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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [番外編]京伝
63/66

〔番外編第12話〕ドラゴンは覚えている。

後、数話で番外編終了です。

早く本編書きたい…。

 


【さぁ、(ちか)いの時だ。】




「…グスンッ。いかぃのときぃ…?」




【君も歳相応、可愛い所あるじゃないか。】







 ——————————————————#####







 ——————カチッ。




 世界はまるで何事もなかったかの様に動き出す。









「どういたしまして。」





 聞こえて来た声、これはフブさんの声…か?

 私は…変わらず、フブさんに抱かれた状態だな。

 でも、なんで私フブさんに「どういたしまして。」って言われてるんだっけ…。

 あっ、そういえば私、助けてくれた事ありがとうって言って、それにフブさんが返してくれて…。

 え…、てことは…私がフブさんに「どういたしまして。」って言われたの2回目にならない?!

 もしかして、5秒前ぐらいに時間戻してくれてるのかな、、、だとすると神様…ささやか気遣いだな。



 ——————ムズムズ。



 なんか背中がムズムズする。


「んッ!」


 くしゃみする感覚でムズムズする所に力を入れて、踏ん張る。



 ——————バサッ!



 と大きな翼が生えた。

 その勢いで私はフブさんの腕の中から飛び出した。

 このままじゃ手足が無い為受け身が取れないと思った。



 ——————トスッ。



 皆の視線が私に集まった。

 私は自覚した。

 無くなったはずの手足が今この一瞬で生えた。

 その手足で地面に着地した。

 しかし、この体…なんか…

 私の変わり果てた姿を見たドラゴンが問いかける。



「嬢ちゃん!?ど、どうした…そ、その体?!」



 私は()()()()()()()で地面を“踏み締め”、鱗に包まれた腕で自分の翼を触る。


(うん、思ったより…翼硬いな…)


 私は時間が動き出す前、神様と誓い(契約)をした。


 その誓い(契約)内容は、


 1.見えてしまった“神様の過去”を他言しない事。

 2.“ドーベル•ラン”に対し足止め10分する事。

 3.それを達成できるチカラを京に与える事。

 4.全部、達成できたら京の願い事2つ追加する事。


 4つ目に関しては、結構しぶられたが今度は私が商人みたいな交渉をし、契約までこぎつけた。


 しかし、4つ目の契約を叶える為に、私は一刻も早くドーベル•ランを足止めしなければならない。

 故に、周りの人に神様の事を詳しく話してる時間は無い。

 話す気もない。



「ドラゴン、私行かなきゃ。」



 私の口から発せられた覚悟を聞き、ドラゴンは心配そうに眉をひそめ戸惑う。


「嬢ちゃん急に…一体ッ…連合に何されたんだ…改造人間にされちまってたのかッ!」


 んー、まぁ、ドラゴン目線そーなるよねぇ…。

 神様が時間を止めて私と契約しました〜、、、とか思わないし、言える訳ないよね…。

 私もこんなご都合展開ナニカ誰かに仕組まれているんじゃ無いかとすら思うもん。


「ごめん。時間がないんだ。また戻って来た時、全部話すよ。」


「一体どこで何言われたかしらねぇーが、嬢ちゃんにもう危ない目にあって欲しくねぇんだ…」


 私はその言葉に返事せず、大きな翼を羽ばたかせ、ドーベル•ランのあけた大穴へ向かって飛んだ。




 ——————バサッバサッ!




 それを見たヴェルサイユ師団のセネカやフブが状況を飲み込めない様なキョドった表情であたふたしている。


「えぇ?!ニヴァ見て!!嬢ちゃんなんか飛んで行ったんだけど?!?!」

「うるさいなぁ…そりゃそんな事もあるだろうさ…耳元で叫ばないでよセネカ。」

「そんな事、ある訳ないだろぉ!」


「ねぇ゛ーーー!!!京ちゃんどっか行ったんだけど!大丈夫なの?!?!」


「ギア芽生えたのかな…」

「ぷっ、芽生えるって言い方やめてよセネカ…」










 ——————————————————#####



 私は多分、もっとスピードを出せるはず。

 感覚的な話になるが何だかそう思えた。




 ——————シュンッ!!!




 翼をさらに力強く羽ばたかせる。




 ——————ビュンッッ!!!




