〔第31話〕もふもふの誘拐犯
びっくりした。
びっっくった!!!
びっくっっっしたぁぁあ!!!
3段階活用、誤字じゃないです。
何ですか?トイプードルしますよ?
ツグネ達は国会を出る。
まだ中で議員は会議している、議題は222についてらしいがもう俺は満足だ。
エヴァンテが足早に国会から去った後も俺達はセネカの授業を受けた。
まぁ4つのグループの名前ぐらいしかわからなかったが…
今はどうでもいい、結構疲れた。
議員みたいな奴らの圧が超怖かった…
「なぁセネカお前、いつか殺されたりしないか?」
セネカに聞くツグネ。
「あぁ〜まぁ大丈夫なんじゃな〜い。」
呑気な声に危機感は無い。
ツグネ、タフナ、鷹田、セネカの4人は昼下がりの晴れた空に照らされる。
いい天気だ。
「ツ、ツグネさん…」
突然何やら不安そうなタフナに話しかけられた。
いったいこんな天気のいい空の下で何を不安に思う事があるのだろうか。
「僕まだ、エヴァンテさんの事…その…信用して無いのでヴェルサイユの雫の事、黙っててもいいですか?」
「あぁ、まぁタフナがそう言うんならいいんじゃねぇか?」
「すみません…」
タフナはエヴァンテが怖いのだろうか。
まぁ国会の中であんなもん見せられたら怖くなるわな…
俺と違ってタフナと鷹田はエヴァンテのラフな姿をあまり目にしていないからな。
そんな事を考えているとセネカが自分の馬車のドアを開けて、残りの3人をエスコートする。
「どぉ〜ぞぉ〜!入って入ってー!」
「わぁ、セネカの馬車、内装素敵ですね。」
「うわぁ〜落ち着くなぁ〜。」
順番に感想を言う中、セネカが馬車に乗り込んだばかりの鷹田の腕にロープを巻き始めた。
「おい、何すんだよ!?」
「君は“下”に居たから、3日間手枷するよ〜ん。」
「ハァァァア?!だるすぎだろ!!」
下に居た?何だ?
「まぁ無許可で下に居たんだから感染してる可能性を考慮するのは当然のことだよねぇ〜♪」
「…チッぐうの音もでねぇぜ…」
なんか納得してる。
ん?この都市の下って…
すると何かを察したセネカがツグネとタフナに向かって言う。
「この都市の下はほぼ未開の領域なんだぁ〜危ない生物うじゃうじゃいるよ〜。」
「あー、なるほど…」
「んぁ?何がわかったんだタフナ?」
「この移動都市が強い理由です。」
「ん?詳しく頼む。」
セネカと違い、察しの悪いツグネに優しく教えてあげるタフナ。
「僕達がエヴァンの門番に絡まれた時、言われましたよね。よそ者がここまで来れる訳ないって。まだ分かりませんか?」
「あ、なるほど。あん時のケモノ女の言葉の意味って、この都市の下とか足の中が超危険だからここまで上がって来れる訳ないだろって意味だったのか。」
ツグネとタフナが考察する中、セネカが馬車を動かす。
「うぉっ…」
「おっと。」
揺れる馬車に2人バランスを崩しこけそうになる。
——————ゴンッ。
「イッッダァ!動く時はなんか言えよぉぉおお!!」
鷹田がセネカの方に大声で文句を言う。
セネカは馬もどきに乗りながらてれぺろポーズをしている。
その様子を前方の馬車の窓から見た鷹田は結構怒っている。
「なぁ、タフナ。朝は何して……って、うわぁぁぁあ?!何だこのデカいケモノ?!」
——————『こんにちワ♪』
タフナが居るはずの隣に大きな“ケモノ”が居た。
(タフナは?!)
あ、普通に部屋の奥に居る。
そしてそのタフナがツグネと同じ反応で驚く。
「誰ですかこの人ぉデッカァいケモノ?!?!」
「知らねぇよ!!いつの間に入ってきた…」
——————ドッ!
「グハァッ…」
謎の“ケモノ”に腹を殴られた。
(やばい…意識が…)
ツグネは意識を無くした。
———————————————#####
暖かい…
冬の朝、起きた時の布団の中みたいに心地がいい…
「んー…後、5分……じゃねぇぇぇえ!!!」
ツグネは無理やり意識を取り戻した。
体が動かせない。
(ん?)
