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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [番外編]京伝
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〔番外編第9話〕英雄旗叛逆

(^ω^)頑張れドラゴンッ!

 


 私は床に仰向けに倒れながら隣に転がっている空の瓶を眺める。

 私は神様に遊ばれたのだろうか。

 この林檎ジュースになんの意味があったのだろうか。

 今は無い四肢が痛む。

 鈍痛がッ…クッソォ…。











 ——————————————————#####




 もうこの部屋に何時間放置されているのかわからない。


 (喉が渇いた…お腹空いた…)


 そんな状況の中、外から大きな音が鳴った。



 ——————ガァァァァァァァッン!!!



 その音と同時に私が監禁されている部屋の壁が吹き飛んだ。



 ——————ドガァァァァンッ!!!



「ッ?!」


 壁の破片が所々体に刺さり痛い。

 でも、そんな事より一体なんだ?

 この和同と連合の連中も誰かに攻撃されているのか?!

 はたまた外にいるゾンビやバケモノにやられている最中なのか…?


 そんな事を考える刹那、目の前に一人の男が現れた。




 ——————「嬢ちゃんッ…無事だったかッ。」




 私はその言葉を聞き涙腺が緩んだ。

 こんなクソみたいな死を待つだけの状況に光が差したのだ。



「嬢ちゃんッ…クッッ…こんな姿に…」



 ドラゴンは四肢の無くなった私の体を見て絶句していた。

 私はドラゴンに向かって話し掛けようとしたが声が出ない。

 スー、スーと肺から空気が垂れ流される音しか出なかった。


(私、こんなに弱ってたのか…?思考はこんなにクリアなのに…?)


「嬢ちゃんッ…大丈夫だ。今助けてやるからな…」


 ドラゴンはそっと京を抱え壊れた壁から外へ飛び出した。



 ——————スタッ!



(ドラゴン凄ッ、15メートル以上ある高さからほぼ衝撃なしで地面に着地した!)


 ボロボロな体とは裏腹に心は踊っていた。


 (助かった、助かったッ!!!)


 しかし、同時にこうも思う。

 “助けが来た”という事実が都合が良過ぎて、現実かどうか疑ってしまう。

 今まで私の人生においてこんな良い事はなかった。

 今回は偶々(たまたま)運が良かっただけなのか…?

 本当にそうなのか?

 納得できない。

 信じられない。

 それにあの神様(ファーストオーダー)も…。


「嬢ちゃん!!!安全な所まで少し揺れるが我慢してくれ!!!」


 (え?我慢ぐらいするよ。だって、私助かるかもしれないんでしょ?)


「くっそ…ごめんな嬢ちゃんそんなに痛そうな顔ッ…」


 (私そんな痛そうな顔してるのかな…。あぁ…でも、言われたら、ちょっと痛みが…)



 ——————ダッ、ダッ、ダッ!



 ドラゴンは走る。

 その道中、私はドラゴンの腕の中から外を見る。

 揺れているし遠くでよく見えないが、神輿(みこし)を囲う様に立っていたデカい人外達を2人のヴェルサイユ師団(しだん)の人達が蹴散らしている。

 そして恐らくその隙にドラゴンは私を連れて逃げてくれているのだろう。

 いや、でもメイトンは…?

 メイトンがいたら全員殺されるまずいよ…。

 あ…そうか。

 多分だけど、今神輿(みこし)の周辺にメイトンがいないのか…だから今助けに来たのか。



 ——————『待て。逃げんな。』



 私を抱えたドラゴンの前に立ち塞がる1人の和服の男。


「どけッ、和同のお前はヴェルサイユに攻撃できないはずだ!」


 (なんだ、一体なんの話だ…?)


 まぁ私はまだ16年しか生きてないからヴェルサイユの事について知らないことが多い…。

 多分ヴェルサイユの政治的な話だろう…。


『アホか。()()()()できないだけで間接的な攻撃はできるわ。』


(なんか…この男のエセ関西弁鼻につくな…)


 そんな事を思っているとドラゴンも同じ様な事を思っていたらしく和服の男に刺さる言葉を放った。


「俺の出身地は“大阪”でな。お前のエセ関西弁ほんまムカつくわ。訂正したる。“アホか。直接攻撃出来ひんだけで間接的な攻撃はできるわ”じゃよ!!!」


『チッ…』


(あっ…ドラゴンに言いくるめられて、和服の男ちょっと悔しそう…)


 和服の男が片手を上に上げた。


「攻撃か…ッ?!」


 次の瞬間凄い勢いで暴風が吹き荒れた。



 ——————ビュォーーーーッ!!



