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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
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〔第48話〕始まり

次回から[3章]に入ります。

 

 大きな機械の腕に掴まれながら薄暗い空間を急降下して行く。


「ちくしょぉぉおおッんだよこれぇぇえ!!!」

「わぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」

「ジェットコースターみたぁぁあい!!!」

「…」


「え?!兎?大丈夫?生きてる?!」

「…」


「兎ぃぃぃぃいいいいい!!!」

「いい生きてる…しし舌噛むよ…」


(スクラップの山の中に引きずり込まれ今に至るわけだが、私達は今から市民権を貰いに行くんだよね…その前に死にそうだけど…)


 巨大な穴に引きずり込まれながら兎は1人黙々と頭を回す。

 フブとツグネと…えーと、あっ、タフナはずっと叫んでいるな…。



 ——————ブーーーーンッ!!!



 低音が出て、降下にブレーキが掛けられる。

 ご丁寧な事に巨大な機械の腕は私達の背骨が折れない様、段階を分けてブレーキを掛けている様だ。



 ——————カンッ!カンッ…カン…。



 電車の踏切の様な音が鳴った後、降下は完全に停止した。

 下に目を向けると薄暗くて青白い。


「ハァッ…ハァッ…ハァ…生きてるかタフナと女2人…」


「ハァッ…ハァ…死ぬかと思いました…」


「いやぁ〜意外と楽しかったね。」


「ととと到着…かな…」


 次の瞬間、大きな機械の腕は握っていた手を開き4人を下へ落とした。



 ——————ガシュンッ。



「は?」※ツグネ。

「え?」※タフナ。

「おっと?」※フブ。

「ッ?!」※兎。



 ——————ヒューーッ!!!



 再び始まった急降下で内臓が持ち上がりフワッとした感覚になる。

 そして、声を出す間も無く少しの衝撃が体を伝った。



 ——————バシャッーンッ!!!



(ッ?!水…?!水に落とされたのか?)


 怖くて目があけられない。

 瞼に強く力を込める。



 ——————ピタンッ。



 何か暖かいものが頬に触れた。

 しかし、怖くない…。


(あったかい…)


 兎はゆっくり目を開ける、目の前にはフブがいた。

 フブはゆっくり水中で兎と目を合わせ、ジェスチャーで会話し始める。


 〈大丈夫…?〉


 〈だだだ大丈夫…そっちは…?〉


 〈私も大丈夫〉


 2人は無事を確認し合った後、ゆっくり周りを見渡す。

 数十メートル下に青白い発光体と緑の発光体がある。

 その発光体達に照らされている…街?

 家やビルがあるが現代っぽいデザインではない気がする、一体どこの街の景色なのだろう。

 壁から鎖の様な、チューブの様な、何かのコード?の様な不思議な線がいくつも重なり1箇所に向かって繋がれている。


(周回移動都市のCPU(脳みそ)…みたいな感じなのかな…)


 じゃあここはCPUを冷やす為の水冷システム的な奴か?

 仮にそうだったとしてなぜ私たちをそんなところに落とす?

 エヴァンテは市民権を得る為にここに来たと言っていたが、もしかして私は騙されたのか?

 何かの生贄(いけにえ)にされたのでは無いだろうか、もっと警戒しておけば…。

 フブと共に水上を目指して泳ぐ。

 私はあまり早く泳げないのでフブに手を引っ張って貰った。



 ——————ザッパンッ!



「プハァッ!」


「ぐぇぇぇッ…おぇッ…」


「兎!だ、大丈夫?!」


「みじゅがァッ…鼻にあいったぁ…」



 ——————ザッパンッ!



 隣からツグネとタフナが勢い良く水面に飛び出してきた。


「んだぁよこれぇ!いきなり水ん中落としやがって!」


「いきなり水中に落とされるのってこんなに怖いんですね…」


 元気そうな2人を見て安心する。


「おっ無事だったかツグタフ!」

「ゴホォッぐぇ…ぶぶぶ無事だったか…」


「なんだよ…その不名誉なあだ名は…」

「サキミネさん貴方が無事ではなさそうですね…」


 全く地面に足のつかないこの状況、水温は…ぬるい。

 上を見上げると私たちを連れてきた大きな機械の腕が大量に待機していた。



 ——————カンッ!カンッ!カンッ!



 大きな警笛(けいてき)が鳴り響き、大きな機械腕達が1箇所に固まり絡まり合う。


「…今度は…なんだよ。」


 絡まり合った機械の腕の中から中央にある一本の腕だけがこちらへ降りてきた。



 ——————ゴウンッゴウンッゴウンッ。



 機械の腕が水中に浸かる高さまで来た時、体中に電流の様な衝撃が走った。



「がぁぁッ!!!」

「あ゛痛っ…!!!」

「痛ァッ!!!」

「あぅッ!!!」


 思わず目を瞑ってしまった。








———————————————#####



 目を開けると知らない場所に居た。

 まるで昔のお城の中みたいだ、豪勢なカーペットに豪勢なシャンデリア、しまいには王座の様な椅子まである。


「な…ななな何だ…ここ…」


『サキミネ。』


「あぅッ?!」


 後ろから急に声を掛けられた。


『これ飲んで。』


「…え、」


 振り返ると小さな子供がいた。

 その子供は髪の毛が異常に長くスーパーロングロングロングヘアと言えるだろう。

 その長さはこの部屋のドアの外まで続いていて終わりが見えない。

 しかも髪が長すぎて後ろに引きずっている、ア○エッティかな…?歩いてきた経路が髪の毛の流れで見える。

 もちろん、子供の顔はその長すぎる髪の毛で見えない。


『これ飲んで。』


「え…いいい嫌だ…」


 差し出された小瓶の様なものを受け取り拒否する。


『都市の市民になって。代わりに不老のチカラをあげる。』


 その言葉を聞き察した、コイツがエヴァンテの言っていた、ヴェルサイユって奴か…?