———『起きたみたいだネ♪』
「うわぁっ!!びっくっっっしたぁぁ!!」
『動かないデ!!!トカゲから落ちたら大変でショ!!!』
——————ドスッドスッドスッドスッドスッ。
ふー。
まずは落ち着けぇ俺。
多分これはアレだな。
誘拐とかそう言う類の奴だな。
にしても、この状況…非常に心地良い。
何が心地良いかって、この拘束のされ方。
俺より身長が2倍ぐらいあるケモノの服の中に無理やり入れられているらしい。
ケモノのモフモフがダイレクトに伝わってくる。
凄いあったかい布団の中にいるみたいだ。
体温もなかなかいい、それも相まってコタツの中にいるみたいだ。
しかも、なんかティラノサウルスみたいな奴に乗って移動している。
んーめっちゃ速いな…
地面からここまで2メートルはあるか?
うん、落ちたら怪我するな。
うん。
仕方ない。
もうしばらくこのままでおとなしくするか。
別にデカケモの服の中が心地いいからとかでは無い。
しかし、殴られた腹が痛む。
「ッ…!」
(そういえば、タフナ達は。)
周りを見るが見当たらない。
ティラノサウルスっぽい“トカゲ”といわれていた生物の背中は狭い。
ケモノが俺を服の中に入れなければならないぐらい狭い。
ツグネは現在地を割り出す為、必死に周りを見渡す。
『うっ、動かないデ。落ちたら知らないヨ!』
「誘拐犯ならもっと計画立ててやれよ!誰が拉致った奴、服ん中いれんだよ!」
『生かして持って帰るの初めて何だヨ。』
「アッ…」
ツグネはやり直しを考えたが、もうしばらく様子を見る事にした。
別にモフモフが気持ちいいからとかでは無い。
俺もドレス•ロードの事どうこう言ってらんねぇな…
「なぁ、俺はどこに連れて行かれるんだ?」
ツグネは好奇心で聞いてみた。
教えてくれるかどうかは半々だ。
『隠れ家に行くヨ。』
「にしてもお前…俺が怖く無いのか?」
純粋な疑問だった。
市民権を持っている奴らは少なからず、俺を怖がる。
何でかわからないがここで俺はよくバケモノと呼ばれる。
が、このデカケモは俺を拉致った挙句、モフモフの刑に処している。
『私は君の事知らないヨ。ただ仲間に頼まれたから誘拐したんだヨ。』
「まぁ俺まだ市民権無いからなぁ…よくわかんねぇが俺のこと知らない奴が居ても不思議じゃ無いか。」
『私も市民権無いヨ?』
「は?」
すると乗っているトカゲがスピードを上げた。
——————ドッドッドッドッドッドッ!!!
ツグネはその風圧で異常を感じた。
(やばい、何で今加速?!)
トカゲの上から見える世界。
さっきまで森の中を走っていたが、スピードを上げた瞬間景色が変わった。
急に森を抜けたと思えば垂直な壁が現れた。
「おい!!流石にこのスピードで壁にぶつかったら死ぬだろぉ!!」
『死なないヨ。』
——————ドッドッドッドッドッドッドッ!!!
「うわぁぁぁぁぁあ!!」
——————グンッ!ダンッ!!ドッドッドッドッ!!
「…ん?」
閉じた瞼をゆっくり持ち上げるツグネ。
相変わらず風圧は凄いが…重力がおかしい。
なんかジェットコースターになってるような…って?!
「うぉぉぉおお!壁登れんのかこいつぅ?!」
『動かないデ!本当に落ちるヨ!』
ツグネの視界には晴れた青空が見える。
垂直に壁を走った後、壁の頂上まで行き空に向かって跳んだ。
——————ヒューーーーーッ!
「うわぁぁぁあああッ!!!!」
登った壁の向こう側に地面はなかった。
「はぁぁぁあああ?!」
が、すぐに重力に負け落下し始める。
落下しながら下を見ると広大な海が広がっていた。
飛行機の窓から外を見る時の景色に似ている。
高い空にいるらしい。
「は?!」
「おいおいおいおい、もしかしてこの登ってた壁って周回移動都市の外壁だったのか?!」
——————ヒュューーーーッ!
「やばい、やばい、やばい、やばい!流石にこれはどーしょーもーねぇーだろぉぉぉお!!」
——————ヒュューーーーッ!!!
横を見ると鳥が飛んでいる。
「うわぁぁぁああ!!!!」
『やっほーーー!鳥さん!!!』
デカいケモノはなんか遠吠えしている。
するとトカゲはモモンガのように体を広げ落下を調整し始める。
何百メートル落下したのだろう、わからないが下の海へは、まだまだ程遠い。
——————ヒュューーーーッ!!!
