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「やっぱり二人は付き合ってたんだ! 絶対そうだと思ってたの!」
どうやら聞かれていたのは「大丈夫だって、痛くしないから」の辺りかららしい。
力のことはバレずに済んだけれど、それ以上に厄介な事態に陥っていた。
とりあえず部室の中に招き入れて椅子に座らせたものの、全く落ち着く気配がない。
「でもでもさすがに無理やりはどうかと思うの。そういうの好きだった時期もあるけど、やっぱりちゃんと同意の上で愛し合うべきだよ。二人は付き合ってるんだから、焦らなくてもいいんだって! それにやっぱり学校でそういうのはよくないよ。確かに放課後の部室なんて最高のシチュエーションだけど、もし二人が退学になったらもう近くで愛でることもできなくなるし。あ、もちろん二人のことが心配なのが一番の理由だけど――」
由紀はバタンとその場に倒れる。
顔が青紫色になっていた。
完全にチアノーゼだ。
「ああ、もう。鼻にティッシュ詰めたまま、息継ぎもせず喋り続けるから」
天宮は由紀を助け起こした。
「いいか、よく聞け。俺たちはな、付き合ってなんかないんだよ」
噛んで含めるように天宮は言う。
でも由紀はキョトン顔だ。
「え? じゃあさっきのやり取りはなんだったの?」
「それは……」
「ほらやっぱり!」
「いや、だから……」
「兄貴」
アキラが天宮の肘を引っ張った。
由紀から少し距離をとってから、天宮の耳元で囁く。
「力のことを隠して誤解を解くのは無理ですよ。もういっそ、付き合ってるってことにした方がよくないですか?」
「はぁ? やだよ。気持ち悪い」
「同性愛は別に気持ち悪くないでしょ」
「アホか。同性愛者も無理やり異性愛を押し付けられたら気持ち悪いって感じるだろが」
「それはまぁ……」
「理解すんのと腫れ物扱いすんのは、全然違うからな」
「いやそういう話じゃなくてですね。俺が言いたいのは、別に実害はないでしょってことですよ。力のことがバレるのと、どちらの方がいいんですか」
「それは……。てかあんま顔近づけんな。由紀の目がギラギラして怖いんだよ」
「あ、すみません」
天宮はアキラの提案について考えてみる。
確かに、それが最善な気がする。
アキラの言う通り、由紀に勘違いされたところで、実害はないわけだし。
天宮はちらりと由紀を振り返った。
サンタを信じる子供のような、無垢な目で見つめてくる。
そんな澄んだ目をしておきながら、頭の中ではサンタと擬人化したトナカイを掛け合わせているのだ。
きっとシリアルキラーも、同じような澄んだ瞳をしているのだろう。
由紀の頭の中を覗かなくてよかった。
覗いていたら、一生消えない傷を心に負うところだった。
「……はぁ」
天宮は重いため息をつき、
「実はな、そうなんだよ」
と諦念のこもった声で言った。
「やっぱり!」
「ただ、俺たちはあまり騒がれたくないんだ。だから、周りには内緒にしてもらえるか」
「もちろん!」
由紀は力一杯、そう答えた。
でも三日後には、天宮とアキラが付き合っていると学校中で噂になり、天宮は一年と四ヶ月ぶりに不登校になった。
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