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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第一章]周回移動都市ヴェルサイユ〈本編〉
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〔第54話〕決着のデミグラスハンヴァ〜グ

 


 瞬きする間、救援に来た仲間のベクターが消失した。

 いや、正確には消失したのではない。

 ラスターを除いたベクターの4機全てが一瞬にして崩壊したのだ。

 そう、今の一瞬にで、だ。


new order(ニューオーダー)ぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


 しかし、ラスターの目にnew order(ニューオーダー)の姿は映っていない。


 俺の仲間は無事なのか。

 まさか、死ッ... 

 いや、落ち着け。

 冷静になるんだ俺。

 あのベクターの残骸を見れば仲間の生存は絶望的だという事は読み取れるだろ。

 希望に縋るな。

 今を見ろ… 

 しかし。

 なら、なぜ最初から俺にソイツを当てがわなかった…。

 何が目的だ。 

 分隊したほうを警戒したのか? 

 なら。なぜ分隊した俺の仲間を今撃墜したんだ...。


 本部からの報告によればこっち(連合)の作戦は成功したと見ていいだろう。

 ヴェルサイユ側はnew order(ニューオーダー)という手札を持ちながらなぜそれを許したんだ。

 出現日時不明な222(セカンドオーダー)との戦いの為、いつでもnew order(ニューオーダー)を万全な状態にしたいからか…?

 なら連合が1週間前に猛攻を仕掛けた時、なぜnew order(ニューオーダー)がのうのうと出てきた。


 色々気色悪いがまぁいい…。


 new order(ニューオーダー)の刃が俺ののどをかっ切っていない限り、俺にももがき様があるってもんだ。



 ———《ん゛ん゛…じゃぁ正式に、こちらはヴェルサイユ 第三師団(だいさんしだん)隊長(たいちょう)六防のネネだ。ラスターもとい連合のラスター•エネ•ウォンスキー、残るは君だけだ。登降するのならばその命は捕虜として保証しよう。》


「俺の仲間は死んだのか…」


 ———《えぇ、今の一瞬で私の仲間が殺した。》


「なんで俺だけ助ける…俺の仲間は捕虜足(ほりょたり)り得なかったのか…」


 ———《まぁ…そうね。》


「なめんなよ。」


 ———《…あっそ。んで、どうするの。》


「だから、なめんなよってんだよォ!!!」


 ラスターはネネの不意を突き、スフィアを押しのけ距離を取る。

 しかし、ブースターやバーニアがない状態で海中に浮かびながら戦っていた為、なかなか距離が離れない。


 ぐっ…どうする俺、また海中戦に持ち込むかッ…?!


 ネネが使っていたロストタイムアクセラレーター…今それを使って距離を詰めてこない事を考えると発動にはタメが必要なのか?


 俺も必殺技のワザの1つや2つ持っているが、今使うか…?

 最初に使った自爆ミサイルもその一つだ。

 今まで、俺より格上の相手にはこの方法で初見殺ししてきたが、あれを食らってピンピン生きている奴はアイツ(六防のネネ)が初めてだ。


 使うか…今、2個目の切り札を…。

 …代償はでかいぞッ…どうする俺。


 いや、まだやれる事はある投げやりになるな。


 ラスターはさっきネネに外されたブースターを海中から拾い上げ、瞬時に自分のバックパックに付け直した。


 ———《君は凄い。ベクターの頭を必要以上に守る様な仕草を私の脳裏に焼き付け、“コックピットは頭にある”と思い込ませる事で戦いを有利に運んだ。その結果、この私のブースターを破壊することができたのだから大したもんだ。》


「チッ。流石の分析、年の功って奴か。」


 ———《誰が老人だと。》


「言ってねぇよ...」


 ———《わかった。単刀直入に言おう。寝返れラスター。》


「…。」


 ラスターの心は揺れた。

 カスみたいな事しか命令しない連合の上層部、歴史上最も人間をを殺したといわれるヴェルサイユ。

 どちらが俺にとって悪なのか。

 いや、まぁ俺は正直“悪”だとか“正義”とかどっちでもいいんだよな。

 あの天下無敵のヴェルサイユに入って不老になるのも良い。


「でも...殺された仲間の分ぐらいは復讐させてくれッ!」


 ラスターはブースターの出力を全開にし、スフィアと距離を詰め海中へ引き摺り込んだ。


 ———《まだやるってのかッ…(クッソ…ブースター回しながら海中にッ...)》


 ブースターもバーニア同様、水中で点火し、燃料タンクに水が入ったらオシャカになる。

 極限まで絞れば、一気に高出力で水を弾き飛ばせるバーニアと違いブースターは一瞬でその圧力が出せない。

 故に、水中でブースターを点火させてしまうと水の浸食を防ぎきれず爆発する。

 が、空中で点火させ充分な圧力を保っているのであればブースターを停止させるまでの間、水中でも展開可能だ。



 ——————シュゴォォォォォォッ!!!



