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フォトブック 第2話

私はその日、うちに帰ってもずっとはしゃぎっぱなしだった。

初めてできた彼氏。

初めてのキス。

あたしは舞い上がって、眠れそうになかった。

夜になっても、色々な友達に電話して、彼氏ができたことを話した。

みんな喜んでくれた。

中学の時の友達の愛華も、今日彼氏ができた、と話してくれた。

あたしは、愛華と朝まで喋った。

中学の時、嬉しそうに彼氏の話をする子がいても、あたしはなんとも思わなかった。

でも今、彼氏ができるとわかる。

誰かに話したくなる気持ち。

止められない。


AM 7:00

私は制服に着替え、朝ごはんを食べた。

結局一睡もできなかった。

いつもお母さんの作る朝ごはんは、食べなかった。

だって、おいしくないんだもん。

でも、今日はなぜか食べれた。

嫌いなピーマンも平気だった。

早く学校に行きたい。

海に会いたい。

時計を見ると、もう7時30分。

やばい・・・また遅刻しちゃうッッ

急いで食器を片づけて、ローファーを履いた。

ばたばたとバス停まで走る。

ちょうど、バスが止まってる。チャーンスっっ‼‼

あたしはバスに乗り込んだ。

・・・席、空いてない・・・・

そんな時、後ろから肩をポンッっと叩かれた。

振り返ると・・・

「珊瑚。オはよ。」

キャー‼海だぁぁぁっっ‼‼

どうしよぉ・・・汗まみれだしッッ‼‼

「おっ、おはよぅ・・・」

声が小さくなってしまう。顔が赤くなってしまう。

恥ずかしくって、海の顔が見れなかった。

「ここ、座れよ」

「えっ、いーよ。海座ってて?」

「・・・早くっ」

あたしは海に押されて、席に座った。

「めっちゃ汗かいてるじゃん。」

「うっ、うん・・・走ったから・・・」

「まぁ、可愛いからいいけど。」

・・・可愛い・・・

そんな事言われたの初めてだよ・・・

真っ赤になって下を向いてると、海の腕がのびてきた。

あたしの額を、自分のブレザーの袖でゴシゴシ拭く。

「ちょ、海‼だめだよ、なにやってんのッ汗臭くなっちゃうッ‼」

「いーって。別に。俺の服だし。」

「そーゆう問題じゃ・・・」

「そーゆう問題だよ。」

「・・・ありがとう。」

「いーえ、どーいたしましてー」

海はあたしの方を向いてニカッと笑う。

変かな・・・こんな気持ち・・・愛しい・・・なんて・・・

あたしは気持ちを止められないで、海のほっぺにキスをした。

チュッ

車内に響く、小さな音。

周りのサラリーマンや、若い女の人が、チラッっとこっちを見る。

見られても、恥ずかしくなかった。

だってあたしは、海が好きだから。

海は驚いた顔をして、こっちを見た。

そして、照れくさそうに笑った。

「珊瑚って、案外大胆な事するな。」

「・・・ごめん・・・」

「えッ、ちげぇし。謝んなよ・・・嬉しいってことッ‼」

そう言うと、海はあたしのおでこにキスをした。

周りから見たら、ただの幼い恋愛かもしれない。

バカップルかもしれない。

それでも嬉しいんだ。

そんなことさえも、愛しいんだ。

「渋谷駅~」

運転手さんのアナウンスが響く。

グイッ

突然海に手をひかれて、あたしは渋谷で降りてしまった。

「ちょっと、海‼?」

「今日、俺に付き合ってくれねぇかな?」

「・・・なんでイキナリ?」

「珊瑚とデートしたかったから。」

・・・デート・・・

すごく新鮮な響き。

「うん・・・あたしも、海とデートしたいっ‼」

「よしっ行こーぜ‼」

海があたしの手を握る。

あたしも海の手を握り返す。

あたしたちは、2人で歩き出した。

制服デート。

あたしの憧れだった。

それからは、いろんなところへ行った。

服屋さんへ行ったり、クレープを食べたり、ゲームセンターに行ったり。

あたしのはじめては、全部海。

全部・・・海の物だから・・・

海の持ってるデジカメで、一緒に写真を撮った。

海はどこに行っても、カメラを離さず、あたしの事を撮りまくった。

てれくさくて、嬉しかった。


その時、急に頭がズキッッとした。

痛ッ・・・

なんだろう。こんな痛み、初めて・・・

グラグラしながら歩いてるあたしを、海がベンチに座らせた。

「珊瑚・・・?どうした、大丈夫か?」

「あ・・たま・・痛くて・・・」

「病院行くか?」

「ううん、大丈夫だよ・・・」

「ホントか?」

「あたし・・初めてデートし・・・」



それからあたしは、意識がなくなった。


・・・さ・・・・・んごっ‼・・・・・・・・・


聞こえるのは、かすかな海の声だけ・・・・・・





それからの事は、覚えていない。


なにげない日々が。

なにげない1日が。

急に変化してしまうことはないでしょうか。

急に見失うことはないでしょうか。

ある1日が。

幸せな日々が。

珊瑚のように・・・変わってしまうかもしれません。

だから。

1日1日を大切に。

生きてる事に、私は誇りを持っています。

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