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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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女神の洗礼①



「クリスフォード様、ヴィオラ様、旦那様から教会の洗礼を受けるようにと手紙が届いています」




ロイドの執務室の応接セットにクリスフォードとヴィオラ、ノアとジルが向かい合って座っている。


ロイドからエイダンの手紙を受け取ったジルはその内容に「なるほど」と頷き、ノアに手渡した。



「確かに以前2人が契約した上級精霊が、光と闇の属性を君達に与えたのは神による『救済措置』みたいな事を言っていたからね。教会に行ってご本人に聞くのもありなんじゃないかな」


「この国が信仰している女神と対話しに行くって事ですか?───すいません、私には現実離れした話過ぎていまいち頭に入って来ない・・・。精霊の存在すら私にとってはお伽噺です」



ロイドが訝しげな目で率直な意見を述べる。



「まあ人は見たことないものは信じられないもんだよ。精霊を呼び出してあげたいところだけど、イザベラが脱獄した今、精霊付きがここにいるってバレるのはよくないから見せてあげられないんだよね。それに、大陸には魔法すら使えない種族だっているんだよ?その人達からすれば魔法を使えるロイドだって御伽噺に出てくる人物と変わらないんだから」


「まあ・・・それはそうですが・・・」



「仮に教会で洗礼を受けたとしても、必ず女神が応えてくれるか分からないんだよな?もし洗礼を受けることによって神の何らかの力が発生したら、それこそ邪神に気づかれることにならないのか?」



ノアがエイダンの手紙をロイドに返し、懸念していることを口に出す。


帝国ならまだしも、魔術が浸透していないバレンシアで邪神教を迎え撃つのは自殺行為に等しい。



「ヴィオラ達の力の存在は絶対にアイツらにバレてはダメだ。このまま身を潜めて力が満ちるのを待った方がいいんじゃないか?」


「でも邪神はイザベラを捕獲して個別に動き出してるんだ。僕らが呑気に隠れてる間に奴らが何かをやらかすのは間違いないよ。それにどう対応する?僕らに今一番必要なのは情報だよ。それがないと今後どう対策を立てればいいのかわからないし、クリス達を守る方法もわからない。第一、邪神に一番気づかれたくないのはこの国の女神のはずでしょ。その神が邪神に何かを気取られるようなヘマはしないと思うけど」




「──洗礼を受ければ、何か好転するんですか?」



ジル達の話を黙って聞いていたクリスフォードが口を開いた。



「いや、それはわからない。神様は気まぐれだからね。僕らが話したくても応えてくれるかどうかは行ってみないとわからないさ」


「じゃあ行きます」


「お兄様?」


「あの女が脱獄したんだ。もし生きているのなら、遅かれ早かれあの女はまた僕らを狙ってくるよ。あの女の父上への執着は凄まじいからね。自分が死ぬか、父上を手に入れるまでは絶対諦めないと思う」



潔く諦められる人間ならここまで拗れていない。


暗く冷たい瞳でそう呟いた兄の中に、隠しきれない憎悪が揺らめいているのを感じる。



「それに、もし洗礼によって神と対話ができるなら、どうしてこんな事態になったのか本人の口から説明してもらいたいですね。帝国の人達はどうであれ、僕とヴィオラは完全に巻き込まれた側の人間ですから」


「あちゃー。それ言われちゃったらこっち何も言えないじゃんよー。やらかしたの前皇帝だから俺らに当たられても困っちゃうよ?」


「俺も何も言えないな…。あんなクソ野郎でも俺の父親であるのは事実だ。すまない二人とも。謝ってすむ問題じゃないのはわかっているが・・・」



そう言って皇弟であるノアはヴィオラ達に頭を下げた。


帝国の皇族であるノアに頭を下げさせてしまった事実にヴィオラ達は固まり、ロイドは慌てふためく。



「の、ノア様!面をお上げください!!」


「そ、そうです!伯爵の子供に過ぎない僕らに頭なんか下げないでください。僕が言いたかったのは義母や祖父みたいな腹の中が真っ黒な人間がいる面倒な家庭の子供を選んだ理由を聞きたいだけで───」


「身内のしでかしたことで他国の民に多大な迷惑をかけているのは事実だ。頭を下げるのは当然だろう」




まだ成人前の17歳の少年であっても、国を守るという皇族としての矜持と責任を強く持っているノアに、クリスフォード達は改めて格の違いを見た。




そして話し合いの結果、ヴィオラ達は自国の教会に洗礼を受けに行くことが決まった。







◇◇◇◇





オルディアン領内にある大聖堂にて、魔力判定に使われる聖なる水晶に二人は手を当てる。


クリスフォードとヴィオラは目を合わせて頷き、少量の魔力を同時に水晶に流した。



淡い金色と闇色は混ざり合い、金色も闇色も打ち消して煌めく銀色の光を放つ。



その眩しさに思わず目を細めると、二人の脳内に第3者の声が響いた。





『やっと貴方達と言葉を交わす事ができました。生き延びてくれた事に感謝いたします』





それは清らかで、優しい女性の声だった。


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