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~ 予感 ~

「さぁどうぞ」

相手につられながら俺は家主に続いて敷居をまたぐ

やはり入ってみるとそこは驚くほど綺麗だった。入口に繋がる道には飛石があり、普通に歩いていいとは思うがどうしても敷かれた石に沿って歩きたくなる。

家屋は3LDKは余裕でありそうなくらいで、うちより全然広い

少しL字になっており、その部屋から煙が少し出ているところから見て厨房なのだろう

あまりにも俺が知っている家とは違い過ぎてきょろきょろしていると家主はクスクスと笑った


「あなたにとってこの家はすごく興味深いものなのでしょうね」

「あ!すんません……人の家をじろじろ見てしまって…」

急に恥ずかしくなり思わず俯く


「いえいえ、いいんですよ。そのくらい喜んでいただけるとここの家主も浮かばれます」

そう言って大切な人を見るような目でこの屋敷を見つめた。


「え、この家の持ち主じゃないんですか?」

てっきり家主かと思っていたが、実はこいつも俺と同じ……なわけないか


「ここの家の主は不在なんです。私は、主がいつでも戻ってこれるようにここを管理しているんですよ」

なるほど

こんなに裕福そうな家でも何かしら事情があるようで、俺はそれ以上の詮索はやめた


「さて少し話し過ぎましたね。寒いでしょう。客室まで案内しますよ」

通されたのは障子を開けるとすぐに庭が見える部屋だった。あたりを見渡してもストーブやエアコンはないのにこの家は不思議と寒くなかった。むしろ程よい暖かさでどこかホッとする

あの光が見えた部屋はたしか…この部屋の隣?

ふすまを開けようとしたところで丁度家主が戻ってきたため慌てて席についた


どうぞと差し出されたお茶は、ただケトルで沸かしたお湯にティーバッグを浸したのではなさそうな高級そうな味がした。

やばい、勢いで来ちゃったけど俺この人とと何を話せばいいんだ

「このお茶おいしいですね」

沈黙の雰囲気に耐え切れず苦し紛れにそう一言絞り出す


それを家主は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた

「お口に合ったみたいでよかったです!それ私が最近ハマったブランドのお茶なんですよ」


家主の趣味なのかこのお茶のブランド、銘柄、栽培方法、お茶の入れ方、おすすめなどを小一時間ぐらい話していた。俺はあまり詳しくは知らないから大半は分からなかったけど、出会った時よりも血色がよくなった気がする。妹も俺に推しの話をする時もこんな感じだったなぁ


突然そうだとその人はいそいそと席を立ち、いそいそと何かを持って戻ってきた

「良ければこれ、持って行ってください。」

差し出されたのは先ほど話題に出たおすすめブランドのティーバックの箱だった

確か10枚入りで5,250円とかいう…


「え、そんなん貰えませんよ!どこの馬の骨かもわからない俺になんて…!」


慌てて俺は断わると、その人はそうですか…とあからさまにシュンとした顔をしてしまいに行く


さっきも思ったけどあの人警戒心ってもんがないのか??不法侵入しようとしていた俺を家に入れたり、高いものを渡してきたり、少し心配になってきた

「すみません、最近人と話す事がめっぽうなくて少し舞い上がってしまいました」

いじいじと手元をいじっくて恥ずかしそうに俯いてる姿はなんだか子供みたいだ


「そんなに人と会ってないんですか?」

「そうですね、仕事柄人と接触をする必要がないというかなんというかで……」

人と接触しないって事はデスクワークとかか?


「あなたはこの周辺で何を?」

「俺は、母さんに買い物を頼まれてて夕飯の食材を買いに」

「わぁ立派ですね。まだお若いのに」

赤の他人にえらいえらいと褒められて不思議な感じがしたが嫌な気分にはならない


「そんな褒められるような歳でもないっすよ。俺17だし…」

「え…!?17歳なんてまだ赤子同然じゃないですか……!!」

「17歳が赤子ってどんな感性してんだよ!?」


思わず突っ込んでしまった

年上相手になんて口調をと青ざめてる俺に対して、家主は一度キョトンとした顔から一気に噴き出した

「すみませ…プッ…そうですよね、人にとって17年は長いですもんねっ.…フフ」


よく分からんことを言って必死に笑いをこらえようとしているの見て俺は何とも言えない感情になった

この人こんな風に笑うことも出来るんだ

最初はあまり感情が表に出ない人だと思ってたけど、こう話してみると俺とそんな変わらないくらいか?

見た目的には22~24あたりに見える

そっとスマホを見るともう18時になりかけていた

「やっば…!!」

慌てて立ち上がり荷物を持つ


「あのすんません!ちょっ…時間がやばいんで俺はこれで!!」

そういって小走りで俺はお暇することにした


慌ててスーパーで買い物をし、帰路につく

両手に荷物を抱えながら今日の事を思い出していた


「よければ、またいらしてください」


そう最後に俺に向けて声をかけた不思議でどこか儚げな…中性的な男

寒い季節で電子機器も一つもないのになぜか暖かい部屋

そして、あの屋敷から光っていた物の正体

どこか非現実を思わせるあの空間

一時期どうなるかと思ったが、とりあえず事件とかにならなくて良かった

あの人はあんな広い屋敷にいつも一人でいるのか。大切な人が帰ってくるのを待ちながら


「人と喋るのが好きそうなのにな…」

なら俺が屋敷の主が帰ってくるまでの話し相手になったらどうだろう。どうせゲームだったり漫画読むことしかない休日だ。たまになら大丈夫だ


そう思い家の中に入る

もちろん、母さんにはこっぴどく怒られたさ。帰りが遅いはもちろん、テレビつけっぱ、漫画出しっぱなしなど

でも俺はそんなことが気にならないくらい、今日あった不思議な出会いを心から喜んだ


あ、そういえば名前、聞くの忘れたな



------------------------


「スズさん聞いてください。今日我が家に人の子が来たんですよ。ええ、まだとても若い。」

彼は膝の上に丸まった白い動物を撫でる。動物は気持ちがよさそうにゴロゴロとのどを鳴らした


「私たちの主が家を空けてから来客は一人も来なかったというのに不思議な‘‘縁‘‘ですねぇ」

雪が降り積もった庭園を見ながら、彼はぼそっと呟いた






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