「…やだッ。」


『飲んで。』


 ヴェルサイユと思われる子供の声が若干、震えている。

 何で震えてるんだろう…突然知らない所に居て気づいたら目の前に貞子Lv.100みたいな見た目してる子供がいるこっちの方が100倍怖いのに…。


「あああ明らかに…怪しい…詐欺師…」


『ががががががッ…』


 小さく震えていた声は酷くなり、まともに喋れ無くなる程興奮し始めた。

 その子供は腰が抜けた様に倒れ込み、私を見て後退りしている。


「え…ッ。」


『ガガガガガガッ…!』


「ななな何でそんなに怯えてるの…」


『こ゛れ飲ん゛で…ッ。』


 差し出された小瓶を受け取るだけ受け取ろうとした兎は子供に一歩近づく。


『ひぃッ…』


 子供は腰を抜かした状態で顔をギリギリまで逸らし腕だけを差し出してきている。

 まるで人をバケモノみたいに扱うなコイツ…。



 ——————トッ。



 小瓶を受け取り驚いた。

 ガラスの様なプラスチックの様な透明度を誇り、その癖変な弾力感がある。

 一体、何の素材で出来ているのだろう…。

 これ程の柔軟性があればガラスと違って落としても割れないだろう…ハイテク技術の結晶…なのかな…。


『飲めッ…』


「…やだッ。」


『ひぃぃいッ!!!』


「…」


 意味のわからない状況、逆にこっちが怖くなってきた。


『ひぃッ…』


「フブの元へ帰して…」


『飲めば(かえ)す…』


 ほう、脅してる…のか…?

 相手は超ビビっている、ならば少し強気に出てみるか…?

 最悪私より全然小さいから戦いになった時、多分勝てる。

 頭にキック1発入れたら吹っ飛ぶほどの体格差がある…うん、大丈夫だろう…。



 ——————トッ、トッ、トッ。



 距離を詰める。


『ひぃッ!!!』


 その分、腰を抜かしたまま後退りする子供。



 ——————トッ、トッ、トッ。



 必然的に鬼ごっこの様な感じになる。


『いやぁぁぁッ!!!』



 ——————ダッダッダッダッ!!!



 とうとう走って逃げ出す子供。


「あっ、待てっ…」


 走って逃げる子供を追いかける。

 急遽、鬼ごっこが始まる。



 ——————ダッダッダッダッ!!!



「ひぃッ…!!!」



 ——————ダッダッダッダッ!!!



「ハァハァハァッまっ待ってぇ…」



 ——————ダッダッダッダッ!!!



 子供は中々につばしっこかった、でも私は賢い。

 子供は長い髪を置き去りに走って逃げている。

 その髪の毛を拾い上げ、掴む。



 ——————ぐぃッ!



『ギャァッ!』



 ——————バタッン!



 子供は髪の毛を掴まれた反動で地面に転がる。


「あっ、ごごごごめん…」


 少しやりすぎたかな…そう思った瞬間、子供は倒れ込んだまま漏らした。



 ——————チョロチョロチョロ…。



『ひぃぃッぐぇっぐぇ…!』


(あっやりすぎた…)


 ビビらせすぎて漏らした子供を見て、若干の罪悪感を感じる。


「ななな何で…そんなに私に怯えるの…」


『ううぅ強い…から…』


「…私が…強い…?」


 直感したきっとこの子供は人違いをしているのかも知れない…カンネ•ロード達が探していたサキミネは私と違う誰か別のサキミネなのかも知れない。

 そう思った瞬間、怖くなった。

 もし、この都市に連れてこられてから、はい人違いでしたっとなった時、私は一体どうなるのだろうか。

 そしてこの子供が言うには小瓶の中の物を飲めば、何かが手に入る。

 恐らくエヴァンテ達が言っていた不老になれる“市民権”なのか?

 その瞬間、兎は勢い良く小瓶の蓋を開け中の物を飲んだ。


『ヒィッ!急に飲んだッ…』


「…いや、ののの飲めって言ってたの君…」


 次の瞬間、視界がぐらついた。


(やばい…毒の(たぐい)だったかッグラグラする…)



 ——————バタンッ!



 その場に倒れ込む。


『…サキミネ。』


 私が弱ったのを良い事に子供の怯えが(おさま)ったらしい。

 声がさっきより全然震えていない。



 ——————ズズズッ…。



 倒れ込んだ私の腹に乗ってきた。

 遠のく意識の中、子供が私の顔を覗き込み言った。


『お漏らしした事は秘密にして…エヴァンテにもヴェルサイユにも言わないで。』


「…お、お前が…ヴェルサイユじゃ無いの…か…」


 そして視界が完全に暗くなり、意識が飛んだ。






 そして,私は不老になった。



次の話から急に場面が切り替わり兎フブツグネタフナにつぐ、4人目の主人公の話が始まります。

なので話数を飛ばしてしまったとか、別の物語になったとかでは無いです。

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