「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 ———《何が狙いだッ…!もう海底だぞッ!!!》


 水深が深くなるにつれて、ベクターの歪んだコックピットのハッチ隙間から水が入ってきた。

 しかし、ラスターは動揺しない。


「知ってかぁ?!」


 ———《なによぉ!!!》


「ブースターも、海底に押し付けりゃァア一時的にバーニアになるんだよォォォォォォォ!!!」


 ———《はァッ?!なんじゃそ...》


 その瞬間押し込めていたバネが弾ける様な勢いで海底から一気に上昇する2機。


 ———《離せェェェエエエッ!!!》


「離さなねぇよブゥァアァァァァァアカァ!!!」


 2機は勢いそのままに海面から空へ飛び出した。



 ——————バシャァァッンッ!!!



 ラスターはそれと同時に暴れるネネを突き放した。


 ———《何考えてるか知らないがッ、今ここで潰す!ロストタイ…》


「させねぇよッ!!!ブースターホームラボンバァァァァァァァァッ!!!」


 ———《はァ!?!?》


 ラスターは自分のブースターをネネに振りかざした。

 もちろん、超高圧力のブースターは、激しい衝撃にも耐えれる様に設計さている。

 が、その程度の衝撃で爆発しない事はネネもラスターも承知の上だ。


 しかし、ブースターは激しい熱と衝撃を奏でて爆発した。





 ——————ドガァァァァァァァァッン!!!




 結果、ベクターの半身は崩れコックピットが剥き出しの状態になった。 









 ——————————————————#####




「見るに耐えない姿だな…ゴホッゴホッ…」




 海中に浮かびながらボロボロのベクターの上でタバコを吸うラスター。

 目線の先にはベクターよりダメージを受けたスフィアがベクターと同じく海中に浮いている。


「戦場の悪魔と呼ばれていた女、六防のネネ。流石に死んだ…よな…。まぁどっちでもいい。」


 正直、掛けだった。

 爆破させるブースターとの距離が少しでも違えば、あぁなっていたのは俺の方だったかもしれない。


 途端、ベクターのコックピットのオープン回線から声が響いた。


 ———《君…凄い!凄いよ!!あれ全部即興でやったの?!凄い凄いよ!!!ラスター!!!》


「…チッ。死んでねェのか。」


 しかし、目の前のバラバラになったスフィアのコックピットに見る限り人はいない。


 ———《まさか一度海底に潜ってブースターのボロボロタンクの圧力を弱らせて爆弾の様に使うなんて!!!》


 いったいコイツはどこから話している。

 俺が今まで戦っていたのは無人のスフィアだったってことか…?!


「…まぁこの際だから教えといてやるよ。」


 ———《…えぇ何がっ?》


 子供の様にはしゃぐその声に身震いさえ感じる。


「…海底に潜ったのはブースターの燃料を減らす為でもあったんだぜ。お互い爆死しないようにな。」


 ———《す、凄い…凄すぎる。君、ラスター!やっぱり君はヴェルサイユ側に来るべきだ!》


「はぁ...」


 ラスターの脳裏によぎるダグラス•モニカの姿。

 ヴェルサイユに寝返るのもありだが、あの男の負ける姿が想像できない。


「…俺は…ヴェルサイユより…ダグラス•モニカを敵に回したくない。」


 ———《はい、と言わせるまで今日は逃さないよ。》


「テメェ何言って…」



 ——————キィィィィッン!!!



