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「まさか中二病だとは……」

「こっちの台詞ですよ。そもそも本物が実在するなんて思わないじゃないですか……」


 いい感じの岩に並んで座り、二人揃ってため息を吐く。


「あ、俺、城島明って言います」


 今さらのように自己紹介。


「ダークサクリフェスじゃないの?」

「本名なわけないでしょ」

「だよなー」


 むしろなぜ疑わなかったのか、自分でも不思議だった。


「てかなんで急に俺に絡んできたんだよ。脈絡がなさ過ぎて逆に信じちゃったじゃんか」

「いやあ、ほら、天宮さんって王国の聖騎士がどうのって一人芝居をしたんでしょ? それで、同類だと思ったんですよ」

「にしても、来るならもっと早く来いよ」


 あの直後であれば、天宮はアキラのことをもっと疑っていたはずだ。

 由紀の話を覚えていて、すぐに件の中二病患者だと気づいていたかも知れない。


「実は俺、入学式でやらかして、一週間くらい停学になってたんですよ。だから天宮さんの一人芝居の話を聞いたのも最近で」

「……ああ、そうなんだ」

「天宮さんこそ、中二病でもないのになんで聖騎士がどうのなんて言い出したんですか」

「俺はこの力を隠したいんだよ。だから、中二病のふりをすれば逆にバレないかなって」

「ああ、そうなんですね……」


 初期の新海誠映画の主人公とヒロインばりにすれ違った結果の現在である。


「ああ、くそ……。力のことがバレちまった……」

「だ、大丈夫ですよ。絶対に誰にも言いませんから」

「本当か?」

「はい」

「約束だからな」


 天宮はもう一度ため息を吐き、切り替えるように立ち上がった。


「まあ、バレちまったもんは仕方ない。とにかく帰るか」

「あ、あの……」

「ん? なに」

「えっと……。その、俺も一緒に、連れて帰ってくれるんですよね?」

「ああ、そりゃあな」


 アキラはほっと胸をなで下ろした。


「よかったぁ。こんなところに置いて行かれたら、絶対日本に生きて帰れないし」

「え?」


 天宮は周囲に視線をやる。

 見渡す限りの広大な大地。

 人の姿はないが、野生動物はたくさんいる。

 その中には当然、肉食獣の姿も――。


「……」

「ちょっと待って下さい」

「え?」

「『え?』じゃないですよ。今、俺のこと置いていこうとしたでしょ」

「――っ! な、なぜそれを⁉︎ やはり能力者か⁉︎」

「やだ、なにこの人。超面倒くさいんですけど」


 その後、アキラは自分をここに置いていくリスクを必死に語った。

 本当に必死に。だって命がかかっているんだもの。


「もし俺がいなくなったら行方不明として事件になりますよ! それだけならまだしも、もしここで俺の死体が見つかってみてください! 日本にいたはずの高校生の死体が、アフリカで発見されるんですよ! 世界的な大事件になって注目の的になりますよ!」

「お、おお、そうだな」

「なんでちょっと引いてるんですか!」

「いや、そんなガッと来られたら引くだろ……」

「こっちは命がかかってるんです!」

「わかったって。ちゃんと連れて帰るから、落ち着け」


 アキラは半分泣いていた。

 言葉の通じない外国で迷子になるのは、とても恐ろしいことなのだ。

 入学式の次くらいに。


「……というか、天宮さんこそ、人の心を読めたりしないんですか」


 もしテレパシーが使えれば、そもそもこんなことにはなっていなかったのだ。


「読めるわけないだろ」

「へえ、そうなんですね(こいつ馬鹿そうだし利用できるかもな)」

「ごめん、やっぱ読めるわ」

「えっ?」

「今まで人の心を読もうとしたことがなかっただけで、読もうと思えば読めるみたい……」

「あ、え、じゃあ今のも……」

「うん」

「……」

「な、なんかごめんな」

「あ、いえ、こちらこそ……。すみません……」

「……と、とにかく帰るか」

「そ、そうですね」


 彼らは忽然と姿を消す。

 気まずい空気だけをアフリカの大地に残して。


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