〔第23話〕なぁァ…アンタァ〜…娘はァおるん…?
新キャラ【カンネ•ロード】【カスミ】
頑張れ兎パパァ。
サキミネの号令で防衛省の外壁に設置されていた警備ロボが一斉に動き出す。
大きな警備ロボはそれぞれドローンの様な回転する羽がついており、メイトン、目掛けて飛ぶ。
あっという間に警備ロボがメイトンを頭上から囲む。
———『歓迎されてるな〜。うち素直に嬉しいわぁ。』
サキミネは壁一面にモニターが敷かれた部屋に移動した。
沢山の職員がそれぞれの椅子に座りモニターを監視しつつありとあらゆる兵器を操作する。
「対象に対し、射撃を開始せよ。」
その瞬間、メイトンを頭上から囲んでいた警備ロボが一斉に銃口を向け射撃する。
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
密度の高い乱射がメイトンを襲う。
モニターからは銃撃で舞い上がった砂埃しか見えないが、サキミネは続けて言う。
「対象に対しナノシステムの使用を許可する。後、再度射撃せよ。」
——————キィィィンッキィィィンッキィィィンッ。
空気が目に見えるほど揺らぐ。
砂埃が上下に揺れその後、生きているか死んでいるかわからないメイトンに再び射撃が開始される。
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!
——————シューッ。
サキミネ含めた職員はモニター越しに唾を飲む。
ゆっくり舞っている砂埃が、薄れ始めた。
———『痛いなぁ…やり過ぎちゃう?』
砂埃から鈍く光る眼光が揺れる。
メイトンは空に向かって拳を振り上げた。
その瞬間、同時にメイトンの頭上を飛んで囲んでいた警備ロボが“上”へ吹き飛ぶ。
——————ブォンッ!
一瞬の豪風により防衛省の建物が大きく揺れ、警備ロボは空の彼方へ消えていった。
———『はい、終わり。次は何がくるんやろうね〜♪』
[な、なんだと…そんな馬鹿な!何故、奴は動いている!!]
[な、何がどうなって…]
[大臣!!]
[バ、バケモノ…]
[大臣!!次の命令を!!]
「ナノシステムが効かない人間など、思考の持たないバケモノしかいない…はずだ。となると、我々の科学が通用しないナニカをアイツは使っている。」
サキミネの隣で秘書が言う。
「どうしますか大臣。」
「まずは何の為にここへ来たのか…聞こうか…」
防衛省が所有する犬型の機械を玄関の入り口からメイトンの元まで歩かせる。
———『どぉーしたん?あっ!うちこれ知ってるでぇ!犬って言うんやろぉ?』
「すまないね。犬型のロボットなだけで犬ではないんだ。」
犬型ロボットからサキミネの音声が鳴る。
———『お〜この犬はロボットなんやねぇ。どーしたん?次の攻撃はこのロボットでしてくるん?』
「いやいや、勘違いしないでくれ、我々は交渉しに来たんだよ。」
———『あんなに攻撃してきたのに交渉って、ちょっと遅いんとちゃう〜?』
「この敷地をボロボロにしといて何言ってんだよ。お互い様だろ?」
ラフな会話に交渉とは思えない軽い雰囲気。
サキミネとメイトンの会話は続く。
———『さては、アンタら!ここに来た目的が知りたいん?』
「さっしがいいね、じゃぁ早速理由を聞いても?」
———『話の聞き出し方に芸がないなぁ〜。』
「毎日仕事ばかりでそんな芸、磨く暇がないんだよ。早く目的を聞かせてくれ。」
———『ええよぉ。うちはサキミネって言う人物を探してたんよぉ〜。ほんなら、ある時ぃ街のカデンヤサンって言われるところのテレビで見かけたんよ〜サキミネ防衛大臣って人を。』
「…ほう。」
———『ほんで〜周りの人に聞いたんよぉ。この人はどこに居るのぉ〜って、ほんならここに辿り着いたってわけよぉ。』
「私がそのサキミネだ。…で、目的は何だ。」
メイトンは犬型のロボットの頭を撫でて言う。
———『222に対抗できるチカラを持つってきいてんねやけど…ほんまなん〜?』
「…222とは、何…だ?」
知らない単語に戸惑うサキミネ。
周りの職員の顔も見るが誰1人その単語を知る者はいない様だ。
そんな内部事情も知らずメイトンは淡々と話を続ける。
———『うちらはなぁ、222に暴れて欲しいんよぉ〜。だからなぁー、サキミネは殺さなあかんねよ〜。』
「私はお前に殺されるのか?」
———『ごめんなぁ〜。』
「そうか、お前の名前は?」
———『メイトンって言うねん、短い間になると思うけどよろしくなぁ〜。』
モニターに映るメイトンは腕を大きく振りかぶり攻撃の体制をとる。
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『ふ〜んふふ〜ん♪』
夕焼けに染まる空。
夏が終わりに近づき少しずつ日が落ちる速度が遅くなる。
ボロボロになった敷地にゴロゴロと転がる燃える兵器の山。
襲来で駆けつけた軍隊の人間もそこら中に転がっている。
防衛省の建物は半壊し、ただそこに建っているだけの状態になっている。
メイトンがサキミネの首に手をかけて持ち上げる。
「ぐぅかぁぁッ…」
『ギア持ちは普通の人間よりチカラ強いんよなぁ〜。ほんま不思議やでなぁ〜。まぁ私、程ではないけどぉなぁ〜キャッキャッキャッキャッ。』
