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【休み時間1】


 教室の片隅で、一人芝居を続ける天宮。

 クラスメイト達は相手にせず、ほとんどが無視している。


【休み時間2】


 噂を聞いた別のクラスの生徒が天宮を覗きにくる。

 彼らはひとしきり笑うと、満足して帰って行く。


【休み時間3】


 一部の生徒が、意外と話が練られていることに気づく。

『休み時間一』で張られていた伏線を回収し、「おおっ」と小さな歓声があがる。


【昼休み】


 クラスメイトの多くが食事をしながら天宮の一人芝居に注目する。

 食後も席を立つ者はおらず、その異様な光景に他のクラスの生徒も集まってくる。


【休み時間4】


 噂は他学年にまで広がり、教室は満席になる。

 廊下もごった返し、一部で小競り合いが起きる。


 そして、放課後――


 舞台は教室から中庭に移る。

 天宮を大勢の生徒が囲み、校舎の窓も全て埋まっていた。


『休み時間一』から天宮の一人芝居を見ていた女子生徒は、今や顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

 彼女は内気な性格で、いまだに友達が一人もできておらず、休み時間を持て余していたのだ。


 初めは天宮のことを内心で笑っていた。

 自分より惨めな相手を眺めることで、友達の一人も作れない不甲斐ない自分を慰めていたのだ。

 そのことを、今は心から謝りたかった。


 周りの生徒たちもみな神妙な顔をしていた。

 途中から見始めて、話しの全容を把握できていない者がほとんどだった。

 それでも天宮の一人芝居には、人の心を揺さぶるものがあった。


 中庭に差し込む夕日。

 校舎に遮られ、天宮だけをスポットライトのように照らし出す。

 本来なら部活中の生徒も集まっているせいで、学校そのものが息をひそめるように静まり返っていた。


 唾を飲み込む音すら雑音のように感じられ、みなが息を殺して天宮を見つめていた。

 そして、天宮の一人芝居はクライマックスを迎える。


「その時、俺は誓ったのだ。この魂にかけて、必ずカテリナ様をお救いすると!」


 その瞬間、街中に響き渡らんばかりの大歓声が沸き起こる。

 こうして天宮は、学校一の有名人になったのであった。

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