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変わってしまった愛しい先輩

「八神さん……」


皆が署長からの発表に喜んでいる中、1人グッとした顔で思い詰めている女がいた。

彼女の名は『神楽(かぐら) 優美(ゆみ)

先程の『八神(やがみ) (れん)』の後輩で可愛い女刑事だ。


蓮を昔から慕う優美は、皆が八神の事で沸き立つ中ドアをそっと開け、その場からスッと出ていった。

優美が心から慕い、恋焦がれている蓮に会う為に……


◇◇◇


東京都新宿御苑前


地下鉄丸ノ内線から階段を上がると、ビルの立ち並ぶ中に御苑の入り口の大きな門がある。

中に入ると豊かな自然に彩られた自然がパノラマ状に広がり、都会の喧騒から離れる事の出来る場所だ。


──きっと蓮さんはここにいるハズ……!


そう確信した優美は、新宿御苑の門をくぐった。


ちなみに、今の季節はちょうど秋。

優美が確信した通り、蓮は今紅葉が鮮やかに彩る小さな庭園の中で静かに佇んでいた。

そして、整った顔立ちに儚さを漂わせながら、一人静かに想いに耽っている。


──俺は、また……


その時、少し離れた所から蓮を呼ぶ声が聞こえてきた。


「蓮さん!」


その声の方に蓮がスッと眼差しを向けると、蓮のサラサラの髪は僅かに揺れ、その瞳に自分を見つめる優美の姿が映った。


「優美……」

「蓮さん、やっぱりここにいたんですね」

「フッ、よく分かったな……」

「当たり前じゃないですか。私は蓮さんの一番弟子なんですから♪」


ニコッと嬉しそうに笑う優美だが、蓮はスッと視線を池の方へ向け静かに答える。


「お前を弟子にした覚えは、ない」

「いいんです!私が勝手に弟子になってるだけなんで♪」


優美は元気にそう答えたが、蓮はクールで寂しげな表情を崩さない。

切なく儚げな表情で池の方をジッと見たままだ。


「そうか……けど、今は所轄も違う。優美、俺に、何の用だ?」


蓮からそう言われた優美はグッと辛そうな表情を浮かべると、そのまま蓮に問いかける。


「蓮さん、なんで……なんでそんな簡単に人を撃てるんですか?!」


その問いに黙り込んだままの蓮に、優美は悔しそうな顔をしながら話を続ける。


「あの法律が出来る前、蓮さん私に教えてくれたじゃないですか。どんな犯罪者だって、色んな想いを抱えて生きてる。だから、その時の言動だけで判断せずに、相手の事を考えてみる事が大切だって!なのに……」


優美がそこまで話すと、蓮は優美にサッと背負向けた。

そして、そのまま静かに告げる。


「優美……俺達は刑事だ。法を守り正義を守る。そして、その正義に反した者には法に則り対処するのが俺達の仕事だ」

「でもっ……!」


優美は納得がいかず思わず蓮に反論しようとしたが、その瞬間、蓮は優美に背を向けたままスッと眼差しを向けた。

その、どこまでも蒼く深い切なさに満ちた瞳を向けられた優美は、それ以上蓮に何も言う事が出来なかった。


「蓮さん……」


優美は悲しさにうつむき蓮の名前を零した後ハッと顔を上げると、もうそこに蓮の姿は無く、まるで蓮の心を隠すかのように舞い散る紅葉だけがそこに漂っていた。

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