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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [番外編]京伝
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〔番外編第7話〕fast order

来年もよろしくお願いしますしますします…(ディレイ)。


 

 再び、目が覚めた部屋へと監禁された。

 監禁されたと言っても鍵も掛かっていないドアのノブをひねれば解放される。

 現状、捕虜として放置されているだけなのだが…。

 私は四肢を失った。

 どう頑張ってもあのドアノブには届かない。

 私は尊厳を失った。



 ——————ギィ。



 ドアが少し開かれた、隙間から先ほど私を連れ出した男が話しかけてきた。


『開けといてやるよ。ギャハハッ!!!』


 この体では脱走の為に外に出てもゾンビやバケモノに食われるだけだ。

 この男はそれを分かった上でドアを開けっぱなしにしたのだろう。

 私は気力を失った。

 物理的に何も出来ない私は何もしない。


「ア〜…ァ…ぁ…」


 死を悟り、絶望を眺め、自分じゃ無い誰かになった様な気がした。

 私を取り巻く全ての状況はきっと誰かが見ている悪夢に過ぎない。

 私はその人が起きるまでただ目を瞑って待とう。












 ———————————————#####



 夢を見た。


 前と同じ夢だ。

 海が見える病室の窓辺、私はベッドの上から外を眺めている。

 すると後ろから中学生ぐらいの同じ病室で入院している男の子に話しかけられる。


「不安じゃないの?」


 急に話しかけられた。

 私はその男の子と話したこともないのに、でもそうなると困ったな…。

 私はただその質問の答えを考える時間を稼ぐ為、適当な事を言った。


「まずは“おはようございます”でしょ?おはようございます。」


 すると男の子は少しムッとした表情をした後、素直に挨拶してきた。


「お、おはようございます…」


「はい。おはようございます。」


「…。」


「…。」


 海辺から聞こえるカモメの鳴き声が静かな病室に響き渡る。

 束の間の静寂が気まずい。


「不安じゃないよ。」


 私は返す言葉に困り何の捻りもない回答を出した。

 すると男の子は私から目を逸らし気まずそうにしながら再び聞いてきた。


「お前、もう死ぬんだろ?」


 私はただそこにある事実に頷いた。


「うん。私そろそろらしいね。」


「不安じゃないのかよっ!!!」


「不安じゃないよ。」


 私は自分の死期が近い事を悟っていた。

 しかし、一縷の恐怖もなかった。

 ただその事実をこの男の子にどう伝えようか…。

 胸の内を開き、心を見せて…ほら?私怖くないでしょ?

 なんて事できたら良いんだけど…。

 そんな事を考えている間に男の子はポタポタ涙を垂らし始めた。


「えぇッ?!ちょッ!ちょッと!何泣いてんのさ〜?!」


「俺もいずれそうなるのかなッ…」


 内心、私のことを心配してくれているのかと思ったけど、そうではなかったらしい。


「あははッ…だ、大丈夫だよっ!うん、なんか、うん!」


「慰めの言葉下手なんだよッ馬鹿野郎!!!」


 なんか私…暴言、吐かれちゃった?!

 え?!

 死ぬの私だよね…?

 聞き間違いではなさそうだし…


「ちゃんと慰めろよ馬鹿野郎!!!」


 あっ…もっかい言った…。


「あー…まぁ、私と同じ病室って事は同じ病気なの…かな?」


「…グスッ。あぁ。」


「そっかぁ〜。じゃぁ大丈…あっ!わ、わたしぃ〜死ぬの怖くなってきたなぁ〜!」


 私のあからさまなその態度に、男の子はきっと気付かない。

 だってあんなに泣いているもの、前が見えないに決まってるし自分の泣き声で、耳も使い物になってないだろう。


「お゛…お前、怖くなってんじゃねぇかよッ…」


「う〜ん、わたしぃもうすぐ死んじゃうなぁ〜…」


「なんだよ゛…グスンッ、俺になんかして欲しいのかよ…」


「ん〜?別にぃ〜…」


 私は焦らす。

 男の子は泣き終え少し考えた後、私の目を見ていった。


「お前、死ぬ前に何かやりたい事があるんだろ?」


「お?な〜んで?な〜んでそう思ったの〜?」


「お前ずっと窓の外の海見てた…から。」


 私は少し男の子をおちょくる様に言った。


「え〜きっもぉ〜こっち見てたのぉ〜?」


「いや、隣だし。」


「まぁ、隣だもんね。うん、ごめん。」


 男の子は自分の点滴を急に引き抜いた。



 ——————カチャンッ。



「え…何して…」



 ——————ビーッビーッビーッビーッ!!!



