~ 変化 ~
朝
セットしたうるさい目覚まし時計のアラームを聞き飛び起きる
一度布団をぎゅっとつかみダンゴムシのようにうずくまった後、スマホにかけていたアラームが鳴り顔を出す。布団の中とは違い、冷たい部屋の空気が俺の鼻をツンと刺した
重たい瞼はそのままに体だけは起き上がらせる
そのままのそのそ階段を降りリビングに入ると、相変わらず母と妹は朝食を食べながらテレビを見ていた
「あ、おにぃやっと起きてきた!もう朝ごはんできてるよ!」
「おう」
いつもの会話、いつもの朝
「今日という今日はあんたにも掃除手伝ってもらうわよ」
そう母さんは言って食べ終わったお皿を洗う
「今日は何すんの?」
「そうね、昨日は床とキッチンきれいにしたから今日は昨日あんたが買ってきたクリーナーで窓ふきとかエアコンの清掃とかしようかしら」
「あ、私窓拭きやりたい!おにぃはエアコンね!」
げ、こいつ一番重労働な作業押し付けやがって…
おれの妹は何かと素早い。自分の意見を率直に言えるのは尊敬するが、面倒だと思った事をいつも俺に押し付けるのはそろそろやめてほしいところだ
「はいはい、分かりましたよ」
ため息交じりにそう答えると妹は満足そうな顔をする
俺はそれを無視するように焼いた食パンの上に半熟の目玉焼きを乗せ齧り付いた
エアコンの掃除は思った以上に大変で、壊さないように慎重にやったからか一階と二階の掃除が終わった頃にはへとへとになっていた。
「親父は毎年こんなんしてたのか…」
改めて父を尊敬した。今日は急に仕事が入ったかなんかで誰よりも早く起きて誰よりも早くに家を出て行った。いつも忙しそうなのを見てると社会人は大変だなと思う
果たして高校卒業後俺も親父みたいに働けるだろうか…そんなことを考えていたら下から母さんの声が聞こえた
「新ー!昼ごはん出来たわよー!」
「はーい!」
そう返事をし俺はリビングに戻る
昼ごはんは余った野菜を使った焼きそばに半熟たまごが乗っていた
黄身がトロッと溢れ出し、濃厚なソースが付いた麺に絡めて食べるととても美味い
「そういえば母さん」
「なに?」
「いつも行ってるスーパーの道にある豪邸って知ってた?」
「何よ急に」
「いや、昨日見つけてさ」
「ふーん、そんなのお母さん見てないけどねぇ。あったらここら辺じゃ有名になってると思うけど」
「やっぱそうだよな……」
生まれた時からここにいる俺でも知らないなんて、やっぱり普通じゃないよな
これから行ってみるか
そう思い、かけこむように焼きそばを平らげ俺は家を出た
たしかこの道沿いだよな
きょろきょろしながら歩くと見覚えのある門の前に着く
「あった……」
門は閉じておりインターホンを押そうとするも、それらしきものが見当たらずどうしようかと悩んでいると
門の向こう側から
「いらっしゃい」
と頬を撫でるような優しい声が聞こえた
キィと門が開いた先には昨日の銀髪の男が微笑みながら立っていた
「また来てくれるとは思わなかったです」
彼は少し照れ気味にお茶をだした
「昨日は、自己紹介せずにお暇してしまったので…これ、昨日のお茶のお礼です」
俺はここに来る前に買ったお菓子を差し出す。嫌いな人はほぼいない有名なカン〇リーマ〇ムだ。
高級茶を頂いたのにこんなものをとは思ったが今の俺の全財産ではこれが限界だった
てっきり怒られるか嫌な顔されるかと思いおずおずと顔を見ると、はるかに嬉しそうな顔をしてお菓子を眺めている彼がいた
「わぁ!こんな!いいんですか?!ずっと気になっていたんです!この丸いの!」
うきうきに袋を開け頬張る彼は、クリスマスにプレゼントを貰った子供のようだった
カン〇リーマ〇ムでこんなにも喜ばれるとは思ってなかったもんで、俺はなんて返したらいいか分からず暫く彼を見つめていた
そんな視線に気づいたのか彼はコホンと口に手を当てわざとらしく咳をする
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。 私は宇津野慧と申します。改めてようこそおいで下さいました」
「あ!俺は神崎新です」
「新君か…いい響きだね」
あまり慣れない誉め言葉に俺は少し照れ臭くなった
「今日はどうしてこちらに?」
宇津野さんにそう尋ねられ俺はあっと声を挙げた
そういえばなんも考えずに来てしまった。それは…ともごもごしている俺を見た宇津野さんはクスッと笑う
「いえいえ、来てくださるだけで私にとっては嬉しいです。良ければまた私とおしゃべりしてください」
「…!はい!ぜひ!」
俺は食い気味で返事をした。
その後の会話でなんと宇津野さんはあまり外には出ず、この家でほとんどの時間を送っている事が分かった
俺は驚愕した。こんなにも町が発展し面白いものがたくさんあるのにあえて家に閉じこもるのはなぜなんだろうと
「じゃあ、宇津野さんは食い物とかはどうしているんですか?」
「食べ物は自家栽培ですかね。必要な調味料は知人に持ってきてもらっています」
もったいないと思った。確かに俺の住んでいる地域は、東京と比べれば建物は少ないし娯楽の場も多いとは言えない。でもだんだん発展してきている為映画館やゲームセンターはあるのだ
それをこの人は何一つ経験をしていない
「宇津野さんこの後空いてますよね?」
「??ええ、もちろん空いてますよ?」
「じゃあ今から俺と町に行きましょ!おれ、案内します!」
急な俺の提案に宇津野さんは困惑していたが、俺の真剣な表情を見て何かを考えた表情をした後、優しいほほえみで宇津野さんはコクンと頷いた
昨日初めて会ったというのにおかしな感じだ。なぜここまでしようと思ったのか自分ですら分からない
だけどこの人をこのままこの家に縛り付けておくのはひどくもったいないと思ったんだ
どうも水魚です。皆様明けましておめでとうございます!!
更新が遅れてしまいましたが今日、明日続けて執筆していたものを投稿しようと思います!
まだまだ寒いので執筆中は毛布が手放せませんが、読者の皆様も風邪に気を付けてぬくぬくしながら読んでいただけると幸いです。




