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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
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幻覚草⑵ side エイダン



「マリーベルも幻覚草を飲まされていたのか」


「恐らくな」




レオンハルトが短く答える。



その答えに、エイダンとアルベルトは顔を顰めた。



「義姉上は当時、学園でイザベラ様を徹底的に避けてお茶会に参加した事はなかったので、恐らく公爵家で飲まされていたのではないでしょうか」


「・・・・・・・・・」




マリーベルも結婚後、情緒不安定だった。



どんなに身の潔白を訴えても響かなかったのは、幻覚草の作用で不貞の現場を見せられていたからか。





────もう無駄だとわかっていても、無理だとわかっていても、何故あの時救えなかったのか、


何故、愛する人を蝕む悪意に気づけなかったのか、繰り返し思い返しては後悔で身を切られる。



幸せになるために結婚したんだ。


公爵家で辛い思いをした分、自分の側で笑っていて欲しかったのに、2人で笑い合えたのはほんの一瞬の時だけ。



一瞬で、崩れ去った。




「あの時・・・、俺が鑑定魔法を使えていれば、マリーベルを救えたのか・・・?」


「・・・無理だな。俺らが鑑定魔法の魔術を完成させたのは4年前。内乱で蔓延る魔草の摘発をする為に俺とジルが長年かけて魔術を組んだ。10年前なら鑑定魔法自体がこの世に存在してない」




絶望的な返答に自嘲する。


どう足掻いても、エイダンにマリーベルは救えない。そう言われたも同然だった。




どんなに希っても、


2人が幸せになる道はなかったのか?





「イザベラから幻覚草を仕入れて邸の者に飲ませたのは、───アルベルト、お前か?」



じっとアルベルトを見据えて答えを待つ。


その問いにアルベルトは顔を真っ青にして首を横に振った。「違うっ」と連呼しながら。



「だがお前がイザベラと接触していたのは間違いないではないか。一番幻覚草を手に入れやすい。そして俺を憎んでたから動機もある」



「僕じゃない!僕はレオンハルト様に会うまで幻覚草の存在すら知らなかった!」




レオンハルトに会うまで?



「そういえば、何でお前ら知り合いなんだ?当時は俺ともまだ面識はなかったよな?なぜ魔力持ちでもないアルベルトとお前が?」



「10年前に幻覚草の密輸の現場を探る為にバレンシアに行ったのが俺とジルと、裏皇家のマルクっていうナンバー2の男の3人だったんだよ。調査の結果マッケンリー公爵とオルディアン伯爵家が浮上してきた。で、調査してるうちにコイツが追い出されて勘当されて、しかも殺されそうになってたから助けて詳しく事情を聞いたってわけ」 


「殺されそうになった?」



「・・・僕が勘当された後、新聞の訃報欄で義姉上が亡くなった事を知りました・・・。そしてその数日後、義姉上の専属侍女の事故死が新聞一覧に載っていて、違和感を感じました。あの専属侍女は、僕が義父上達に進言して義姉上付きの侍女にしてもらったんですよ。────イザベラ様の勧めで・・・」



「・・・・・・なんだと?」




エイダンの体から再び魔力が漏れ、

アルベルトを威圧する。



「・・・・・・っ!」


「エイダン、やめろ!」



レオンハルトの制止で威圧を解いたが、動揺を抑えきれない。何故ならあの事故死した侍女は、最期までマリーベルの側にいた者だ。


その者がイザベラの手の者だとすると、幻覚草だけでなくマリーベルの死すら怪しくなってくる。



魔力なしのアルベルトはエイダンの魔力による威圧を受け、息を乱していた。目には涙を浮かべている。



「あの時はっ、憔悴してどんどん弱っている義姉上の為だと思ってたんだ・・・っ、公爵家で一番長く義姉上に仕えていて仲が良かったと聞いたから・・・っ」



実際あの者が側付きになった時、マリーベルがとても喜んでいたのをエイダンは思い出した。


それが後にアルベルトが勘当される事態になり、新聞で2人の死を確認した時、アルベルトは真っ先にイザベラの顔が浮かんだらしい。




もしかしたら、自分はとんでもない事に手を貸してしまったのではないかと怖くなったのだと。




だからイザベラに確かめに、単身で彼女に会いにいったらその帰りに賊に襲われ、そこをオルディアン家を調査していたレオンハルトが助けたらしい。


そしてジルの闇魔法でアルベルトは死んだという記憶を賊に植え付け、依頼元に返したそうだ。




もしそれが本当の話なら、アルベルトの仮説が正しいという事になる。



口封じの為にアルベルトを殺そうとしたのだろう。




エイダンの心拍数もあがっていく。




「あの女は僕の問いにとぼけながらも、一瞬目を逸らした。だから僕はあの侍女が義姉上の味方ではなかった事を知ったんです」



「マリーベルの死も、仕組まれたものだと?」


「・・・少なくとも僕はそう思ってます。じゃなきゃあんな都合よく侍女が事故死しますか?僕を殺そうとする動機は?」




「アルベルトを襲った賊もかなりの手練れだったぞ。学生のガキんチョが渡り合える組織じゃないと思うね」




「─────マッケンリー公爵か・・・」





マリーベルの死で、イザベラの愚行に気づいて火消しに動いたのか、それとも自身も最初から加担していたのか、





どちらにしろ、   


証拠を集めてあの親子を牢にぶち込んでやる。





誰がお前らの罪を被ってなどやるものか。


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