 甲高い音が空に響き渡り、物凄い風圧でラスターのタバコの火を吹き消す。


「ハァ…作戦通りメイトンとベックは届けたぜモニッさんよぉ。」


 そう呟くラスターの視線の先、1週間前に見たバケモノが写っていた。


「…new order(ニューオーダー)。」


 ネネやラスターとは比べ物にならないほど極限まで絞ったバーニアの音が耳に障る。

 バーニアからこんな音出んのかよ...。

 熟練パイロットならこの音を聞けば誰だってわかる、レベルの差。

 そしてnew order(ニューオーダー)がスフィアの手を通してラスターの手元に小さな何かを投げた。


「おっと...ん?…これは、スマホか?」


 するとそのスマホから着信が鳴り響く。



 ——————プルルルルッ。プルルルルッ。



 ——————タッ。



「もしもし…うちぃ~ラスターやけど~。今めっちゃ絶望的な気分やねーん。そんなうちに何の用な〜ん?」


 ———[こんにちは、ラスター•エネ•ウォンスキーさん。]


「今度は誰だよ。」


 ———[私はヴェルサイユ代理 エヴァンテ です。]


「ほう、あの歴史上悪名(あくみょう)高いエヴァンテさんさんねぇ…まぁ正直そんな有名人が俺に何の様だよ。」


 ———[そうですね。話したいことは雨粒の数ほどあるのですが…まずはお茶でも()ぎながら話しましょう。]


「…ここに茶なんてねぇよ。」


 ———[なら、お茶がある場所でお話ししましょう。]


「あぁ、もう...。とりあえずわかった。行きゃぁ良いんだろ行きゃぁ。でも、仲間にはならねぇからな。」


 ———[えぇ。承知の上ですよ。ウォンスキーさん。]


「その前に一つだけ聞いて良いか?」


 ———[えぇ、もちろん。]


「エヴァンテ。お前がnew order(ニューオーダー)か…?」


 ———[ふふっ違いますわ。私はただの無力な淑女(しゅくじょ)ですわ。]


 目の前のスフィア(new order)(てのひら)を差し出してきた。


「…ハァ。」


 ラスターは差し出された(てのひら)によじ登りスマホの電話を切ってそれを海に投げ捨てた。

 そのタイミングで(てのひら)は軽く閉じられnew order(ニューオーダー)が動き出した。



「なぁ…new order(ニューオーダー)スフィアって全部無人で動いてたのか…?」


 問いかけるも返事はない。

 飛行中の轟音で声が掻き消されているのか、ベクターとは違いそもそもスフィアには人声検知(じんこうけんち)センサー付いていないのか。

 俺が無視されているのか…。


「なぁ…俺達は必死こいて無人機と戦ってたってつーことか…」


 返事はない。


「お前らヴェルサイユ陣営はどんな現場でも、撃墜されたスフィアはすぐ回収していってたな。その理由ってスフィアの中が無人だってバレたくなかったからか…?いや…過去の戦いでヴェルサイユ陣営の奴の死体がコックピットから焼け落ちてきたことがあったな…何機が無人で何機が有人なんだ?」


 もちろん返事はない。


「あぁ、ただでさえ世界はゾンビやらバケモンやらに溢れてクソだっつーうのに…まだ俺達、争うのか…」


 返事はない。


「お前らにとって不老ってそんなに魅力的なのか。」


 返事はない。


「ハァ…何やってんだろうな人類ってやつは。ずっとずっと...」


 返事はない。


「捕虜のメシってやっぱ粗末なもんなのか?」


 返事はない。


「やっぱ、new order(ニューオーダー)って良いメシ食ってんだろーな。俺らと違って。」


 返事はない。


「…お前の今日の献立(こんだて)教えてくれよ。」





 ——————「ででデミグラスハンヴァ〜グ…」





 人を気を逆撫(さかなで)でする様なムカつく声がスフィアの(てのひら)に設置されていたスピーカーから聞こえた。 

 new order(ニューオーダー)は恐らく声自体が超機密情報なはずなのに、こんなしょーもない質問に返事した。

 俺はきっと生きて連合列車(連合の拠点(家))に帰れないんだろうな。

 にしても、デミグラスハンバーグか。



「あ〜…うっぜー…」




new order 「私のスマホおおおおおおおお!!!!」

海に投げ捨てられたスマホ「ご主人様ぁああああああああああああ!!!」



次回、ダグラス•モニカの策略にまんまとハマるヴェルサイユ陣営。なぜラスターとネネの戦いに最初からnew orderがいなかったのか明らかに!

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