「グッなんだ?!」


 ドラゴンは私を風から庇う様に包み込む。


(暖かい…)


 そして暴風が吹き止むと目の前にあの時見た、デカイ人外女が立っていた。

 そして人外女に和服男が静かに命令する。


『あの四肢のない女を奪い返せ。』


 ドラゴンはその言葉を聞き、攻撃に備えて重心を下に置く。



 ——————ガッ!!!



 人外が目にも止まらぬ速さでドラゴンに拳を振るう。

 しかし、ドラゴンもその速度に反応し攻撃を両手で受け止める。



 ——————ドサッ。



 私は急に抱えられていた手を解かれ、ドラゴンの足元に落とされた。

 そして、重力に流され少し頭を打った。


(痛っ…)





 ——————[…]


「グッヌヌッ…パワー系かよッ…」



 そんな事情も関係ないと言わんばかりに、人外女は常に無言だ。

 そして、無言の状態でドラゴンに拳のラッシュを繰り出す。



 ——————ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!!!



「ウォォォッ!!!」


 ドラゴンは拳のラッシュを半分程受け流し、半分程“くらった”。

 血が噴き出て返り血が地面にぴちょぴちょと落ちてくる。


(頑張れッドラゴン!!!)


 私は心の中でそう叫ぶ事しかできなかった。



 ——————ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!!!



「ウォォォッ!!!」


 ドラゴンが一進一退の攻防を続けている最中、私は気づいた。

 和服の男が居なくなっている。

 私は本能的に後ろを向く。


(マズいッ…)


 ゆっくり、ゆっくり後ろから歩いてくる和服の男。

 ドラゴンは目の前の人外女の攻撃を捌く事に必死で、それに気づけない。


(やばいッやばいッやばいッ…!)


 私は必死に声を絞り出そうとしたが、やはり声が出せない。

 スーッ、スーッ、と言った空気の抜ける様な音は外の世界では響かない。

 そうして和服男がゆっくり私の目の前まで来た。


『…』


(また誘拐されるッ…)


 無言で私の方に手を伸ばしてきた瞬間、和服男に向かって1人の男が上から飛んできた。



 ——————ドガァァァァンッ!!!



 和服男は突然現れた馬鹿でかい武器を振り回す男に遠くまで吹き飛ばされた。

 突然現れた男はドラゴンに向かってラフに言う。


「おじさぁぁぁん!!戦いに必死なのはわかるけど、後ちょっとでこの嬢ちゃんまた攫われる所だったよ!!!」


(あっ、私…この人知ってる。確か…)


「嬢ちゃん大丈夫〜?僕は第Ⅲ師団カスミ部隊 副隊 セネカ•ミル•レイディだよ〜!」



 ——————バゴォォォッン!!!



 セネカ•ミル•レイディと名乗る男は挨拶しながら軽くドラゴンと戦っていた人外女をも吹き飛ばした。


「ハァハァハァッ…助かったセネカさんよぉ…」


「気をつけなよ〜ほら、大事に嬢ちゃん持ってないと!」


(あんまり持つとか言わないで欲しいなぁ…)


 私は再びドラゴンに抱えられた。


(これで逃げれるッ)


 と思った瞬間、私とフブさん(ベリエッタ)を地面に叩きつけたあの男が背後に現れた。


『あ〜あ。あの人外趣味の連合クソ男は吹き飛ばされちまったみてぇだな。』


 セネカはその男に対し余裕の笑みで警告する。


「ねぇ君、ベックでしょ?強くて有名らしいけど〜早くここから逃げた方がいいよ。」


『あ゛ぁ…?俺がぁ?テメェ頭、沸いてんじゃねぇか?』


 そのベックと呼ばれた男の話をセネカは軽く聞き流し、ため息混じりに言った。


「君、ベリエッタの事忘れてない?」


『…あ。』


 そこでベックは3人が奇襲してきた真の理由に気づく。

 さっきまでは四肢のない女を救出しにきたと思っていたが違う。

 ベリエッタの復活を阻止する水槽を破壊しに来たのだと今更になって気づくがもう遅い。


「ベリエッタちゃぁぁぁぁぁん!!!やっちゃってくださぁぁぁぁぁぁぁあい!!!」


 セネカが叫ぶと同時に神輿の水槽から復活したであろうベリエッタ(フブ)が地面に剣を突き立て、それをゆっくり捻りながら言った。





 ——————「英雄旗叛逆(えいゆうきはんてん)。」




和道の連中は連合に脅されているだけなので正直やる気はないです。なので連合のベックという人物1人だけでは、ヴェルサイユ陣営の奇襲に対応できませんでした。また、メイトンは外出中なので奇襲を知る術もありません。


【世界はね。99%の勘違いと1%の悪意でできているんだよ。】

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