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ベランダに畑 肉塊に髪の毛

もうしばらくハートフル?が続きます。わーい。

 

「今日は兎の家のベランダに置けるサイズの植木鉢と土を買おう〜…と言ってもめっちゃ広いからねベランダ…(もう庭じゃんあれ…)」


「でででも使ってないから庭汚れちゃってるよ…」


「今ベランダじゃなくて庭って言った?!やっぱりお金持ちのスケールは怖いなぁ…ほらっ、このでかい植木鉢とかどう?」


 そう言って指差したのは縦横1メートルはありそうな植木鉢だった。恐らくフブの中でも1番の大きさを指定したつもりだったが兎はフブの想像を簡単に超えた。


「やややっぱり、もう植木鉢とかめんどくさいし…にに庭使ってないから畑にしよう…」


 その瞬間、炭酸を開けたソーダの様に笑い転げるフブホームセンターに響き渡る笑い声は通る人の目を奪った。


「アーハッハッハッハッ!ヒーーーッ!!ちょっと、凄いフフフッ想像を簡単に超えてくるね。」


 とある人に注目されて少し恥ずかしそうにする兎とは相反(あいはん)してフブは笑い続ける。


「ヒーッフフフッじゃぁ土いっぱい買おう!買えるだけ買って行こうッ!」


「そ、そうだねグフフ…」


 2人はカートに乗せれるだけ小分けに売られている土を乗せてレジに行くお会計が完了したと同時に大量の土が乗せられていたカードがバラバラになった。慌てふためく兎とフブに店員は苦笑いして大丈夫と言うがなんだか申し訳なかったのでバラバラになったカートを購入した。


「このカート緩んだネジが外れてるだけだ!」


「そそそしたらすぐ直せるね…」


 2人はカートのネジを締め直し組み立る、組み立て終わると買った土を乗せて家に帰る。帰り道いつもの道に救急車と事件があったときに巻かれる黄色と黒のテープがそこらじゅうに巻かれていた。


「え、なにかあったのかな…物騒だね…」


 フブの返事に兎は首を縦に振り会釈した後後ろを振り返る。

 凄い数の救急車が増援に来た様だ、火事の様子もないし無差別の通り魔でも居たのだろうか…

 静かな街に救急車のサイレンが響く。

 テープが巻かれている1つの民家の玄関を見る、兎とフブは静かに足を止めた。


「ねぇ、兎。あれって…」


 玄関の下部からさらりと…しかし、どこかトロミも感じさせる様な赤い鮮血がゆっくりとゆっくりと染み出していた。

 玄関前の階段を(まと)まって(したた)る。

 明るい空は確実に色気(いろけ)を失っていくかの様なテンションの転落。衝撃的な光景からは想像が付かないぐらい人気(ひとけ)がないテープの向こう側。

 後ろの増援にきた救急車が到着し救急隊員が玄関前の鮮血を踏みしめ玄関を開ける。

 見ちゃダメだ。

 分かっているが目が離せなかった。

 いや、違う離れなかったんだ。

 開けられた玄関の向こう側には赤いグジュグジュの塊に人の髪の毛のようなものが付いていた。


「ふ、ふフブ…あ、あ、あれって…」


「あれ…人…なのかな…」


 そんな会話を交わした直後さらに増援に来た救急隊員に声をかけられた。


「こら、君達邪魔になるから早くいったいった!」


「「す、すみません。」」


 再び家に向かって歩き出す2人。会話は(はず)まない、見たものがあまりにも非現実的だったのもあるだろう。

 重い空気を切り開いたのはフブだった。


「ねぇ、もしかしてこの街にはやばい殺人鬼や怪物みたいな奴が居るのかな?怖いね…ほら、あれ…映画みたいだよ。ほんと…」


「すすすスプラッター映画みみみたいだったね…ででも今の私達の世界はゾンビ映画だからまだ大丈夫…」


「そうだね!よし!私も役に入り込まないとね!」


 家に到着し大きなエントランスに入る。兎がオートロックを開けようとすると管理人のおばさんが受付から顔を出して兎とフブに挨拶した。


「こんにちは、兎ちゃんフブちゃん。」


「こんにちは!」

「こここんにちは…」


「そんなカートの中の土なんて何に使うのさハッハッハ。」


「私たちはゾンビ映画の世界にいるのですっそしてベランダに畑を作り持続可能な食糧を獲得するのですよッ」


 フブが意気揚々と言うと管理人のおばさんは笑いながら答えた。


「庭を使うのは良いけど下の階の人に迷惑かけちゃダメよ。」


「だだだ大丈夫です…」


 フブと兎は2人でカートを押してエレベーターに乗り25階のボタンを押す。お互い喋らずに無言で小袋に入った土をポンポン叩いていた、押したら凹むが少しの反発を待った農業用の土に少しの感動を共有した後エレベーターが開いた。

