表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢、麻雀で異世界を制す!Ⅱ 打倒勇者編  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/40

恐怖そのもの”を武器に卓を支配する者

観客席にざわめきが走った。

入場口から現れたのは、もはや「人」と呼ぶにはあまりにも異質な巨影だった。

兵士二人分の肩幅を誇るその体躯は、鎧すら不要とばかりに隆々とした筋肉を晒し、歩みのたびに石畳が低く唸る。

黄金に燃える瞳が、会場全体を一瞥しただけで――群衆の喉は凍りついた。

「ひっ……目が合った……!」

「竜王だ……本物の竜王が来た!」

人々の動揺を嘲笑うかのように、巨体は中央の麻雀卓に腰を下ろす。

途端、場の空気が圧縮されるかのように重く張り詰め、四角い卓が小さな玩具にしか見えなくなった。

「……竜の血を継ぐ者、“竜王リンドブルム”。」

観客席の玄人雀士が、思わず低く呟く。

「座っただけで、もはや一局の勝敗は決しているようだな……」

まるで竜そのものが卓に降臨したかのような威圧感に、誰もが息を呑んだ――。


大会場の入場口に、ゆっくりと影が差した。

 その影は瞬く間に長く伸び、照明に照らされた舞台の中央まで届く。

 ――巨躯。

 現れたのは、他の雀士と比べても桁違いの体格を持つ男だった。

 肩幅は兵士二人分はあろうかというほど広く、歩を進めるごとに床板がわずかに軋む。

 ざわめいていた観客席が、急速に静まり返っていく。

 その異様な圧迫感に、誰もが息を飲み、喉を詰まらせた。

 まるで竜そのものが、この聖戦の舞台へと歩み入ってきたかのように――。

巨体の男が一歩進むたび、床板がわずかに震えた。

 それは錯覚か――いや、観客には確かに「竜が歩いている」としか思えなかった。

 彼の全身から溢れ出す気迫は、すでに人の枠を超えている。

 鍛え上げられた肉体にまとわりつくのは、生まれながらの覇気。

 その存在自体が、この場にいる全ての者へ無言の威圧を叩きつけていた。

 そして――黄金の双眸。

 爬虫類を思わせる冷たく鋭い光が観客席を一瞥した瞬間、数万の人々が一斉に息を呑む。

 彼こそ、竜の血を継ぐ者。

 “竜王リンドブルム”の名が、この場にいる誰もの脳裏に刻み込まれる。

ざわめきは、悲鳴にも似ていた。

「な、なんだあの巨体……!」

「まるで人の皮をかぶった竜じゃないか……!」

 観客席のあちこちから漏れる声は、興奮ではなく畏怖に震えている。

 誰もが息を詰め、ただその巨影を目で追うことしかできなかった。

 熱気に包まれていたはずの闘技場が、一瞬にして凍りついたような錯覚すら与える。

 恐怖と敬意が混じり合い、場を支配するのは――圧倒的な存在感。

 リンドブルムはまだ卓にすら触れていないのに、すでに勝負は始まっているかのようだった。

巨体が、ゆっくりと中央の麻雀卓に近づく。

 一歩ごとに床板が低く唸り、観客は思わず身をすくめた。

 そして――リンドブルムが腰を下ろした瞬間。

 白銀の卓はまるで子供の玩具のように小さく見え、その存在感に押し潰されそうになる。

 彼が背もたれに身を預けるだけで、周囲の空気は急激に張り詰め、音さえ凍りつくようだった。

 向かい合う雀士たちの手が震え、牌を持つ指先が汗に濡れる。

 まだ一枚も配られていないというのに――すでに戦意は削がれていた。