 点滴が外れただけで医者達が駆け込んできた。


「どうした?!何かあったかタフナ?!」


 そうだ。

 この男の子の名前は“タフナ”今駆けつけた医者の子供だ。


「ごめんパパ…躓いちゃってそれで…」



 ——————カチャッン。



 点滴を元に戻し、再び腕に針を入れる。


「いいんだ。お前に怪我が無くて何よりだ。病気が治るまでじっとしてるんだぞ?」


 医者は私のことをチラッと見た後、病室を出て行った。

 しかし、私はわからない。

 なぜタフナはこんな無駄な事をしたのか、事実として結果無駄に父親を呼び出しただけになったというのに…。


「なぁ、これ見てみろよ。じゃぁ〜ん。」



 ——————ジャリンッ。



 そう言ってタフナは私に医者からこっそり抜き取ったキーケースの様なものを見せてきた。


「え…もしかして…()ったの…?」


「や、やめろ… ()ってない…借りただけだ…」


「えぇっ(わくわく)」


 そしてタフナは窓の外を指差し言った。


「今夜病室を抜け出す。」









 ——————カチッ。







 時計の針の様な音が響き静寂が訪れた。


「え…」


 すると目の前に居たはずのタフナが顔にモザイクの掛かったショートカットの女に変わっていた。

 表情が若干わかる程度にしか顔を認識できない。


「えっ誰…ですか…タフナはどこへ…」


【…】


 ショートカットの女は私の質問に何も答えない。

 何も答えずニコニココチラを見ている。

 この笑顔まるでフブさんの様な…ん?

 フブさんって誰だっけ…。

 あっ、そうか。

 そういえば、私手足無くして…ヴェルサイユの地下で…。


「じゃ、これは一体…夢…?」


【…】


「ねぇ、私夢を見ているの?貴方誰なの?」


【…】


「私人生において海見た事ないんだけど!」


【…】


 目の前の女はニコニコして何も話さない。


「え…だから…フブさんなの…貴方…。でも顔全然違うから…違うか…ごめんなさい。」


【…】


「えーと…」


 私は何も喋らない目の前の女に疲弊していた。

 改めてその姿を観察してみよう、むしろ今する事がそれぐらいしかないから…。

 女の身長は…まぁ普通だ。

 髪の毛はサラサラしていてとても指通りが良さそうだ…色は…認識できないな…ぼやけてる…。

 しかし、何故だろう。

 この女を見ているとどこか落ち着かない。



 ——————トッ、トッ、トッ。



 その女は私の方に少しずつにじみより距離を詰めてきた。


「ななななッ…」


【…】


 ニコニコした笑顔で距離を詰めてくる感じ、なんかすごいカツアゲされている気分になる。

 どうしようもなくなった私は咄嗟に挨拶した。


「お、おはようございます…」


 私は何の()ない()まずさを取り払う為に言っただけだった。


【はいっ、おはようございますっ♫】


 思わぬ収穫だ。

 返事が返ってきた。


「あ…はい…」


 私はどうして良いかわからず、とりあえずの相槌をうった。

 目の前の女は相変わらず笑顔を崩さない。


【どうしてここにいるの?】


「え…どうしてと言われても、まず…ここはどこなのかもわからないし…」


【貴方は誰?】


「え…こっちのセリフなんだけど…」


【ん〜…】


 女は私の心の中を覗き込む様に目を凝らす。


「えっ…なに…こわいっ…」


【あ〜君もしかしてだけど…相当ピンチなんじゃないかな?こんな所でこんな事してて大丈夫なの?】


 うっすら私も自覚していたが、多分今は夢の中だ。

 そして現実世界で相当ピンチになっている事は自覚している。

 でも、なんか夢の中では冷静だな…。


「ん〜…私多分このまま死ぬからなぁ…」


【さっきの質問に戻るけど〜君はなんでここに居るの?】


「え、いや…多分だけど、私多分だけどね。これ私の夢なんだから貴方が私の夢に入ってきているんじゃないかな…。」


【君は一つ勘違いしてるよ。ここは君の夢の世界なんかじゃない。私が勝手に作った思い出を具現化した世界だ。】


「え〜と…写真…違うな…。思い出のジオラマLv.100みたいな感じ…?」


【ん〜良い表現だねそれ!まぁそんな感じだねぇ〜。】


「え、じゃぁなんで私ここに居るの…?」


【ん〜それ私が1番知りたいよ?】


「えぇ〜…」


【う〜ん…まぁ君が夢でこの世界を見ているのであれば、目を覚ませば元に戻れると思うけど〜…】


「う〜ん…まぁでも最後に海を遠くからでも見れて良かったよ。」



 ——————ゴォロロォォッン!!!



