禁書庫
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1
こうして、アイル達は、禁書庫の前にやってきた。
トグマは、右手を包んでいた包帯を取ると、黒い痣に覆われた、右手があらわになる。
彼は右手を顔の前にかざした。かざした。手の甲には、横に走る痛々しい傷が二本あった。すると、手の甲に走る傷が、ゆっくりと開いた。
傷の中から、あるはずのない物体が現れた。指の先の傷gからは大きな眼球、そして、下の口からは、並んだ白い歯が現れた。
トグマは、その目に向かって話しかけた。
「禁書庫についたぜ」
右手が、口を開いて話し出す
「ああ。やはり、開かれた形跡はないな・・・おそらく5千年の間、一度も開かれたことはなかっただろう
「じゃあ、やっぱり俺達が侵入したことはバレる?
「ああ。だが何が盗まれたかわからなければ、追跡することもできまい。」
アイルは、赤い天使の羽を取り出した。右手の顔は、それを認めると、言った。
「扉を開けよ」
アイルとアベルとは、扉を開けた。すると中には、なにか青い光が揺蕩う、膜のようなものが貼られていた。
「さわるなよ。触ると死ぬぞ。アイル、羽をよこせ」
右手の顔はそれを受け取ると、そのまま進み、膜を通り過ぎた。
「受け取れ」
黒い右手は、』そう言うと、部屋の中から赤い羽根を投げてよこした。羽は、ゆらゆらと揺れて、廊下に落ちた。
「ひとりずつ、羽を持って入るんだ」
二人はうなずき、膜を通り禁書庫の中に入った。
「なあ、王女の羽があれば入れるのに、なぜ王たちはこの中を調べないんだ?
「・・・おそらくだが、王女だけに中を検分させるつもりだろう。ここは天使が作った国だとは言っても、やはり人間の国だ。どんな国の建国史にも、薄暗いものはたくさんある。消された歴史、忘れられた罪、そして秘密の魔法だ。ザリエルが作った国だ・・・国体の秘密を知るものは、少ないほどいい。三人よりは、ふたり、ふたりよりはひとりのほうがいい・・・」
「けどよ、王ぐらいはなかを覗いてもよさあそうだけどな」
「秘密は必ず漏れるものだ。王は宮廷生活とはなんなのかよく知っているだろう。王自身がしゃべらなくとも、精神を犯す魔法がある。耄碌した余生の最後の瞬間に、うわ言で口走ってしまうこともある。あるいは、耄碌した奥から聞き出そうとする人間も。
彼ほどの立場であれば、相当な誘惑があったろうに、懸命な王だな」
禁書庫の中は、想像していた場所とは違い、狭かった。天上の低い部屋には、敷き詰められた本棚に、無数の本や巻物が鎮座していた。
それは、一見何の変哲もない古びた書物だった。しかし、その一冊一冊が、古代の時代の魔法使いが記した、
一冊一冊の値段は計り知れない。とはいっても、アイルの目的は禁書ではなかった。なぜなら、このような禁書のたぐいは、用意に足がつくから。
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階段を降りる。そこは、宇宙空間のようだった。
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ほんの扉をくぐる。そこは、図書館だった。
「トグマ、俺達は例のものを探してるから、お前は薬を探せ」
「ああ」
そう言って、アイルは部屋の奥へ向かった。この禁書庫は、宝物庫の役割も果たしていたのだろう、金銀細工が施された、あまたの古代の工芸品があった。それこそが、目当ての品だ
彼らは、しばらく歩いた
螺旋階段を上った。
しかし、それではない
「あった」
アイル達は、それを見つけた。かられは、アイル達は、実物は見たことはなかったが、それが目当ての宝だとすぐにった。
青く塗られた真球の球体が、二か所の極を銀色でできた演習の支えによって支持されていた。その銀の支えは、緯度尺というらしい。
青く塗られていない部分は、当然普通の地図と同じく、陸地を示す。アイルは、いま彼らがいるローゼンハイムを探そうと、その表面をなぞった。
アイルの指に合わせて、それは回転した。
地球儀だ。
手分けして地図を探そう、海図も
「ああ、ついでに地図も」
「トグマ、薬は見つかったか!