しばらく落下した後、周回移動都市の外から中の方へ飛ぶ。
まただ。
このまま行くと周回移動都市の横腹にぶつかる。
「おい、今回もなんかあんだろぉ?!」
『今回は気合で行くヨ。』
「はぁぁぁぁぁあ?!」
『大丈夫だヨ!多分死ぬ時は即死だから痛みは感じないヨ!』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ?!」
モモンガトカゲは勢いよく周回移動都市の横腹に突っ込んだ。
「馬鹿野郎ぉぉぉぁぉぉぉおおおおお!!!!」
——————ドッカーーーンッ!!!
「ぐっ…ッた…」
モフモフに包まれていたお陰で少し頭から血が出る程度で済んだ。
痛ッいなクッソ…
『大丈夫カイ?』
「あぁ…大丈夫だ。しね…」
ツグネはデカケモの服の中に入ったまま周りを見渡す。
周回移動都市の外壁の下か…ここは…
なんか、こんな広大な外の世界見せられたらこの都市の異様性がわかるな…
デッカいな周回移動都市…
「お前、何の為に俺を拉致ったんだ…?」
『仲間に聞いてヨ。案内するからついてきてネ。』
「まぁ、服ん中にいるから…勝手にどうぞ…」
周回移動都市の横腹にある空間から中の方へ進む。
中は薄暗く、若干の太陽光だけが道を照らす。
廃れたホームレスの家みたいなのがちょくちょくあるが、他に居るコイツの仲間はここに済んでいるのだろうか?
んー…やっぱりホームレスの家っつーか、スラム街に見えるな…。
狭い通路の中にいくつもの寝床、がある。
悪辣な環境だ。
もしかしてこの周回移動都市も格差社会…なのか?
しかも、さっきこのデカケモは“市民権が無い”と言っていた。
差別とかで虐げられているのだろうか。
あっ、市民権がなかったから俺の情報が共有されていなかったのか?
ていうかそもそも市民権を得たらネットみたいに頭の中で情報共有されんのか?検索かけれんのか?
わかんねぇな…もっとエヴァンテに聞いときゃよかった。
でも、少なからず俺の事を畏怖しなかったのは珍しい事だ。
差別なく平等に接してくれるのだろうか?
拉致られたけど。
それとも市民権が無いからコイツは俺の事をあまりわかっていないのだろうか?
俺自身もこの都市で自分がどう言う立場なのか、あまりまだわかっていないけど…
しばらく進むと広い空間へ出た。
「これは…急に中世だな…おい…」
そこに広がっていた景色。
薄暗い空間に、廃れた城や教会、まるで中世の様な世界が広がっていた。
そこに市場の様なものが並んでケモノ達が商売をしている。
しかし、売られているものは腐った食べ物や林檎、明らかに盗品っぽいものや、武器。とにかくロクでもない物だった。
それをデカケモの服の中から眺めているとデカケモに話しかけられた。
『会ってもらいたい人がいるんだヨ。』
「拉致ったんだから目的の一つや二つあるだろうな。」
大きな城の門を潜る。
門には2人ほど門番がいたが、デカケモより小さい。
まぁ多分、俺を誘拐したケモノがでかいだけで普通のケモノはちょっと大きいぐらいの人間サイズなんだろうな。
鉄の鎧が道に並ぶ。
なんかいかにも中世の城の中って感じだ。
しばらく歩くと大きな王の間、的な場所に出た。
いかにも王が座っている様な権力を象徴している場所に誰か座っている。
ソイツもケモノの姿だ。
———『やぁツグネとやら。』
「…お前が俺を誘拐させたのか?」
———『そうだ。とりあえず…あの…なんだ…とりあえずそのみっともない姿やめないかい?』
「あ?誘拐しといて何だその口ぶりは。」
ツグネはデカケモの服の中から顔を出して言う。
みっともない?
まぁ自覚がないわけでは無いが、外の世界は寒いからここにいたい。
———『まぁ…君がそれでいいなら…』
「…」
———『“ヴェルサイユの雫”を渡して欲しい。』
「…は?」
突然出来てきたワードに体が固まるツグネ。
まだ、あれが何なのかわかっていないのもあるが…
そうじゃない。
何故コイツはそれを知っているんだ?!
