第01章 天の川銀河文明史
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
天の川銀河に文明が芽生えたのは、今からわずか十億年前のことである。
宇宙誕生からすでに百三十四億年が経過していた。
その長大な歴史から見れば、文明の誕生はつい最近の出来事にすぎない。
銀河中心部には、超大質量ブラックホールが支配する圧倒的重力環境が広がり、
生命が成立する余地はほとんどなかった。
だが、中心から遠く離れた腕部の星々それこそが生命の揺りかごとなった。
無数の銀河外縁領域で、物質の法則に従いながら多様な生命が誕生し、
環境ごとに最適化された遺伝子が広がっていった。
その営みは、原始的な細菌の繁殖となんら変わりない。
遺伝という仕組みに従い、淘汰を経た種が繁栄する宇宙に普遍の摂理である。
我々、人類は天の川銀河の片隅、太陽系第三惑星において、
知性生命としての頂点に立った。
だが、同じことは他の恒星系でも起きている。
複数の星々で、環境に適合し、文明を築き、恒星の支配者となった種が
生まれているのだ。
では
なぜ宇宙の各地で、似たような文明の勃興が繰り返されるのか
地理的条件が偶然そろっただけなのか。
それとも、なにか意図が働いているのか。
地球が人類に適した環境を備えていたのは、ただの幸運と言えるのだろうか。
あるいは、誰かが実験しているのだろうか?
生物は「産めよ、増やせよ、地に満ちよ」という基本アルゴリズムを共有する。
惑星が違えど、銀河が違えど、その原理は不思議なほど統一されている。
生命の設計図は、誰が書いたのか。
何十億光年の彼方でも、同じ遺伝の法則が作動するという事実は、
ただの偶然なのか。
それとも、宇宙そのものに意思が刻まれているのか。




