第02章 宇宙生命の原初法則
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
細菌であれ、高度知性を持つ人種であれ、根底にあるものは同じだ。
産めよ、増えよ、満ちよ。
それが生命の第一原則であり、逃れようのない本能である。
強い種は繁栄し、弱い種は消える。
ときに淘汰され、ときに吸収される。
この宇宙において例外はない。
低級生命体から文明種に至るまで、同じアルゴリズムに従っている。
では、なぜ、この原理原則は宇宙のどこでも変わらないのか?
知的生命体は倫理を語り、道徳を築く。
だがその倫理は、自らの価値観を正当化するために作られた
後付けの制度にすぎない。
原初の本能自己保存と増殖は、どれほど文明が発展しても消えない。
もし、他の恒星系の種がまったく異なる価値観を持っていれば、
当然、彼らの倫理体系も異なる。
価値観の土台が違う者同士が、どうして安心できるだろうか?
理解しあえないなら、疑念が生まれ、恐怖が芽生え、
種の存続をかけた弱肉強食の論理がむき出しになる。
人種も同じ道を歩んできた。地球の歴史を見れば明らかだ。
見えない他者、理解できない他者に対し、争いは必然のように起こり、
その末には弱者の絶滅がある。
自然界でも、人類文明の内部でも、同様の現象が繰り返されてきた。
現代の地球ですら、殺人は日常的に起こる。
知性を持つエリートですら、同族相手に武力を向ける。
知性は本能を消し去らない。
それはただ、本能に理由を与え、より複雑な形で発露させるだけだ。
ゆえに、地球で起こることは、宇宙の他の文明でも起こる。
文明史が示すからだ。
どの銀河文明も、最初は自らの生存圏を守ろうとし、
やがて外宇宙へ進出したとき、別の文明の生きよ、増えよと衝突する。
そして、人類が太陽系を越える技術を手にした瞬間、
避けられぬ時代が到来する。
他種族の原初法則と、人類の原初法則がぶつかり合う時代だ。
競合する生命圏、異なる倫理、測りえない価値観。
それらが交わるとき、宇宙は必ず緊張する。
これは偶然ではない。
宇宙が生命に与えた最も残酷で、最も普遍的な構造だからだ。




