射殺したら英雄
「お疲れ様です。八神です。今『雨天時傘不所持根絶法』に基づき、3度目の違反者を1名射殺致しました。これからデータを送らせて頂きます」
「うむ、よくやった八神くん。今月これで9人目だ。キミは我が署の誇りだ。これで警視総監からも、またお褒めの言葉を頂けるだろう」
違反者の射殺は国家としても重要な取り組みになっている為、1人につき多額の報奨金はもちろんの事、この法令による射殺した人数の数で所轄の評価も大きく変わる。
それは、出世を目指すキャリア達にとって何より重要な事の1つである為、八神の電話先の署長は嬉しさに顔も声もほころばせているが、当の八神は冷徹な表情を崩さない。
「それはよかったです。ただ、自分は違反者を見つけ次第射殺する。それが自分の仕事ですから。後処理班、至急お願い致します。では」
八神は署長にそう告げると、サッと電話を切った。
そして、脳梁が吹っ飛ばされた男の死体を少しの間ジッと見つめるとスッと踵を返し、まるで何事も無かったかのようにその場を後にした。
ちなみに電話を切った後、署長達は八神について話していた。
「署長、今のはもしかして八神さんからですか?」
「ああ、そうだよ。また八神くんがやってくれた!今月で9人目を見事に射殺だ!」
署長が若手の署員にそれを告げると、その場でドッと歓声が上がる。
「凄い!さすが八神さんね。顔もやる事もイケメンだわ♪」
「く~~~~ぅ、八神さん、たまんねぇぜ!」
「八神さんのお陰で、また世界が綺麗になっちまいましたね!」
みんなの喜ぶ姿を見て署長も満面の笑みを零しているし、その場の誰もが八神を尊敬し褒めたたえている。
ただ1人の女を除いては……
「八神さん……」