〔第56話〕狙いと善意を添えて
今回の話は吹き出し多めに書いてみました。
前の投稿から毎日コツコツ書いてましたが、三万字ボツにッ…遅くなってる時は大きなボツが発生したと思っておいてください…。
周回移動都市の上にある頑丈な施設の中、秘密裏に数十人規模の統合幕僚会議が開かれていた。
※【統合幕僚会議とは陸海空を統べる偉い人の作戦会議です。】
「エヴァンテはいつまで我々に咲嶺兎のorder No.を隠しているつもりだ。」
「エヴァンテは六防にすらそれを伝えていたいと聞いている。」
「やはり、エヴァンテの独裁は危険だ。4,000年前の様な事になりかねんぞ。」
「しかし、エヴァンテの手元には四騎の2人がいる。今の我々には合法的に手出しはできん。」
「それに奴は四使のセルフレリア1人を常に隣に立たせているときた。」
「ドレス•ロードを連合列車からこちらへ引き戻すというのはどうだろうか。」
「そんな事をすれば連合が異常領域に他を出してしまいかねない却下だ。」
「そんな事を話していても無駄だろう。今、物理的に我々の下にはメイトンがいるのだからそれを何とかせねばならん。」
「エヴァンテからは“大丈夫”とだけ聞いている。」
「ふざけているのか。エヴァンテッ…」
「何をどう取ったら大丈夫になるんだ。しかし、ヴェルサイユの代理人、ヴェルサイユ級の命令はあからさまに逆らえん。」
「エヴァンテは我々の目の届かない場所で一体何を持っているのだろうか。」
「一体何人のバケモノを手駒にしているのだ奴は。統合幕僚長も堕ちたものだな。」
「しかし、エヴァンテが動かせるスフィアより我々が動かせるスフィアの方が格段に多い。一概に力比べはわからんじゃないか。」
「…馬鹿か。そんな物、何機あろうとnew order一機で全部覆るだろう。」
「しかし、new orderはまだ我々についたわけでも、エヴァンテについたわけでもない。」
「今後、new orderを引き入れた方が優位に事を進められるというわけか。」
「メイトンの件はエヴァンテとエヴァンテの部隊に任せるとして、我々は222について練らなければならない。」
「そうだ皆。さぁ、仕事だ仕事。」
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そして場面は移り変わり薄暗い青白く光る太陽の様な発光体が天井に目立つ、廃れた街。
閉鎖的な空間はかつて獣人達が暮らしていた都市の下層、
“トワイライト5000”だ。
「こんにちは、メイトン。そして、周回移動都市へようこそ。」
エヴァンテは目の前にいる1人の華奢な少女に話し掛ける。
見た目は赤いチャイナ服に頭に二つの大きなボンボンをつけたツインテールの少女。
その少女はエヴァンテを見た瞬間、体を硬直させた。
「…待ってーな、状況が読み取れんのやけど。」
「早速ですが、挨拶がてら手土産をお持ちしました。どうぞ、都市特製祝福のアップルケーキですわ。」
「ちょちょちょちょちょ。待って待って待ってーや。」
「どういたしましたかメイトン。と言うのはいささか意地悪ですかね。」
「アンタ…まさか、1人でウチに会いに来たんか?」
エヴァンテは自分の豪勢なシスター服の裾を持ち上げ貴族の様に挨拶する。
「勿論でございますわ。裏に軍隊を待機させているなど一切ございませんの。」
それを聞いた瞬間メイトンは自分の拳を振り上げた。
しかし、メイトンは殴らない。
「…罠か。そもそもヴェルサイユ級が丸腰でウチに会いに来る方がおかしいやろ。罠やな。そのケーキ、毒でも入れてんのかいな。」
「ふふっ。とんでもございませんの。」
メイトンは目を細める。
メイトンはある程度、人の感情の流れが読める能力がある。
それによると…
(コイツ…何かしらの絶対的な自信を持って喋っている…つまり…罠か。いやでも、罠やったとしても粗末すぎるわ。)
「アンタの狙いが全くわからん。今までこんなことなかったわ。流石エヴァンテさんやね。うち過去一混乱してるわ。」
エヴァンテはメイトン達が使っていたであろうテーブルにりんごケーキを置き、それを切り分け始めた。
「…」
メイトンはエヴァンテに対し絶句する。
普段のメイトンならエヴァンテが視界に入った瞬間、即殺害ていたはずなのだ。
ダグラス•モニカにも、そうしろと指示を受けている。
しかし、今回丸腰のエヴァンテ1人だけがメイトンの前に現れた。
明らかに罠だ。
いや、裏の裏か…?
命を賭けたブラフか…?