 鋭い風が頬を刺激する。

 実際、翼で飛んだ事なんてなかったから不安だったけど流石、神様…。

 生まれた時から私に付いてたみたいに動かせる。

 そして、今気づいたけど…まぁまぁ大きいシッポも付いてる…。

 まぁ可愛いからいっか。



 ——————ヒューーッンッ!!!



 私はドーベル•ランが一瞬で天井にブチ開けた、長い長い大穴に差し掛かる。








 ——————ブォォォォンッ!!!









 こんな高速で飛んでいるのにまだ外へ出られない。

 まるで、長い長いトンネルの中にいる様だ…。


(私今から、これぶち()けた奴と戦うのか…胃が痛いよ神様…)


 速度を更に上げ、やっとの思いで地上へ出る。




 ——————ブワンッ!!!




「…」




 もう2度と見れないとまで覚悟した地上の空を飛ぶ。

 私は気づくとその明るい太陽が照す空に喜びをぶちまけていた。



「やっだぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」



 どこも痛く無い。

 声が出る。

 どこも痛く無い。

 どこも痛く無い!

 どこも痛く無い!!

 散々叫んだ後、澄み切った空気を肺に送り込んだ。



 ——————スゥーーーーッ。



「…さぁ、ドーベル•ラン。どこからでも来い。」



 私は手足がある喜び、どこも痛くない喜び、声が喉を通る喜びを噛み締めた後、神様との約束、フードを被った男ドーベル•ランを探す。


「…どこだ。」



 ——————ゴーンッ。ゴーンッ。ゴーンッ。



 今やっと、空中で完全に静止(ホバリング)して気づいたが、また鐘の音が鳴っている。


「鐘の音…」


 私が鐘の音に気を取られている刹那、後ろから何かに鷲掴みにされた。



 ——————ガシッ!ギチギチギチギチッ!!!



「グッガァ…ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!」


 ドラゴンになる前の私なら、この圧力、潰れて即死だっただろう。


(何だッ?!半透明の腕に掴まれてる…?!)



「いや、この半透明の腕はッ…」


 状況を飲み込めないまま、更に後ろからナニカかに話しかけられた。




『ここは何処じゃ。』




 私はその威圧的な存在感とザラついた声を聞き、本能的に感じとった。



「お前がドーベル•ランかッ…」



『ここは何処じゃ。』




 ——————バキバキバキッ!!!




 半透明の腕が一気に圧縮され、肋骨を折られた。



「ギャ゛ァ゛ァ゛ァァァア!!!」



 肋骨が肺に刺さるのがわかる。

 喉の奥から(じか)に出た無様(ぶざま)な声は自分でも聞くにたえなかった。



『ここは何処じゃ。』



 やばいやばいやばいやばい。

 多分、今、肋骨、全滅、した。


【 “君の想像通りに” 】


 神様のその言葉が脳裏をよぎる。

 ッ…今はとにかく誓い(契約)の時、神様の言っていた言葉を信じるしかないッ。


「私の想像するドラゴンは無敵ッ…、、、!!!!こんな怪我もすぐ治るッ…」



 半ば自分を騙す様な感覚で叫んだ。



『何をブツブツと…やはり、愚鈍(ぐどん)…気色が悪いのォ。』


 時間を稼げ。


「ここは周回移動都市ッ…名前だけでも覚えて帰ってねッ…」


愚鈍(ぐどん)は生きて帰れると思っておるのか。』


 私は私を鷲掴みにしている半透明の腕を自分の鋭い爪で引き裂いた。



 ——————バスンッ!!!



 私のドラゴン(づめ)なかなか使えるじゃんッ…

 にしても…恐らく、この半透明なナニカはドーベル•ランの“ギア”…。

 そして私の爪はそれを引き裂けるらしい。

 勝ち目は…ある、、、!



愚鈍(ぐどん)いや、異形(いぎょう)の者。ここを周回移動都市と言ったかのぉう。』



「そうだ。」



 そろそろ私の肋骨、ドラゴンパワーで治癒されているはず…。



 ——————スーーッ、ハーーーッ。



 大丈夫。

 チクチクしない。

 流石、私の想像したドラゴン。


 しかし、事態は良くない方向に向かい出した。



『何故ワシがここに居るかわからんがァ…ヴェルサイユにインドウを渡す日が来たようじゃのぉ…』



 フードからチラチラ見える顔は、結構少年(ショタ)っぽいのに喋り方“ワシ”か…なんか違和感あるな…。

 いや、そんな事より、“ヴェルサイユ”にインドウを渡すって何だ。


「ちょ、ちょっと待て!ヴェルサイユって都市の名前なんじゃないの…?」


『黙れ愚鈍(ぐどん)。』



 ——————バゴォォォォォォォォォッン!!!