「ぐっ…ぅ…」
サキミネは自分より体の小さなメイトンに持ち上げられている。
本来なら地面に足がつく高さなのが、両足を折られて踏ん張れない。
「ぅ、うッ、ウゥ…」
『おっと…まだ死なれたら困るなぁ。』
———パッ。
———ドサッ。
「ゴホゴホッ、ハァッ…ハァ…ハァ…」
『ん〜、これが222に対抗できるとは思えんなぁ〜。』
「だ、から…人違いって…ゴホッ。言ってるだろ…」
『んーでも、サキミネって名前ぇそうそうおるもんちゃうと思うけどなぁ〜…あっ、あぁ〜!』
メイトンはぐったりうつ伏せに倒れているサキミネの髪の毛を掴み持ち上げる。
『お父さんおる〜?』
「ち、父も母も旧首都の戦争で死んだ。」
『妹、弟、兄、姉はおるん〜?』
「いない…」
『お嫁さんはおるん〜?』
「それも旧首都の戦争で死んだよ。何なんだお前…ハァハァ…一体何を聞いて…」
『ん〜悲しい独り身やねぇ…んー…あっ!』
メイトンはこの世の悪意を煮詰めた様な表情で言う。
『なぁァ…アンタァ〜…娘はァおるん…?』
「…いない。」
メイトンは必死に笑いを堪える様な、嘲笑っているかの様な表情で言う。
『当たりィィィィイ!キャッキャッキャッキャッ!!』
「居ないぃ!居ないぃ!居ないって言ってるだろぉ!!」
——————ドチュンッ。
メイトンはサキミネの腹に穴を開けた後、防衛省を背にして歩き出す。
「ゴホッ…ダ、ダメだ…」
『ふ〜ん、ふふ〜んっ♪今日はいい収穫やったわぁ!』
サキミネは意識が朦朧とする中、胸からメモ帳を取り出し最後の言葉を必死に書く。
ある程度、書き終えた後倒れた体で空を見る。
「う、兎……」
そして、サキミネの目からメイトンが見えなくなる。
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——————パチパチパチッ…。
太陽が完全に沈み、夜の暗闇が燃え盛る炎を際立たせる。
燃える兵器と倒れている人間の死体、ハエが集っていない事からまだ死んで間もない事が見て取れる。
そんな兵器の残骸と死体が転がる中、2人の女がひとつの死体の前で話す。
——————「チッ、遅かったか。」
見た目とは裏腹に田舎のヤンキーみたいな喋り方をする女。
その女は隣の大きな帽子を被った女の方を見る。
帽子を被った女は顎に指を当てて言う。
———「…この破壊力…メイトンだな。」
——————「とりぃあえず、サキミネェの死体探っぞ。」
———「まだ、死んでるとは限らんだろ。」
——————「あぁ、でも、一様探っぞ。」
———「お願いだから死んでないで欲しい。」
2人の女は、一体一体の死体の顔を見て回る。
——————「おい!サキミネいたぞぉ!!!」
———「ナニ?!」
ヤンキー女に元に駆けつける帽子女。
——————「これぁ…死んでんな…」
———「ハァ…間に合わなかったか。」
そこには記者会見でよくみる顔があった。
腹には穴が空き両足の骨が折られている、無惨な姿で死んでいた。
——————「はぁ…オーダーとの戦いどぉすんだぁよ。」
その時、帽子を被った女がサキミネの手に何か握られていることに気づく。
———「待て、手に何か握ってる…。メモ…?遺言か。」
——————「何ぃ書いてぇあんだよ。」
———「読み上げるぞ。」
[私はサキミネと言う。メイトンに穴を開けられた。間も無く死ぬ。娘がまずい。場所は大阪なんば◯◯町××号ウサギタワー。このメモを見てるのがメイトンの敵対勢力である事を望む…ウサギをたの…]
急いで書かれた文章は必要最低限の情報と想いが綴られていた。
———「メイトンは大雑把な奴だ。娘という情報だけ聞き出した後、この場を離れたのだろう。」
——————「あぁ、そうだぁな。アタシらはぁ、サキミネの娘って奴を探せばぁいいんだなぁ。」
———「あぁ。多分そうだ。ウサギって娘の名前か?」
——————「変わった名前してる娘だな…次ぁ間に合わせようぜ。直線で行く。カスミあれ使え。」
———「あぁわかった。私に任せろ。」
カスミと呼ばれた女は夜に紛れやすい黒いローブを脱ぎ捨てて手を掲げる。
その瞬間、空から青い光を放つ1.5メートル程の大きな機械が飛んできた。
その機械がカスミと呼ばれた女の腰に付き変形し出す。
腰から尻の方に展開された機械が再び青く光り、若干の煙を出し、小さなボンベの様な物が沢山、出たり入ったりしている。
見た目は昆虫の腹が人間に付いた様だ。
しかし、昆虫とは程遠いディティール。
近未来的なガジェットと内部構造が回転し風力では無いナニカでカスミを浮遊させる。
——————ブァーンッゴンゴンゴンッ。
———「カンネ、行くぞ。」
——————「お前の移動方法って助手席とかねぇよなぁ…毎回抱っこかよ…しゃーねんから帽子抑えといてやんよ…」
———「あぁ。では、参る。」
——————ブォオンッ!!!
青い光が線の様に見える速度まで一気に加速し、メモに書かれていた場所の方角へ飛ぶ。
1人の男の想いを乗せて。
兎、パパァ…(´;ω;`)
【麦茶って少量で売ってないよね?やっぱりゴクゴク飲みたいからかな?】