まだ、エヴァンテにも教えてないんだ。
しかも結構苦労して盗んだ物だ、簡単に渡したく無い気持ちが強い。
これ盗む為に俺が何回カンネ•ロードに殺されたと思ってんだよ。
そもそもそれを簡単に渡せってめちゃくちゃだな。
———『悪い様にはしない。君もそれを使ってこの都市を牛耳るつもりだろう?』
んー、アレそんなやばい奴なんだ…。
てか、今はタフナが持ってるんだよなぁ。
拉致する相手間違えてんなコイツら…とりあえず、話合わせとくか。
「…あのな。俺まだお前と違ってこの都市に来てすぐなんだよ。なんで、もう泥臭ぇ政権争いに首突っ込まなきゃ何ねぇーんだよ…」
———『それは申し訳ない。』
「この都市牛耳って何すんだよ。」
———『エヴァンテを殺す。』
「ほーん。じゃぁ、この都市を牛耳らねぇとエヴァンテは殺せねぇのか?」
———『もちろんエヴァンテも人だ。腹を抉れば死ぬし、頭を取っても死ぬ。』
「じゃぁ暗殺すればいいじゃねぇか…っていうのも酷な話か…」
———『あぁ、察しの通りエヴァンテの周りにはバケモノが多い。カンネ•ロードをはじめとしたセルフレリアや周りのシスター。到底武力では敵わないだろう。』
セルフレリアだけじゃなくて周りのシスターも強かったんだ…初耳だ…。
———『しかも最近はセネカをはじめとした軍部まで教会においている。だから僕達は権力で押し潰す。』
んーヴェルサイユの雫の価値がいまだにわからない…もうなんか聞いて不味かったらやり直しすればいいか…痛ぇけど仕方ない。
「おい、ヴェルサイユの涙ってどんなチカラあんだよ。アレ何するもんなんだ?」
突然の質問にキョトンとしている王座に座るケモノ。
———『え、知らずに盗んだのかい?』
「わりぃかよ。」
———『き、君はその価値がわからない状態でカンネ•ロードと戦ったのかい?』
「まぁ、戦った訳じゃねぇけど。逃げたに近いかもな。」
———『これは驚いた。君はとても強いんだね。』
「ていうか、何で俺が雫盗んだって知ってんだよ…。多分、エヴァンテもその事は知らねぇぞ?」
———『まぁ裏社会の情報と言うべきかな?』
「まぁいい。早くヴェルサイユの雫について教えろ。』
———『わかった。快く引き受けよう。』
そして王座のケモノは、デカケモの服の中から顔だけ出している愚か者の俺に説明を始める。
———『んー…簡単に言えば、この雫を体が吸収した瞬間、エヴァンテと同等の権力を得られるという訳だ。』
「なんか〜、アレだな。どの時代のどこの奴らも権力が欲しいんだな。そんで、エヴァンテ殺して何したいんだよ。」
———『僕達の土地を奪い返す。』
「お前らの土地?故郷とかか?」
———『まぁありたいていに言えばそんな感じかな。』
「今その土地はどうなってんだよ。」
———『…軍事拠点になっている。』
「あー…それは可哀想に。でも、雫で権力持って土地取り返したとしてもエヴァンテがそれを許すと思えねぇけどな。」
———『だから、僕達は戦う。』
その言葉にツグネはため息をついて言う。
「お前らなぁ…敵は222だろ。目先のもんに気ぃ取られてたらもっと大事なもん落っことすぞ。」
———『…だね。ぐうの音も出ないよ。しかし、僕達は引き下がれないんだよ。もう。』
「もう…?」
その時ツグネの頭上から大きな音が鳴った。
——————ゴゴゴゴゴゴゴッ!