何を考えている。
「メイトン。都市へ来てみてどうですか。」
「…どうもこうも数日の間ずっとここにおったんやで。感想なんか暇やなぐらいしかないわ。」
「ゾンビやB個体など見かけませんがどうなされたのですか?」
「バケモンが流れ込んで来る侵入口塞いでから、残った残党を殲滅させただけやよ。」
「流石連合の主力ですの。やる事が大胆ですわね。しかし、それだと、忙しくて仕方なかった数日間になってそうですが。」
「そんなカスの殲滅なんか2日で終わったわ。あぁ〜暇やわ〜。P個体でも出て来んかなぁ〜。それかアンタ、ウチの相手でもしてくれんのぉ?」
メイトンの目は獲物を狩る鷲の様なギラつきになっていた。
「つまり、貴方“暇”と言いましたわね。」
待ってましたと言わんばかりのエヴァンテの表情にメイトンは更に戸惑う。
「アンタ、気持ち悪いわ。ダグラス•モニカとええ勝負してるよ〜。あっ、これ褒めてないからな、貶してるだけやからな。」
しかし、そんな嫌味など耳に入っていないかの様な表情でタンタンと話を続けるエヴァンテ。
「今私の手に在りますわ〜、一枚のディスク!」
「…なんやねん。」
「そしてあら不思議あそこになぜか画質の良さそうな大きいTVモニターがありますの。これらを組み合わせる事で周回移動都市が現世界からかき集めたの映画が沢山観れますわ!」
「…はぁ…。アンタなぁ…。ウチがそんなもんに釣られて“はいそうですか”って言う事ホイホイ聞くと思ってんのか?あかん、ウチの中でアンタのイメージが音立てて崩れてくわ。」
「待って下さいまし…ッ。」
唐突なエヴァンテの真剣な表情にメイトンは体の重心を落す。
どんな攻撃にも対応できる様に警戒心を高める。
「…なんやねん。」
「このヴェルサイユ級エヴァンテが厳選したアニメも100年分入ってますわ!」
「…ほんまになんやねんアンタ。……でも、まぁ一様条件だけは聞いといたるわ。」
「なんと…」
「なんと…?」
「タダですわ…」
「は?ウチは騙されへんよ。タダより高いものはないんやから。
「では、手が滑った〜!ので、ここのテーブルにディスクを置いておきますわ。」
「…まぁ結局、難しい条件出されてても力尽くで奪ってたけどなぁ〜。」
「あっ、そのディスク私物なので返してもらう時に壊われてたら私、多分2年は凹みますわよ。」
「へぇ〜…これ今すぐぶっ壊してアンタを落ち込まさすのもありやけど、………まぁ作品に罪はないからなぁ〜。それは許しといたるわ。後、貰ったらウチは返さん派やからな。」
なんとなく話の区切りがついたところでエヴァンテは手を2回叩いた。
——————パンパン。
次の瞬間、世界が歪み歪みだした。
「な、なんなんッ...。罠か!油断したッ…エヴァンテェ!!」
——————パキパキッ…。
世界の空間がバリバリ剥がれ落ち始めた。
メイトンはこれをなんらかの自分への攻撃と認識し、すかさず周りをえぐり飛ばす。
——————ズドドドドドドドドドン!!!
「とんでもございませんわ。」
「あ゛ぁ゛!?!?」
——————ズッッドォォォォォォォッン!!!
——————ブシャッ!
「はぁ?!アンタッ…」
メイトンの攻撃がエヴァンテの下半身をモロに直撃し、血肉が飛び散る。
それを見て、メイトンはエヴァンテのあっけなさに攻撃を続ける手を止めた。
「ぐ...カヒュッ...カヒュッ...」
「あっけないにも程があるやろアンタ。これも罠か?」
下半身がなくなりもうすぐ死ぬであろうエヴァンテは最後の力を振り絞って話す。
「貴方が一番良かったと思う作品を選んでおいて…くださいまし…」
そう言うと、エヴァンテは静かに瞳を閉じた。
「あ、アンタほんま何言ってん…く、狂ってるな…怖いわ。ほんま何がしたかったん。キモいわ。とっとと死んどけ。」
もちろんテーブルに置かれていたディスクはメイトンの攻撃に巻き込まれて粉々になっている。
——————パキパキッ…。
とうとうメイトンの視界から元いた世界の景色が見えなくなってきた。
最初、メイトンはこの現象自体エヴァンテのギアが引き起こしている物だと考えていた。
しかし、その本人を殺しても現象が止まらない事から状況を再度読み込もうとする。
メイトンの視界が完全に暗くなった。
「チッ、油断した。人の言葉なんか1ミリも信じるもんちゃうわ。」
そういって瞼を閉じた。
状況なんもわからんかったなぁ…。
うちでも、流石に…死んだか…?
