〔番外編第10話〕エグゼクト
()は京の心の中の声です。
騎士それは、民を護り敵を穿つ誉れの化身。
しかし、この世界における騎士は4人しかいないと言われている。
誉れの精神を持つ者が4人しか居ないのではない。
偶々その姿が“騎士”と似ていたからそう呼ばれているだけなのだ。
そしてその四騎士の情報は厳重に秘匿され“ヴェルサイユ級”ただ1人の支配者を除き全貌を知り得る者は居ない。
その四騎士の内の1人、“ベリエッタ”が今そのチカラを振う。
——————『英雄旗叛逆。』
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
次の瞬間、剣を刺した地面が鈍く光り大量の骸骨が這い出してきた。
それらが積み重なり大きな球体を作り出す。
しばらくしてそれが、ゆっくりドロドロと溶けはじめた。
まるでチョコを高温で溶かした様な…人間の体を高熱でゆっくりとかしていく様な。
皮膚、肉、骨が順番に見えた後その骸骨達は完全なドロドロと化す。
茶色や黒や赤が混ざった様なドロドロが溶け落ちた先に1人の黒いフードを被った男が姿を現した。
その男は姿を現した途端、半透明の大きな腕2本を出現させ地面を叩きつけた。
その瞬間、まるで地震の様な揺れが京達を襲う。
——————ドガァァァァァァァァァァァァッン!!!
男は半透明な巨大な腕を地面に叩きつけ、その反動で上へ飛んだ様に見えた。
一瞬の出来事だった。
瞬きをすれば、私はこの現象を見逃していただろう。
——————ガラガラガラッ…。
(なんだ…?)
突然立っていた場所が真っ暗になった。
私は察した。
ヴェルサイユの外壁メンテナンスをしている時に同じ現象に出会った事がある。
その時は周囲が暗くなったと同時に“落石”が降ってきた。
つまり、その経験を今この状況に置き換えると…
「天井が崩れたぁぁぁぁあ!!!」
ドラゴンが叫ぶと敵味方関係なくその場にいた全員が一斉に駆け出した。
「おじさん!嬢ちゃんと一緒に逃げて!ベリエッタは僕とニヴァが!」
「あぁッわかった!」
——————ガラガラガラッ!!!
——————ダッダッダッダッダッッ!!
「うぉぉぉぉぉおおおおッ!!!ここで死んでたまるかぁぁぁぁぁぁあ!!!」
天井から落ちてくる無数の瓦礫から逃れる為、全力ダッシュするドラゴン。
「獣人外究極変化ぉぉぉお!!!」
(ッえ?!)
ドラゴンの頭から透明な歯車の様な物が出てきてそれらが回転しだした途端、体からみるみる毛が生え3メートル程の大きさの熊に“獣人化”した。
「グォォォォォォォオッ!!!!」
——————ドッドッドッドッドッドッ!!!
ドラゴンはさっきの数倍の速さで地面を駆ける。
(ドラゴンってギア使えたのか…?!)
ドラゴンのモフモフな腕に固定されたまま私は考える。
なぜ、ヴェルサイユの外壁でスフィア2機に襲われていた時これを使わなかったんだ…?
1日1回とかしか使えないのかな…。
「グォォォォォォォオ!!!!」
——————ドタッ、ゴロゴロゴロゴロ!!!
ドラゴンは躓き地面に転がる。
私はドラゴンの体に包み込まれていた為、傷一つ付かなかったが…。
「ヤバいッ…」
瓦礫に潰される事を予感したドラゴンは京を守る様に背中を丸め防御体制をとる。
「……グッ。」
——————ガラガラガラッゴーンッ!!!
ドラゴンの隣に大岩が落ちてきたが、それ以降の落石は無い。
「た、助かった…のか…」
落石が無い場所まで無事避難できたのだ。
荒れる息を置き去りにし、ドラゴンは急いで京の無事を確認する。
「大丈夫かッ…嬢ちゃん…」
私はスーッスーッとしか声が出ない事を自覚しながらも一生懸命笑顔を作り、声を出す。
「スーッ…スーっ…」
「ごめんな…まだ成人もしてねぇのに…こんな…こんなッ、」
私はドラゴンにぎゅっと抱きしめられた。
そして、そのままドラゴンはオンオン泣きひたすら私に謝ってくる。
「ごめんな…ッ。ごめんな…ッ。」
ボロボロの街に悲壮感が漂う砂埃。
私は四肢が痛むがアドレナリンのお陰だろうか、我慢できている。
しかし、痛い物は痛い。
我慢していた心の声が溢れ出して涙がボロボロ出た。
「スーッ。スーッ。」
「ごめんなッ…ごめんな…ッ。」
「スーッ。スーッ。」
しかし、私はドラゴンの体の隙間から後ろの景色が見えてしまった。
薄暗かったこの場所が、外の世界の様に明るくなっている。
私はその衝撃で目を丸くしてしまった。
その表情を見てドラゴンも崩れた天井を見る。
「なんて…事だ…」
まるで曇りの空から太陽の光という名の梯子がかけられたかの様な薄明光線がこの街を指す。
異様だ。
上に何kmあるかわからないヴェルサイユの地層を破壊し、地上まで繋げたあのフードを深く被った男は一体何者なんだ。
そして、恐らくそいつはベリエッタが英雄旗叛逆で呼び出したナニカだ。
泣いていた事が一瞬んでどうでも良くなる光景にドラゴンも、苦笑いする。
「ハハッ。死にたくねぇな…」
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——————「大丈夫〜?生きてるおじさん達?」
瓦礫の奥から大きな武器を持ったセネカが1人の女を背負って現れた。
「せ、セネカさんか…無事で良かった。えーと、その担いでる方は…?」
「あー、ベリエッタだよ。無事でなにより!ベリエッタも回収できたしさぁ帰りますか〜…とは、ならないよねぇ…」
セネカはそういうと担いでいたベリエッタを地面に寝かし空を見上げる。
セネカは天井に開いた、空を直接見上げられるほどの大穴にため息をつく。
「はぁ…ベリエッタ誰召喚したんだよぉ…」
——————「ちょ〜とぉ、絶望しないでよセネカ。」
セネカの後ろから1人の女が声を掛けた。
「ニヴァ…僕がベリエッタを救助してる間、何してたの!僕に仕事押し付けないでよ!」
「ごめ〜ん!今度ご飯奢るから許してよ。」
「ん〜2食ッ。2食分で許す。」
「えぇ〜…じゃぁ弁当の2食になるけど…」
「えぇー?!じゃぁ焼肉で許す。」
「は〜い!」
(命軽いな…)
ニヴァと呼ばれた女は無言で私の方に近寄り、自分の口に指を入れた。
(は?)