 私は瞬きする間に半透明な巨大な腕に正面から吹き飛ばされた。

 めっちゃ不意打ちで攻撃してくるッ!!!


「グゥ゛ッ!!!」


 私は翼を大きく広げ空気抵抗を大きくし、吹き飛ばされた勢いを相殺する。


「痛ッたいなァ゛…」


 ん?待て。

 今気づいたけど、こんな上空にいるのに地面がはっきり見える。

 ドラゴンになった私の視力はかなり良いと思う。

 遠くのものも鮮明に見えるし視野がかなり広くなった気もする。

 翼は空気の流れを感じ取り、空気以外の“ナニカ”も感じ取れる。

 地上にいる周辺の人間がどこに何人いるかも大体わかる。


 《その超人感センサーの私が最初にドーベル•ランを目視や翼で確認できなかったのは何故だ。》


 今だってそうだ。

 奴は私を吹き飛ばした後、姿を消している。

 まるで、最初からそこに存在していなかったかの様な…。



 ——————クンクンッ…。



 匂いもそうだ。

 元いた場所からドーベル•ランの匂いが完全に途切れている。

 ていうか、私めっちゃ鼻も効く様になってるな…。

 犬かな…?

 無事帰れたら麻薬探知犬として雇われるのも悪くなさそうだ。

 今の私よりいい給料が見込める。

 いやいや、今はそんな事考えてる暇は無い。


「どこだぁーー!!出てこいドーベル•()()!!!」


 やばいッ私もしかして取り逃したのかなッ…

 やばいやばいやばい。

 この都市のヴェルサイユって人にインドウを渡すって言ってたけど、もしこの周回移動都市の都市ヴェルサイユが“ヴェルサイユ”って名前の人だったら、ぜっっったい重要な人じゃんッ!

 流石にあんなヤバい奴に合わせる訳にはいかないッ。




「ドーーーーベル()()!!!」




 ——————バシャッ!!!



 後頭部に衝撃が走ると同時に後ろから攻撃されたことを悟る。

 後頭部からはみ出た血肉が私の目の前を通過した。

 あっ、これは脳みそか…?

 しかし、瞬く間に再生される。


『気色悪いのォ。』


「痛ッ゛だぃなぁッ!」


 後頭部の痛みは一瞬で引いていた。

 それにこんな攻撃を喰らっても、これっぽっちも私は自分が死ぬなんて思っていない。

 さっきまではメイトンや連合、和同の奴らに散々殺されそうになったが、ドラゴンになった今、私が負けるビジョンが見えない。

 目の前にいる規格外のコイツにさえ。

 自分で言うのも何だが、決して(おご)りや傲慢(ごうまん)と言ったたぐいではない。

 それほどまでに体の奥深くからパワーが溢れ出して止まらないのだ。


『割れた頭部に脳が垂れておった。なぜ愚鈍(ぐどん)は平然と生きておる…』


 時間を稼げ10分だ。

 あと何秒ぐらいだ。


「人の事、愚鈍(ぐどん)って言うのどうかと思うよ。」


(いきなり消えたり、現れたりする…一体どんなカラクリなんだッ。でも、喋って時間を稼げるなら…いけるッ!10分持つ!)


『何故ヴェルサイユに呼び出した。』


「…え。そ、それは…」


 え…。

 馬鹿正直に、英雄旗叛逆(えいゆうきはんてん)の対象が神様(ファーストオーダー)になったから貴方がお呼び出しされました。とは言えないよね…。

 神様今どこにいるんだろ。

 私の背後に取り憑いてる…とか冗談で言ってたけど、今どこで私を見てるんだろう。


「そ、それは……話すと長くなるッ!」


 時間を稼げ!

