、その時の怪我の影響で右手指に軽いマヒが残っている。

 でも、マヒより酷いのは、不眠と車への恐怖だ。

 もちろん病院でも診察やカウンセリングを受けているが、不眠と車への恐怖とマヒは治る兆しがない。


 熊崎一家は、そんなセイラを引き取り、彼女を幸せにすると誓ったのだ。


 

 

 セイラを待っている間、クラスメイトの萌と雑談をしたんだっけ。


 雑談の内容は、異世界転生の漫画の話だった。

 萌は、美少女に転生して、異世界で聖女になって、イケメン王子と結婚して、スローライフを送りたいと言っていた。


 ミコトは、じゃあその聖女を守るイケメンの騎士に転生しようかな、と笑った。


 でもこの時のミコトの頭の中では、聖女は萌ではなくセイラだった。


 ミコトは、この時何故か、セイラを守る騎士になりたい、と思っていた。


 萌に、セイラの騎士になりたいと言ったら、セイラは美少女だからそのまま聖女になれるね、と笑っていたっけ……。


 


 


 

 その後は……、そうだ。

 自宅に帰ると、6年生との騒動が、パパとママの耳にもう入っていたんだ。


 もちろん、パパとママは、ミコトとセイラが悪くないことを分かってくれた。


 先生が何と言ったかは分からなかったが、パパとママが分かってくれているのなら、それでいいか、と思ったんだ。


 でも……


「やっぱり明日からは2人の学校の送り迎えを俺がする!」


 ミコトの父親の大吾は突然そう言い出したのだ。


「そうね、そうしましょう」

 母親の琴子もそう言って頷いた。


「パパ? ママ?」


 琴子は「実はね」と言った。


「大ちゃんと前からそうしないかって話していたの。4年生になってから、こういう事多くなっていたじゃない? 大パパがいれば、嫌なやつは寄ってこないでしょ?」


「そうだぞ。明日からは安心して大パパと学校に行こうな?」


 ミコトは「待って! パパは仕事が……」と言った。


 ちなみに、大吾の仕事は格闘技を教える道場の師範と派遣警備員で、琴子はミコトを出産する前まではモデルをやっていたが、今は得意の料理で「美人料理研究家」をやっている。

 2人とも長身で、見た目に迫力はある。


「仕事は、夜勤にしてもらうから大丈夫! 道場は元々夕方だしな!」

 パパは笑顔でミコトの肩をバァンと叩いた。

 

 それじゃあ、パパの寝る時間がないのでは?


 何か納得できない、と若干痛む肩を押さえて、ミコトはモヤモヤとしていた。


 

 


 そう、それで、このモヤモヤを吹き飛ばすために、今日の朝5時から町内を走っていたのだ。


 ミコトは休憩に寄った公園で大きく息を吸った。


「やっぱり走るのはいいなー」


 明るくなり始めた公園には、早朝すぎたせいか、誰もいなかった。


 誰もいないなら……と、大吾直伝の格闘技の型を練習することにしたんだ。


 格闘技の練習をしながら、ミコトの頭の中ではいろいろな考えが浮かんでいた。


 今日からパパが学校の送り迎えをしてくれる。

 嫌な奴らのために何でパパが……って思うけど、パパがいればきっと誰も絡んでこない。

 セイラにとって、こんな良い事はないんだ。


 昨日の今日だ。今までのパターンだと、関係のない子にセイラは悪口や嫌味を言われるだろう。

 学校内では私がセイラを守らなくちゃ。


 よく考えたら、悪口ってイジメだよね?

 今度から何かあったら、全部パパとママに言いつけよう。

 そうだ、理不尽なことに我慢する必要なんてないんだ。


 ふと気づくと、足元の地面が何か光っていて……


「ん? 朝日の反射?」


 呟いたその瞬間、ものすごい光が足元からミコトの身長を追い越す勢いで出て、ミコトをあっという間に包み込んだんだ。


「え! 何これ!?」


 一瞬でミコトの視界は眩しいほどの光のみになり、足がフワリと浮いた。


「うそ!? やだ!!」


 ぐんぐんとどこかに移動している、とにかくそんな感覚がして……


「た、助けて! パパ! ママ!! セイ……」


 ここでミコトの意識は完全になくなった。




 ーーそうだ、誰もいない早朝の公園で、訳の分からない光に包まれて、どこかに移動したんだ。


 そして今、ミコトは見慣れた近所の公園ではなく、やたら天井の高い石造りの教会のようなところに何故かいるということなんだ……。

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