「いいや!」と大きな返事がくる。
「ふむ、どうやら近いぞ」
手の悪魔が言う
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4
トグマはそう返事をすると、言われた通り奥へ進んだ。
すると、そこには大きな棺のようなものが安置されていた。
「この棺を開け」
トグマは、寄っこらせと、意思の蓋をどかす。そして、その中から現れたものに驚く
「なんだこれは・・・髪の毛か?」
「うわ!」
中で、何かがもぞもぞもとうごめいた。トグマは、驚きのあまり思わず大きな声を出す
「どうした!」
アイルとアベルとが、階段を駆け下り、駆け寄ってきた。そして、眼の前の光景に目を見開いた。
髪の毛の中に、女の子が、眠っていたのだ。
「なんだ、この女の子は」
「ゼクター様!」
「ゼクター様!お目覚めになってください!。私ゼアルめが、五千年の時を経て、いまここに馳せ参じました。ゼクター様!」
「おい、お前たちもこの子を起こせ!」
「じゃあ、起こすよ」
アイルが、彼女の方を揺り動かそうとする
「バカモン!ばっちぃ手で触るんじゃない」
「じゃどうすりゃいいんだよ」
「この方は王の中の王、ゼクター様であらするぞ!薄汚い野盗風情が触っていいお方ではない!高貴なるお方なのだ!」
「なんか急にイキリ出したぞこいつ」
ふ~ん
そういって、乳首を触る
「ぶぅわっかも~~~ん!」
「それより薬はどこにあるんだよ。お前と分離できるっていう薬は」
「そんなもんあるわけなかろう!バカが間抜けにも騙されおって」
「なにぃ?」
「ゼクター様!」
ゼアルが、驚きの声を上げた。見ると、女の子が起きていた
ゼクターと呼ばれた女の子が、赤い瞳を開けて、彼らを見ていた
彼女は、やおら立ち上がった。
そして、彼女の頭上に、やがて赤い光輪が浮かび上がった
「ゼクター様!私このような恥ずかしい姿でおめおめとこの場に三いましたことをお許しください!私めが誰かわかりますか!ゼアルにてございます」
「・・・・・・・」
しかし、ゼクターは胡乱な目を彼に向けるだけだった?
「なぜお声を駆けてくださいませんか?私、ゼクター様の第一の臣下、55の柱の頂点にして力の使徒、ゼアルにございます!このような人間風情に取り付いてまで、」
「・・・・・・」
「・・・・わからない」
「わからない、とは。まさk私めのことを、お忘れになられたのですか?
「わからない・・・ここがどこだか」
ミギーは勢い込んで話し出そうとしたが、次の言葉に息を呑んだ」
「自分が誰だか・・・・わからない」
その場を心目が支配する
「な・・・・・・・・」
ミギーは言葉に詰まる
「ゼクター様・・・ご記憶がないのですか?」
ゼクターは、こくりとうなずく
「トグマよ。ゼクター様に触るのだ」
「ちっさわれと言ったりさわるなと言ったり・・・・ぴと」
トグマは胸に手をおいた
「・・・いや」
ゼクターは悲鳴を出し、胸を隠した
「どこ触っとるんじゃくそがきゃああ!・・・・・額にしろ」
「へいへい」
そうして、トグマは手をおいた。やがてゆっくりと、黒い手は目を見開いた。
そうやら、本当にご記憶を失われているようだ・・
ゼクター様、あなたの本位は後悔でしょうか。・・・いや失敬、その記憶もあるはずがないのだ・・・
それは、やり直したいということでしょうか 一人の人間として生きたいということでしょう
・・・・もしそれが、あなたの選択だというのならば、私めはそれに従うまで」
「トグマ、長い付き合いだったが、お前ともお別れだ」
「はあ?結局薬はどこにあるんだよ」
「聞け。お前はこれからゼクター様を連れ出してここを脱出しろ」
「はあ?そんな子供連れて逃げれっかよ」
「いま連れ出さなければ、また5千年この中で生きることになる。今度は目が覚めたまま・・・」
「なんでお前の言うことなんか聞かなきゃいけないんだよ」
「いや、お前はそうする。お前はそういうやつだろ
「ちっ。何がなんだか」
「トグマ、今まで
一緒にいられて楽しかったよ。後は頼んだ・・・」
そういうと、ゼアルはゆっくりと目を閉じた。
彼らは、扉に向かう、そして、本棚を曲がったところで、いきなり顔をひっこめる
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4
彼らが元いた場所に戻ると、なにかがいた
アイルは外を覗いた。
「いる!」
「何が?」
「悪魔が!」
ゼアル、
ここで見たことは他言無用だ
「ああ
ゼアル、悪魔たちと会話
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5
ゼハートは虹の天穹を抜ける。
そこには、悪魔たちが集結していた。
ゼハート様、ここにおいでとは
我々はまだ侵入法を探っている段階だというのに、さすがです
「……・ああ
我々は、クラウザーに化けて侵入
「化ける?しかし、どうやってだ
あの王に化かしの魔法など効くか
「人体錬成にございます
肉を盛るのでございます。
クラウザーの肉の下には、
文火しの
ゲルド
ときに貴様なかなか強いな
ぶっ飛ばす
そして、フーガを使い、皆殺しにする。
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「ねえリリ様、本当にあいつらを宝物庫に入れていいんですか」
「シノン、我々の立場では任務の内容に口を挟むことはゆるされないのですよ」
「でも不敬じゃないんですか?王女様より早く、宝物庫の中身を見るなんて……」
「それは私もそう思いますが、王も承知の上での作戦でしょう」
「……あの金髪の男、わかりますか?」
「エルフじゃない方ですか?」
「あいつは大海賊オルタ・バッカスの息子だそうです。やつの後をつければ、父親のもとに導いてくれるでしょう」
「ねえリリ様、誰かいる……」
奥から、仮面をつけた集団が現れる
「悪魔だ」
衛兵との間に戦闘が始まる」
「加勢するぞ!」
「あの、尾行作戦はどうなるんですか?
「関係ない。悪魔は残らず、皆殺しだ。」