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 天宮悠斗が力に目覚めたのは、中学二年の冬だった。


 冬至が近く、天気も崩れているせいで、まだ夕刻だというのにやたらと薄暗い。

 そんな下校中のことだ。


 ふと己の体内に、ドロドロとした熱を感じたのだ。

 鳩尾のあたりに生じたその熱は、犯すように全身に広がっていく。

 不思議と不快感はなく、むしろぬるま湯に浸るような心地よさがあった。


 さっきまで寒風に首を縮こまらせていたのに、まるで寒さを感じない。

 いや気温や湿度が低いことはわかる。

 以前よりも鮮明に、より詳細に。

 でもそれが苦痛に繋がらない。

 天宮の生命を脅かす理由にはなり得ない。


(何だ、これ……?)


 当惑したのは一瞬だけだ。

 天宮はその熱を、強大なエネルギーを、あっさりと受け入れてみせた。


 尻尾の存在に驚く猫のように。

 今まで気づかなかっただけで、それは生まれた時から備わっていたのだと、そう言わんばかりだ。

 熱は天宮によく馴染み、そして彼の意のままに扱えた。


 何の気なしに、熱を右手に集約させてみる。

 それを体外に放出できることを、彼はすでに知っている。


「……ふむ」


 ほんの気まぐれからだった。

 拾った空き缶を屑籠に放るような気楽さで、彼は熱を遠くに見える山脈目掛けて投擲してみた。


 どかーん!


 という冗談みたいな爆発音と共に、日本から山脈が一つ消し飛んだ。

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