そしてそのヨダレがたっぷり付いた指を私の口に入れてきた。
(はぁ?!きっっったなぁぁあ!!!)
クリアな思考とは裏腹に体は衰弱している為、当然抵抗できない。
「ちょッ、汚ッ…ッ?!」
(私の口から声が出た?!)
私は自分の口かスーッスーッ以外の音が発せられた事に驚き声を詰まらせた。
手足はそのまま無いが声だけが復活した。
「私喋れてる!私喋れてる!!!」
「嬢ちゃん?!」
ドラゴンもそれに驚き唖然とする。
「うわぁぁぁん!ドラゴンありがとうぉ…ありがとうぉぉおぉぉぉぉぉん!!!」
私は喋れる様になった途端、ドラゴンに対する最大の感謝を泣きじゃくりながら口にしていた。
ただ溢れ出してきたのだ。
「嬢ちゃん!まだ、体が弱ってんだ。あまり大声を出さない方がいい。」
そう言われて、私はすぐに口を閉ざした。
また喋れなくなるのは嫌だから言うことは聞くようにしようと思う。
「セ〜ネカッさん!これからどうする〜?」
ニヴァはセネカにのんびり話しかける。
セネカは喋れる様になり喜ぶ京を横目に、遠い目をして言う。
「ベリエッタが呼び出した奴も…メイトンも…222も…連合も…どうすればいいんだろう。」
すると地面で寝かされていたベリエッタがゆっくり体を起こした。
「フブさんッ!!!」
私はその姿を見てつい名前を呼んでしまった。
フブは京の方を見てニマッと笑った後、真剣な顔で皆んなに状況を説明し出した。
「私の英雄旗叛逆の対象がメイトンになったかもしれない…ごめんなさい…」
「良かった良かった無事復活できたね!ベリ…フブ!」
「疲れてたらワタシが回復させてあげるよ〜!」
「大丈夫。私死んだらリセットされるから…疲労とかは無いよ。」
フブの英雄旗叛逆という言葉を不思議に思ったドラゴンが質問する。
「英雄旗叛逆って技はどんな技なんだ…?」
フブはその言葉に丁寧に答える。
「英雄旗叛逆は1人の対象を選びその対象と同等の力を持つ者を呼び出す四騎士の技なんだ。私はまだ未熟だからその対象が選べなくって…」
「…ん?ベリエッタさんよ。なら、メイトンを対象に呼び出したんなら俺らにとって超メリットなんじゃないか?メイトンぐらい強い奴を呼び出せたんだろ?」
そこにセネカが割り込む。
「自分を上回る大きすぎるチカラは制御できないんだよ。英雄旗叛逆は…」
「そ、そうなのか…つまり、ベリエッタさんはヤバい何かを呼んでしまっただけになったという事か…?」
「えぇ、全くもってその通りです御座います。誠にごめんなさい。」
フブが申し訳なさそうに謝る。
それを見たドラゴンは胸に抱いた京をフブの懐に預けた。
フブは驚きつつも京を抱えた。
そして、京はベリエッタに対し溢れ出る気持ちを再びぶつけた。
「助けてくれてありがとう…」
フブは京の顔を見て笑顔で返す。
「どういたしまして!」
——————カチッ。
「え…?」
一瞬で周りが静寂に包まれた。
「この感覚、時間が止まってる…?」
私はドラゴンに呼びかける。
「ねぇ、ねぇー!」
ドラゴンはピタリと止まって動かない。
そこで私は直感した。
あの時のアレだ。
——————神様だ。
上記にあぁは書きましたが、四騎士の内2人はみんな大体知ってます。
その2人はエウレカとベリエッタです。
ヴェルサイユで長く暮らしていると噂や新聞などでエウレカが騎士だと言うことに気づきます。
一方ベリエッタの方は隠す気がないので騎士だと言う事が広く知られています。
【超ド級ね。】