 10分だ。

 何でか知らないけど、10分コイツを足止めすればいい。

 ぶっちゃけドーベル•ランが呼び出された理由、話してもそんなに長くならないんだけど。


『ヴェルサイユの所に来たのは何千年ぶりか。』


「へ、へ〜…私、市民権持ってないしまだ16歳だからヴェルサイユが誰だか全く知らないわ〜…教えてくんない?」


 私は翼を羽ばたかせ、空中で身を留めドーベル•ランと話す。

 正直ドーベル•ランが怖い。


『…普段なら愚鈍(ぐどん)など刹那(せつな)の間に殺すわ。しかし、何故ワシはここに居るのか…わからぬ。』


 何だが可哀想になってきたな…。

 勝手に呼び出されて理由も告げられず…10分後になんか起きる…。

 うん、可哀想だな。おい。


「ドーベル•ラン、貴方がなぜここへ呼ばれたのか話したらヴェルサイユって人に攻撃辞めれる?」


『ワシは邪悪の全てを()り尽くすまで、止まらぬ。』


「んー…よくわかんないなぁ…。じゃぁ、まぁ…呼ばれた理由話すね。」


 時間を稼げ。

 後、何秒ぐらいで10分になる?

 そろそろじゃないか?

 いや、稼げるだけ稼ぐつもりでいた方がいいな。

 10分〜以上、この調子なら多分いける。


「ヴェルサイユの騎士さんの技で貴方が呼び出されたんだってさ〜…」


 時間を稼ぎたいが、それ以上は詳しい事を話さない方が良さそうだ。

 多分、ヴェルサイユ陣営の手の内を簡単に明かす事は自殺行為だ。

 でも…話す事…もう、なくなっちゃったぜ…。


『…。』


 やばい。

 ドーベル•ランの威圧感が上がった。

 まぁ今の感じだと私…中途半端な説明のせいで揶揄ってるみたいになるよね。

 あー、どうしよう。

 いっその事、作り話でもするか…?!


「ヴェルサイユの騎士は…」


 私が話そうとした瞬間、ドーベル•ランは私の方をキッと睨み言った。



『もう、終わりじゃ死ね。』




 今までの経験則から、また半透明の腕に吹き飛ばされると思った。

 それと同時に私は全力で自分の爪を剥き出しにし、前方の(くう)を引き裂いた。



 ——————ザシュッ!!!



 私の予測通り爪は前方から迫り来る半透明の腕を引き裂いた。

 やってやった。

 私はドラゴンの中でも賢いドラゴンなのだ。

 学習能力ぐらい備わっている。

 故に、もう同じ攻撃は喰らわない。

 しかし、それを見たドーベル•ランの口角が微かに上がった。



 ———ニヤッ。



 今、ニヤけたのか…?

 何だ。



『じゃぁのぉ。』



 その言葉を聞いた瞬間、私は思い出した。

 この男は最初から抜け目なかった。

 攻撃する時も死角を狙ったり、致命傷的な攻撃ばかりして来た。

 そんな男が最後の攻撃する時、あからさまに“死ね”と言ったのだ。


「ブラフッ…」


 単調な攻撃を私に対処させ、油断を誘ったのか…?


 いや、おそらく違う。

 大技の準備をしていたのかもしれない。

 私にはわかる。

 きっと、そうだ。

 この短時間で数多(あまた)の悪意に触れたからわかる。

 あれは相手の運命の手綱を握った者の表情だ。



 ——————バキャッ!!!



 大技ではなかった。

 半透明の腕に頭をパンチされた。

 私は裏の裏を突かれた様な気持ちで吹き飛ばされる。

 単純な事だった。

 何気ない心理戦で負けたのだ。

 私は一瞬の判断戦で負けたのだ。


「ッ!!!!」


 私は2連撃を喰らったのだ。

 最初の攻撃から1秒ほどの時間差で半透明の腕の打撃を頭に喰らった。

 何も見えない。

 目が潰されたのか。

 いや、あれ程モロに攻撃を喰らったのだ。

 頭が潰れていても不思議ではない。

 しかし、今の私は不死身みたいなものだ。

 頭を潰されて状況がわからないがきっと大丈…





「ッ…」





 背筋に悪寒(おかん)が走った。




 私は不死身の対処法を知っている。




 私はドラゴンになる前、この目で見た。








 人間ミキサー。





 嫌だ。


 嫌だ嫌だ嫌だ。




「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」



人間ミキサー!!!!



ドーベル•ランは京を超警戒しています。

できるだけ自分の手数を見せない勝ち方を狙っていました。

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