「……ひ、ひと息で呑まれそうだ……」

「竜王と卓を囲むだけで、これほどの重圧とは……!」

 観客席からも怯えた声が漏れ、闘技場そのものが竜の威圧に支配されていた。


観客席の一角。老練の雀士が腕を組み、険しい眼差しで卓を見つめていた。

 彼は数多の修羅場を潜り抜けてきた歴戦の玄人――だが今、その顔に浮かぶのは畏怖の色だった。

「……竜の血を継ぐ者、“竜王リンドブルム”。」

 その呟きは、周囲の観客の耳にも届き、ざわめきが広がる。

「座っただけで……もはや一局の勝敗は決しているようだな……」

 その言葉に、隣の若い雀士がごくりと唾を飲み込む。

 まだ配牌すら始まっていないというのに、会場全体が竜の威圧に呑まれ、すでに“敗北”の予感を共有していた。

その圧倒的な存在感に、民衆は思わず息を呑んだ。

 理屈ではない。血が、魂が、本能的に告げていた――あれは人ではない。竜だ。

「りゅ、竜王だ……!」

「竜王リンドブルム……!」

 誰かが震える声で呟くと、それは火種のように広がり、会場全体を覆っていく。

 恐怖と畏怖、そして抗いがたい憧れが入り混じったどよめきが波紋となり、巨大な渦を巻いた。

 次の瞬間、観衆の声がひとつに収束する。

「竜王――! 竜王――!」

 その異名は、まるで刻印のようにリンドブルムへ定着した。

 彼が卓に腰を下ろしただけで、聖戦雀杯の舞台はすでに竜の支配下に置かれていたのだった。

竜王リンドブルムの打牌は、まるで戦場の鉄槌だった。

 牌を切るたびに「ドンッ!」と卓が揺れ、音は岩を砕く衝撃のごとく観客席にまで響き渡る。

「くっ……!」

「ひ、ひとつ切られるだけで空気が変わる……!」

 相手の雀士たちが守りを固めようとすれば、その僅かな逡巡を豪快なリーチで叩き潰す。

 遠慮も、迷いも、そこにはない。

「細かい計算? 小賢しい……!」

 黄金の瞳をぎらりと光らせ、リンドブルムは豪語する。

「竜は、一撃で獲物を仕留めるのみよ!」

 その攻めは荒々しくも無謀ではなかった。

 むしろ直感に従った大振りの一打が、不思議なほど裏目に出ない。

 彼の血に宿る“竜の勘”が、常人にはあり得ぬほど正確に場の流れを掴み取っていたのだ。

 結果、気迫と直感が合わさったその猛攻は、次々に圧倒的な和了へと結実していく。

 まさに竜が牌を操る光景に、対面する者も、見守る者も震え上がるしかなかった。


リンドブルムが無造作に伸ばした手が、卓上の牌をつかむ。

次の瞬間、まるで竜が爪を振り下ろしたかのように――**バァンッ!**と、鋭い音が場を震わせた。

「……っ!」

対面の雀士が思わず肩を跳ねさせ、視線を逸らす。

その音は単なる打牌の響きではなく、獲物を仕留める一撃の咆哮のように聞こえたのだ。

観客席からもざわめきが漏れる。

「い、今の音……まるで岩を砕いたみたいだ……!」

「牌を切っただけで、威圧されるなんて……」

リンドブルムは一切表情を変えず、ただ次の牌を握る。

彼の一打一打は、攻撃。

その動作そのものが、すでに「竜の戦い」だった。

場が一瞬、静まった。

他の雀士たちが気配を探り合い、慎重に手を崩して守りに回ろうとする。

――その瞬間。

「フン……竜の前で退くか」

リンドブルムの口元が、不敵に歪む。

次の打牌と同時に――

「リーチだッ!」

雷鳴のような声と共に、リーチ棒が卓に叩きつけられる。

ガァン!