 外の天気が急変し、雷が鳴り響いた。


【ん〜流石に調整が狂ったぁ…】


「多分、この流れだと…そろそろ私目が覚めるよね。」


【そうだね〜。】


「貴方が誰か知らないけど、ありがとね。最後にちょっとだけ映画みたいな貴方の思い出を見させてくれて。」


【ふ〜ん料金は1500円ね。良心的でしょ?】


「円…?」


【あ〜ドル?】


「ドル?ドルって何?」


【あ〜…うん。じゃぁ、無料でいいよ。】


「あ、ちょっと…めんどくさくならないでよ…」


【じゃ最後に私の名前は〜〜〜…秘密。】


 結構な間を取った後に、秘密と来たか。


「どーせ私はこの後、多分すぐ死ぬんだよ?教えてくれたって良いじゃん…」


【んー伝え方が…んー…】


「神様なのに、私がここに来た原因わからないじゃん。」


【痛いとこ突くな〜アハハッ…。じゃぁ、ニ…あ゛〜迷うなぁ…】


「もう良いです。」


【えぇ〜そんな冷たい事言わないでよぉ〜…】


「冷たい事してる人はどっちですか。」


【ん〜じゃぁ“111(ファーストオーダー)”って呼んで!】


「あ〜…貴方オーダーなの?」



 ——————ザーーーーーーーッ!!!



 雨がいっそ激しくなる。


【そうだよぉ〜。あっ、そろそろだね。】


「ちょっとまだ聞きたい事が…」


【じゃぁね、“京”ちゃん♫】









 ———————————————#####




 私は目を覚ました。


「痛ッ…」


 切断された四肢が痛む。


「痛い…」


 私は四畳程(よんじょうほど)の見覚えのある部屋に居た。

 私は夢の中で別の世界に行ったにも関わらず、和同の神輿(みこし)の中に監禁されているらしい。

 まぁそらそうだよな。



 ——————コンッ。



「…?」


 私の背中の下に少し弾力のある透明な小瓶が落ちていた。

 私は仰向けの状態で首を横へ倒し、その小瓶を見る。

 そこには《京ちゃんへ》と書かれていた。


「…やっぱり夢じゃなかったんだ。111(ファーストオーダー)か…」


 死ぬ前に凄い事象と出会えたものだ。

 さて、私はこの先どうやって死ぬんだろうか。

 あるいはこの小瓶を使えば私は生きながらえる事が出来るのか…。


 しかし、私は知っている。


 本当に辛い時、手を差し伸べてくれる人なんかいない。

 助けを呼んでもヒーローは来ない。

 だから…故に…私はこの小瓶を警戒せざるを得ない。


「でも…どーせ死ぬ。」


 この小瓶を飲んで死ぬのと、和同や連合の連中に殺されて死ぬのと同じだ。どーせ死ぬのなら自分で選びたい。」



 ——————キュッキュッ。キュポッ。



 私は歯で小瓶を固定し、舌を使って蓋を開けた。



 ——————グビッ、グビッ、グビッ…。



「ゴホォッゴホォッ…」



 ——————カランッ…。



「ゴホォッゴホォッ…はぁ…」



 私は小瓶の中身を飲み干した後、静かにつぶやいた。








「林檎ジュースじゃねぇか馬鹿野郎…」




海辺の病院の話は、タフナと???の過去の物語です。

京の立ち位置が???の立ち位置に入れ替わっていたのが今回の話です。

あの話にあまり京は関係ありませんが、???にとって重要な話となります。

しかし、何故か京がそこに割り込んできたのか…次回に続く!


※色々わかりにくくくくくくくくくて、すみません。


タフナと???の話はまた、後に全部出てきます。

よろしくお願いします。




【この世に悪い事なんて何一つ無いんだよ。】


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