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手垢

作者: 徒桜なく

 妹のように可愛がっている幼馴染みに彼氏ができたらしい。上の空なことが増えたり、前より彼女の周りはなんだかきらきらしているように見える気がする。海が似合う彼女だけど、最近は空の方がなんだか似合う気がする。久しぶりに会った彼女は妹のよう、というより、兄妹で表すなら姉のようだった。僕の方が年齢は上なはずなのに、知らない歳上の女の人に見えた。たまたま行き先が同じで、彼女が知らない歳上の女の人に見えた僕は少し気まずかったけれど、話していくうちに僕が妹のように可愛がっている幼馴染みの彼女だと分かった。ただ僕の知らない香りをつけて、いつもより背伸びをした髪型をしている、手垢がついたいつもよりカワイイ彼女がいるということが分かった。

 そういえば、この道の先に海がある。君とよく行ったことのある海が。君の行き先は知らないけれど、もしかしたら海だったりしないだろうか。君はいつも突然僕を連れ出すから。この行き先が海ではないなら、珍しく僕が誘って君と海に行きたい。一緒に海の深いところに行って、その手垢を、君の似合う、君がすきな海で拭って、いつもの君と僕になりたい。

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