光る青白い眼光に照らされる暗闇の世界。
大きな人型のロボットが鈍い音を出して宙に浮いている。
胸部に大きな穴の空いたデザインが特徴的だ。
「これは…」
圧倒的な大きさと存在感を放つそれは城の屋根を突き破り天井に大きな風穴を開けながら降りてきた。
——————バキバキバキバキッ。
——————『エヴァンテから奪ったこの都市の兵器、スフィアで奴を殺す。』
その言葉と共に薄暗い奥の空間から青白い眼光が沢山現れる。
「おいおい、まさか…お前ら…この数奪ってきたのかよ…」
ぶち開けられた城の天井から見える景色。
20…いや、30は居るだろうか。
両手で収まらないほど、スフィアが飛んでいる。
「ちょっと待てよ!エヴァンテが土地を奪ったのか?だとしたらなんか理由があるはずだろ?!なんでそんな極端な結果になるんだよ!」
———『簡単な話だよ。その場所を譲らなかった僕達を権力で追い出したのがエヴァンテ。ならば此方は武力と権力を持ってして奪い返すまでだ。』
「理由、理由があるはずろ?!」
———『その土地はこの都市の下へ繋がる開口部だったからさ。そこを守らなければゾンビや連合の奴らが来た時、対処できない。…そう言われたが、俺達からその仕事を無理矢理奪ったのも、追い出したのもアイツだ。』
「何故お前らが追い出されたかの説明になってねぇよ。」
———『この都市で僕達“獣人”はゾンビの進化系と定義づけられている。勿論、根拠はない。そんな訳ないだろうに。まぁよく有る差別や偏見の類いだ。』
「…めんどくせぇ問題だな。そんで持って納得いかねぇな。」
———『だろ?だから君もヴェルサイユの雫で…』
「違ぇよ。ケモノ。お前らの存在がだよ。」
———『それはどういう意味で…?』
「エヴァンテがそんな偏見や差別でこんな生物的に強い利用価値のある奴らを野放しにしとくとは思えねぇ…」
———『随分酷い言いぐさだね。まぁいい、続けて。』
「多分…アレだぞ。お前らがそこに居ちゃダメだった理由があるはずだ。」
———『つまり、エヴァンテが何かを隠す為にわざと獣人から土地を奪ったと…』
「…お前らのチカラって運動神経以外に何かあるか?」
———『運動神経以外はほぼ君達人間と変わらないはずだよ。もちろんギアの有無もね。』
ツグネは顎に手をやり、考える。
そして沈黙がしばらく続いた。
「うん、思いつかねぇ…」
———『君のヴェルサイユの雫があれば、ヴェルサイユから邪魔されずエヴァンテと戦える。』
「チッ…意味深な事ばっか言いやがって。」
———『どうだい。我々の故郷を取り戻したあかつきには君を一生安全に暮らせる立場におこうではないか。』
「んー…地味に魅力的な条件出すのウザいな…」
———『どうだろうか。』
「少し考える時間が欲しい。てか、このデカケモの中が気持ち良すぎてもう眠い。とりあえず休憩させてくれ。」
———『君は誘拐されてきたんだよ?』
「おう、なんだ?やるか?」
———『…わかった。別に焦ってはいない。とりあえず明日の1日でヴェルサイユの雫の件、考えておいてくれ。』
「あぁ、わかった。」
宿の様な場所を用意されたがデカケモの服から出たくなかったのでソイツと共にそのままベッドに寝転んだ。
デカケモは王座のケモノの命令で俺を監視をするらしいが、俺より先に寝た。
「はぁ…ケモノに隠されたチカラみたいなのがありそうだな…めんどくせぇな…。俺…222以外の面倒事は契約してねぇぞエヴァンテさんよぉ…』
文句を言いながら仰向けで寝ているデカケモの服の中で目を閉じる。
疲れた…。
ここに来てから考えることが多い。
考えるってか…考察ぽいな…
頭使うのってこんなしんどいんだな。
そしてツグネはこの目まぐるしい1日の終わりをデカケモの服の中で過ごした。
Q.ツグネに拷問とかして聞き出さないんですか?
A.ツグネについての情報もヴェルサイユの雫と共に収集できているので、喧嘩したら負ける事ぐらいわかっています。
その夜のエヴァンテ。
「セネカ•ミル•レイディ。ツグネの護衛ができない貴方には少しがっかりしました。」
「ひぃぇっ…」
「私は怒っています。」
「ひぃんッ…」
「貴方にではありません。ツグネを誘拐した蛮族にです。もちろんこんな事で行き詰まるツグネではありませんが。」
「…はい。セネカ猛省します。」
「セルフレリア。」
「はい、何でしょうか?」
「明日の予定は全部飛ばします。」
「あ、え?」
「今まであの獣人達には目を瞑ってきましたが、私、エヴァンテが直々に鉄鎚を下しに行きましょう。」
「セルフレリアお供します。」
「猛省している僕もお供します…」
「セネカは教会で反省していてください。」
「…はい。」
「エヴァンテ様、もう1人のお供にシャルロッテをおつけしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、シャルロッテならあそこに詳しいでしょうからね。ありがとうセルフレリア。」
「とんでもございません。」
※セネカは基本的に護衛が、苦手だぞ!アタッカーだと考えてね。




