最終章 銀河連邦第三皇女・地球観察評議声明
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
銀河連邦本星にて、
地球系外文明観察評議の定例報告会で、
第三皇女は報告書を読み終えると静かに言った。
「……地球人はこんなに脆いのか。
がパンデミックを起こす未来を良しとはしない。」
地球文明の本質は未成熟であり、
内部抗争・宗教対立・資源戦争・環境破壊、
自滅要因はいくらでもある。
だが、それは銀河連邦が望む未来ではない。
皇女はさらに言った。
「彼らはまだ監視対象の段階。
だが……未来を正確に射抜く者がいる。」
タツヤとハルの論文。
銀河的真理の一部に触れた、あまりにも鋭い洞察力。
それは銀河側の予測モデルでも警戒対象に分類されるほどだった。
皇女は僅かに笑みを浮かべる。
「地球人にも、理解力を持つ者がいるらしい。」
皇女は立ち上がり、周囲の将校・官僚・科学官に命じる。
「議長として命令する。地球へ公式に訪問する。」
会議室の空気が一瞬で緊張に包まれた。
これは銀河連邦にとって国境開示を意味する重大行為。
皇女は続ける。
「ただし実情は伝えるな。」
「あなた方(地球政府)は未開の野蛮人である。
これは揺るぎない評価だ。」
「太陽系を出る技術を得たとき、
初めて我々と同じテーブルにつく資格が生まれる。」
「それまでは、観察対象であり、保護対象であり、
そして危険性があれば処置対象でもある。」
この本音の外交文書は地球政府のみに送られる。
受け取った各国首脳は、激震した。
これまでの常識を完全に覆す、
銀河的ヒエラルキーの宣言だったからだ。
皇女は最後にこう命じた。
「地球の民衆には、次のように通達せよ。
『辺境の宇宙探査で生命体を発見したため、
その代表として訪問する』と。」
つまり、民衆は安心させる。
地球政府は現実を突きつけられる。
完全に二重構造の外交である。
会議記録には、皇女が退出する前に呟いた言葉が残されている。
「地球よ。
自らの未来を選べ。
我々はただ見るだけだ。」
そして銀河連邦の大型巡航艦が、ゆっくりと地球へ向けて航路を取った。




