保健室
「和くん、いつもと違う気がするんだけど」
「そうかなぁ?」
「うん・・・なんか、ボーっとしてる」
「それと、目もうつろだし・・・」
空閑は机に身を乗り出し、和雅の顔をジーっと見る。
「み・・・見ないで」
頬を紅潮させ、尻すぼみの言葉を吐く。
「熱あるんじゃねーの?」
言いながら右手は自分の額に、左手は和雅の額に密着させ温度を確認する。
「あつい。熱測った方が良いと思うよ」
「そんなことないって、体温高いだけだから」
「保健室行こう」
(大丈夫って言ってるのに・・・・)
空閑は強引に和雅の手首を掴むと、観念したのか立ち上がる和雅。
その瞬間、和雅が崩れ落ちる。間一髪の所で空閑に支えられ、
「ワリィ、力がまったく入らん。保健室行くまで肩貸してもらえる?」
「・・・はぁ~~~、全然大丈夫じゃないじゃん。わかった、肩貸すから保健室行くよ」
――ガラガラガラ
「って誰もいないのかよ」
空閑は悪態をつく。目立つ位置に体温計があり、ご自由に使ってくださいと置手紙があった。
「自由にどうぞだとさ、お言葉に甘えて使っちゃおうか」
和雅は未使用と書かれたボックスから体温計を取り脇の下に入れる。音が鳴り、見ると九度四分で・・・。
「何度だった??」
「たいしたことないから」
「いや、そんなわけないでしょ、あんなフラフラでさぁ。それ、見せて」
体温計を強引に奪い取る。
「九度四分・・・、明らかな高熱じゃん。置手紙書いとくから、とりあえず寝た方が良いんじゃ・・・・?」
と言い、ベッドに移動する。
「朝は、どーだったの?」
「・・・父さんも母さんもお仕事忙しそうだった。だから、迷惑かけたくなくて」
「つまり、ムリして来たってことね」
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――――――
数時間前
―――
「カズ、具合悪いのか?」
本調子ではないのを見抜いたのか父が口を開く。母も、追随するように心配そうな口調で投げかける。
「大丈夫なの??」
(ホントはダルイけど、心配かけたくないからなぁ・・・)
「うーん・・・、大丈夫だよ」
―――
――――――
―――――――――
「ムリしてなんか・・・・」
「強がるってことは、余裕があるってことかぁ~」
「・・・・・」
「ちゃんと休めよ」
服の裾をつかみながら弱々しく言葉を紡ぐ。
「真琴、ハグしてもいい??」
「僕で良いのか?」
「貴方で満足できるかわかりませんが・・・、なんて」
弱々しい手つきで空閑を抱き寄せる。
「真琴も・・・、おねがい」
「わかったよ・・・・」
空閑は、優しく抱き留めるようにハグを返す。
「やっぱり熱出ると心細くなるって―の、本当なんだ。
強がってばっかの和くんが、弱味を見せるって相当だからなぁ」
「・・・・・うるさい・・・です」
思わず頭を撫でてしまう。それに呼応するかのように力を強くする和雅。
「真琴・・・・好きだよ・・・」
どうやら熱に浮かされ囈言を言っているようだ。空閑は、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしていた。照れ隠しなのか足早にこの空間から逃げ出そうとする。
「まぁ、アレだ。・・・とりあえず、寝ろ」
「わかった」
「じゃあ、ちゃんと治して来いよ」
「・・・・うん」
―――
――――――
数日後
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「おはよー!和くんやっと復活したね!!」
「あー・・・もう、やかましい・・・・・。病み上がりなんだから、少し静かにできないかなぁ?」
「そんなこと言われると、白けるんだが」
空閑は、据わった目で見つめ、口を開いた。
「あと・・・、恥ずかしいことを口走った気が・・・・」
「あ~・・・、アレねぇ・・・・・。気のせいでは?」
「そんなわけないと思うんだけど」
「いやぁ、熱が見せた幻覚だよ。たぶん」
疑いの視線を空閑に向け、渋々納得する和雅であった。