死ぬ時ってなんや案外普通なんやね。
て、いうか………いつ意識消えるんやろか。
「ん…」
メイトンは瞼をゆっくり上げる。
「なんや…」
世界は何事もなかったかの様にそこにあった。
エヴァンテを殺した時の血肉は無くなっており、あの一瞬で破壊し尽くした街も綺麗に元に戻っていた。
まぁ綺麗といえど元々廃れたボロボロの街だったのだが…。
「一体なにが…」
その時メイトンは気づいた、
テーブルの上に置いてある1枚のディスクに。
「壊したモン全部戻ってる…のにディスクだけは戻ってる…」
メイトンは状況を理解できず周りをキョロキョロ見渡す。
「エヴァンテ…は、いない…。今ので死んだんか…?ていうか、ウチはなんで生きてんのや…時間巻き戻ったんか…?いや、ならディスクはテーブルの上に置かれてないはずや…ほんまなんなん…」
メイトンは今起こった事を整理する為、その場に座り込んだ。
——————1時間経ち…。
——————2時間経ち…。
——————3時間経った。
しかし、考えれば考える程混乱する状況にメイトンは嫌気が差した。
そして、テーブルの上に置かれていたディスクを持ち上げる。
「まぁ、ええわ…」
「アイツが生きてるにしろ、死んでるにしろ墓の前で感想ぐらい言える様にしといたらんとね。」
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赤い夕焼けの下でエヴァンテは教会の庭に布を敷き、ピクニックの様な形で1人の青年、ツグネと共にティータイムを楽しむ。
「ツグネ。私が今トワイライト5000にいるメイトンに対して行おうとしている作戦は…」
「エヴァンテ。突然だが、その作戦は成功した。」
「…ん…?まだ私何も喋ってないですわよ?」
エヴァンテはツグネのその言葉に対し不思議そうな表情を浮かべた。
「やっぱり覚えてねぇのな。まぁそういう前提の作戦だったししゃーないのか… (死んだからそらそうか。死んだら記憶持ち越せないもんな。)」
「何の事ですの…?私は今メイトンについて……。ハッ…!」
その時エヴァンテは文字通りハッとした。
それはそれは“ハッ”とした表情をした。
「あぁ、そうだ。お前が未来で提案したその作戦が今成功した。」
「つまり、今未来の私とツグネの作戦が成功して、2回目に入った、という事ですのね。」
「あぁ、そうだ。作戦は今お前が俺に言おうとしてた事だ。てはず通り、ディスクは10日前にセネカと俺がトワイライト5000に置いてきた。そんで未来の前提を崩さない様にダグラス•モニカのメイトンを使った奇襲作戦は教えなかった。」
ツグネのその言葉にエヴァンテは唖然とする。
「その様子だとどうやら未来の私が頑張ってくれたみたいですわね。」
「…お前が死ぬ事前提で囮担って、んで、俺がメイトンの死角から距離を詰め毒薬で即死。そんで、メイトンの記憶だけ持ち越してやり直しする…。メイトンにだけ伝わる方法でお前の厳選100年分の映画.アニメ集を渡す…か。確かにこれなら誰にもバレねぇな。」
「万が一こんなメリットの薄い作戦が都市にバレてしまっては連合の裏切り者だと思われてしまいますわね。」
「…流石だな。肝の座り方が違ぇよ。」
「メイトンには作戦の狙いより、私方の善意の部分が届けばいいと思っていますわ。」
「…そうだな。でも、今回のでメイトンが俺のギアについて気づいたら厄介なんじゃねぇか?」
「トワイライト5000は閉じた空間、太陽の陽も入らない場所。時間を巻き戻したという事実にすら気づかないのがオチですわ。」
「いや、破壊した街戻ってたら流石に何かには勘づくだろ…。…まぁそん時はそん時か。ビビってても仕方ねぇな。」
「さっ、兎様がそろそろ帰って来られます。今日は久しぶりに皆で夕食を囲みましょう。フブがハンバーグを作ってくれたみたいですよ。」
「…なんかさっきフブが通りすがりに“特製デミグラスハンヴァ〜グ”って言ってきたのそれか、」
何回も言っておきますがエヴァンテは“ですわ構文”を考えて使っています。ですわ構文つけるタイミングがバラバラなのはそういう事です。後、補足すると気を抜くとですわ構文が出るみたいです。他にもエヴァンテの口調については色々設定があります!今後小出ししていくつもりなのでよろしくお願いします。
ヒントコーナーを作ろうと思います。
〈プロメテウスがあるのはどこでしたっけ…?〉
【私達、社交ダンスなんて踊った事ないよ?】




