「つまんなーい!」
「お嬢様、どうされました?」
むぅっと頬を膨らませながらヤギの頭をした執事を見るのは7代目の魔王、モア・リリエル。
歴代の魔王の中でも最強と言われているが、子供のように無邪気な性格をしているので家臣達からはお姫様のような扱いをされている。
「だって、今回来た勇者パーティも弱かったもん!この城まできて四天王の1人も倒せないってなに!?やる気あんの!?」
「勇者の強さにも差はありますのでしょうがないかと…」
「それでもよ!この100年で玉座まで辿りついた勇者が1人もいなかったじゃない!私も勇者を迎えうってみたい〜!」
「駄々をこねないでください…」
いやー!と叫ぶモアの叫び声が魔王城に響いた。
その間に、この世にまた勇者の力を持った子供が産まれた。
勇者が死ねば新しく勇者の力を持つ子供が産まれる。だがあまりにも早すぎるので、勇者の気配を察知することができるモアは気になり、すぐに水晶で確認することにした。
さっきまでの勇者のことはもう頭にない。
「わぁ!この子将来強くなるよ!」
「そんなこと言って2代前の勇者はこの城に辿りつくことすらできなかったじゃないですか」
「あれは成長しきる前に死んじゃっただけよ!でも、今回は違う!この子はとんでもない才能を持ってるよ〜!ふふんっ、楽しみ!」
「すぐに死なないように祈りましょうね」
「そうね!」
モアは上機嫌で鼻歌を歌いながら水晶に映る赤ん坊を見ていた。
「そうねぇ…5年後ぐらいに1度会いにいきましょうか」
「なぜです?」
「ふふっ、人間は憎しみをぶつける相手がいれば強くなるからよ!」
「もしや、この子以外の人間を…」
「そうよ!私のことしか考えられないようにしてあげる。ふふふっ」
そう言ったモアは、まるで恋する乙女のような顔をしながら水晶を撫でていた。