 玄関を開けっぱなしにしてから土を運ぶ、ベランダに大量の土袋を置く。


 1、ベランダに大量の土をばら撒き土壌を作る。


 2、タネを植える。


 3、水をあげる。


「ふ、フブ…なんかあっさり出来たけど…ほんとにこれで畑機能するのかな…」


「自然のチカラを信じようぜ…」


 作業を終えて2人は一息着く、いつも兎が座っているふかふかのソファに腰をかけるフブ。そのふかふかさと座り心地に思わず声が出た。


「あーやばい…このソファ…腰がトロけるなぁ…なんだこのソファは、一体なんの素材で出来てるんだ…」


「そそそそのソファふ、ふわふわ…でいいよね…わ私はいつもそこで寝てる…」


「いや、ベッドあるんだからそこで寝なよっ。」


 正論をかまされた兎はフブから目を逸らしリモコンを探してテレビをつける。テレビをつけるといつも通りニュースが流れた。


『暴徒化したデモに対して鎮圧(ちんあつ)を試みるもなかなか上手くいっていないようですね。』


 コメンテーターのコメントが流れる、一瞬テレビを横目で見た後、兎はフブの隣のソファに腰掛ける。


「今日の夜ご飯は何食べたい?」


 兎はフブの質問にしばらく考えた後、答えた。


「カレー…がいいです…」


「いいね〜」


 フブは夕飯のカレーを作る為にキッチンに行く。兎はスマホを取り出してゲームを始める。


『いまだ暴徒化した市民を止められないのはやっぱり警察が本気を出してないと言うことなんですね…もう他の市民に対して影響が出てる時点で逮捕すべきなんですよ〜。』


 コメンテーターの意見が流れる。するとテレビの画面が切り替わり警告音と共に災害情報でよく聞く音が流れる。


ーーーファッンッファッンッファッンッ


『えーと今情報が入りました。太平洋から進行中の謎の巨大建造物に対して弾道ミサイルが発射されました。』


「え、なんかやばいね。」


「すすす凄いことになってるね…」


『尚、日本政府はこの状況に“国際的な軍事進行である可能性が高い、しかしどこの国の建造物かわからない以上攻撃せざる得なかった”との事です。』


「戦争…なのかな?でも、どこの国が全長5kmの移動する物作れるんだろう…」


「でででも壊される前にちょっと見てみたいね…」


「そうだね〜」


ーーートントントントンッ


 リズム良く刻まれるまな板が打ち付けられる音。この音はにんじんを切っている音だろうか。

 兎はスマホゲームを辞めてフブがいるキッチンに立った。


「どしたの兎?」


「わわ私もて、手伝う…」


 フブは少し目を丸くした後兎に微笑んでから玉ねぎを渡して言った。


「玉ねぎの皮剥いてて!」


「わわわかった…」


 兎は玉ねぎの皮に苦戦する。ツルツルして皮を掴めない。2分ほど苦戦しているとフブが玉ねぎに少しの切れ目を入れてくれた。これで皮が剥きやすくなった。


「ああありがと…」


「剥けたね!じゃあ玉ねぎ切ってみようか!」


 さっきまでフブが居たまな板の前に立ち包丁を握る。前に手伝った時フブに教わった野菜を持つ手は猫の手で…


ーーーバッッッッンッ!


 包丁を振り下ろすように玉ねぎを切る。


「ちょぉっい!!その切り方危ないし、サムライか!!!」


「いい勢いつけて切ったほうが良い…」


「包丁の切れ味を信じてあげて…」


「ごめん…包丁…」


ーーーコトコトコトコト


 大きめのフライパンでカレーを混ぜる。とろみがついて来たら火を弱目にして蜂蜜を入れる。兎とフブは甘党なのでカレーも甘口派なのだ。


「そろそろかな。」


 フブの号令により兎はカレーを混ぜるのを辞めて冷蔵庫からお茶を出しコップに注ぐ。フブはカレーを皿に取り分けてテーブルに運ぶ。


「「いただきます」」


 手を合わせてからカレーを食べ始める。兎はいただきますをするタイプではないがフブにつられて毎回するようになった。兎はみたいアニメがあったのでテレビのリモコンを手に取りチャンネルを変える。


「あっこれ私も見てるアニメだよ〜リアタイはしてないけど〜」


「こ、ここれ面白い…」


 アニメの画面から急にニュース速報の画面に切り替わった。


『ただいま政府が緊急事態宣言を発表しました。太平洋から進行中の巨大建造物が日本の弾道ミサイルを撃ち落としたとの報告が入りました。これに対し政府は“これ以上進行を続けるなら手段をいとわない”との事です。』