その音は木片が落ちただけのはずなのに、観客には天を裂く稲光の轟きのように響いた。

「ひ、ひぃっ……!」

対面の雀士は息を呑み、ただ牌を握る手が震える。

「守りに回った瞬間=死」――それを全身で悟らされる。

リンドブルムの攻めは、相手に選択肢を与えない。

ただ、竜が一撃で獲物を狩るがごとく。

リーチ宣言と同時に走る緊張の稲妻。

場の空気は凍りつき、誰もが固唾を呑んで次の一打を待つ。

リンドブルムは悠然と腕を組み、黄金の瞳で相手を射抜いた。

その口から放たれたのは、理を踏み潰すような豪語。

「細かい計算? 小賢しい……」

吐き捨てるような低い声が、会場全体を震わせる。

続けて、竜王は吼えた。

「竜は――一撃で獲物を仕留めるのみッ!」

その言葉は、もはやセリフではなかった。

宣告。

そう、竜王が勝利を約束した瞬間だった。

観客席からは悲鳴にも似たどよめきが広がる。

「ひ、一撃……!」

「く、喰われる……!」

竜王リンドブルム――その名が、ただの異名ではなく、存在そのものを指す言葉として刻まれていった。

リンドブルムの打牌は、大雑把に見える。

手役を緻密に構築するでもなく、無駄を削ぎ落とした正確さとも違う。

それはまるで竜が空を旋回しながら、ただ獲物を狙うかのような大振りな動き。

――だが、裏目を引かない。

放たれた牌はすべて「死なない場所」へと落ちる。

危険牌のはずが通り、無理筋の押しが奇跡的に刺さらない。

「……なんだ、この感覚は……」

卓を挟んだ対面の雀士が、汗を滲ませながら呻く。

確率論では説明できない。

経験則でも読みきれない。

それは、まさに竜の直感。

捨て牌の順番――間の取り方――指先が牌を離す“間”すら、場全体の流れを掴んでいる証だった。

竜王の選ぶ一打は、天運をねじ伏せるように「必然」へと変わっていく。

会場の玄人雀士が息を呑み、呟いた。

「……あれは、流れを読んでいる。いや……竜だからこそ見えている“風の流れ”か……」

その瞬間、誰もが思った。

これは博打ではない。竜による狩猟だ。

「――ツモ」

低く響いた声と同時に、竜王リンドブルムの指先が卓上に牌を叩きつけた。

大三元。跳満を超える一撃。

卓が震えたように感じたのは、気のせいではない。

他の雀士はその瞬間、体内の力が根こそぎ抜け落ちるような感覚に襲われた。

「ば、馬鹿な……こんなの、どう守れっていうんだ……!」

「攻めても……潰される……!」

守れば打たされ、攻めれば潰される。

竜王の前では、戦術も経験も、すべて無意味。

――次の局。

再び牌が叩きつけられる。今度は国士無双。

「一撃で獲物を仕留めるのみ……」

その言葉の通り、彼の和了は常に“必殺”。

牌を積み上げて勝つのではなく、一振りで獲物を屠る刃のような勝ち方だった。

観客席が悲鳴にも似た歓声で揺れる。

「うおおおお……!」

「竜だ! 竜が牌を操っている……!」

恐怖と興奮。

その二つが混じり合い、会場全体を異様な熱気で包んでいく。

卓の上に立つのは、ただ一人。

人ではなく、竜。

誰もがそう認識せざるを得ない瞬間だった。

卓を制した竜王リンドブルムは、勝利を誇示するでもなく、ただ静かに腕を組む。

それだけで十分だった。

彼の和了は決して偶然でも、ただの暴力でもない。

竜の血に刻まれた“直感”――確率論すら超越する、理をねじ曲げる勘。

その力に触れた者は皆悟る。

「計算では届かない領域にいる」と。

観客は熱狂しながらも震えていた。

彼が勝つたび、喝采と同じだけの畏怖が広がっていく。

「……あれは、人を楽しませる雀士じゃない」

「恐怖で場を縛る……まるで竜そのものだ」

サラが笑顔で観客を味方につけ、

クラリッサが旗頭から“真に戦う雀士”へと歩む一方――

リンドブルムは対照的に、“恐怖そのもの”を武器に卓を支配する者として、

その立ち位置を確立したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