「。。。」


「あちゃまぁ〜…なんだか凄い話になって来たね。」


 静かに見る兎と少し非現実的な状況に興奮するフブ。リアタイでアニメが見れない事を悟った兎は少し不機嫌な顔をしてカレーを頬張った。


「この様子じゃ今日はもうこれのニュースばっかりだねぇ…」


「そそそうだね…」


 コメンテーターが喋る音が響くリビング、カレーを食べ切った2人はソファで溶けていた。


「ねぇ兎〜冷蔵庫にアイスあるから取ってきてぇ〜…」


「わわ私にじゃんけんで勝てたら良いよ…」


 密かにニヤける兎その笑みに闘志を燃やすフブ。


「んじゃぁあ行くよ〜じゃーんーけーん!!」


 フブは私とのじゃんけんにおいてグーが60%チョキが32.6%パーが8.8%という戦績だ。よって次に出される確率が高いものは1番だしていないパーになる。私がパーに対抗できるチョキを出せば勝利の可能性がぐんと上がるはずだ!


「「ほいっ!!」」


 兎は唖然とした。フブはグーを出していたのだ、おかしい。


「えええ、だ、だっえ1番チョキを出していないはずなのに…なんで…」


「恐らく兎は色々と考えているだろうがッ私は手を開くのがめんどくさかったからグーを出したのさッ」


「くっ…そそそんな思考読めない…」


「馬鹿と天才は表裏一体ってこはこう言う事だぜ嬢ちゃん…」


 兎は負けを認めて冷蔵庫までアイスを取りに行った。



 そんなこんなで夜は明けて朝になる。トリプルサイズはあろうかと言うベッドで寝た2人は朝からベランダに畑を作っている。


「ねぇ、ほんとに綺麗なベ…庭、畑にして良かったの?」


「うん…わわ私、綺麗な庭より今の庭の方が楽しい…」


 そう言って買った土をベランダに撒く。ビーチサンダルを履いて土の上に乗り人差し指を土に刺してタネを植える。

 庭の広さは大体、縦7メートル横5メートルとかなり広い兎自身この庭の使い道に困っていた所ではあった。広すぎて全部は畑に出来なかったが半分以上は買った土で畑になった。それぞれが好きなタネを植えた。


「兎何植えたの?私はね〜ジャガイモ!植え方検索してやったんだ〜」


「わわわ私はす、スイカ…」


「いきなりレベル高いのいくねぇ〜いいね夏っぽくて」


 最後に上から水をかけて畑が完成した。育つのが楽しみだ。

 広いなぁ〜ベランダ…いや、庭…そういえば水は風呂に溜めておくか聞いた時、兎はこのビルの屋上に巨大な貯水タンクがあるから非常時にも大丈夫って言ってたな…なんか…金持ちすげぇなぁ…


「ねぇ兎、改めて見るとこの庭広いね。何というかもう部屋ぐらい広いじゃん。」


「たた確かに…もうバスケぐらいは出来そうだね…」


「フットボールもできるでしょ…まぁボール外に落ちたら大変だけど。あっ、明日で消費期限切れるお肉あるから焼肉でもしようよ!」


「ほほホットプレートあるからそれでできる…」


「ち!が!う!よ!外でするの!バーベキューをしよう!!ここ最上階で上の人いないから大丈夫だよ!!」


「たた確かにその発想はなかった…で、ででもバーベキューセットない…」


「Amezonで頼もう!明日には来ると思うよ!」


 2人でPCを覗き込み驚いた、今注文すると明日の朝には来るらしい。


「現代の流通技術すげぇ…」


「す、すすごい…」


 バーベキューセットを注文したが案外早く畑作りが終わってしまってやる事がなくなった2人。

 無言でソファに腰掛けスマホをいじる2人しかし兎がネットで気になるものを見つけた。


「ねぇ、ふふフブ…これ見て…」


 スマホの画面を見せる兎にフブは落ち着いて体を起こした。


「えーと、ん?謎の巨大建造物の姿を激写、配信者が現在違法配信中…やばいね、この配信者行動力の鬼なのかな。」


「てててテレビでこの配信見よう…」


「いいね」


 テレビを配信に切り替えて映す。


『うぉーーー海上自衛隊振り切ったぞ!!!はっはーーーー!!!!』


「なんかいきなりやばいね…この配信者、」

「いいいきなり配信つけたらこれって、お、おもしろいね」


『えーと今謎の巨大建造物の付近にいるんですけど、凄いよ!!ここからでも見える!ほらっ!』


 そうしてカメラに映された、快晴の空に映る巨大な山の様な何か。例えるなら夕日に照らされて逆光で暗くなった高層マンションの様だ。しかし、高層マンションにしては大きすぎるそれは山と見間違うほどに…


『いや〜凄いね、今から近づいて!乗り込んでいくよ〜!まぁ俺の命は君の退屈を埋めるために使うぜって事で充電の温存の為にしばらく配信切りまーす。続きはまたアレに着いたら配信します〜んー1、2時間後ぐらいかな?ブツッー』


 配信は切られた。


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