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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第一章 〜初恋 / 運命が動き出す音〜
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8歳 婚約

なぜかこの話が消えていたので再投稿します。(寝ぼけてスマホいじって消したのかもしれない…)




「そこ、計算違う」



「えっ、どこ!?」



「ここ。ていうか何回同じ間違いすれば気が済むの?いい加減、四則演算覚えなよ」



「う、うるさいな!俺は別に騎士になるんだから計算なんか出来なくても剣が強ければいいんだよ!」



「騎士だって勝つ為に戦術や謀ごとのスキルは必要だろ。計算も出来ない奴がどうやって勝つ為の作戦立てられるんだ?ましてや上に立つ人間になるなら人を先導して纏める力がいる。計算すら出来ない脳筋バカが、ルカの父親みたいな尊敬される騎士になれるのか?」



「うぅ・・・っ」




ヴィオラの目の前で熾烈な言い合いを繰り広げているのは幼馴染になりつつあるルカディオと、双子の兄のクリスフォード。


ルカディオとの出会いから3年。

今ではクリスフォードも交えて交流するようになった。


後継者教育が本格的に始まったルカディオは、時々こうしてクリスフォードに勉強を教えてもらいにやってくる。



ヴィオラには優しい兄だが、ルカディオに対してはスパルタなので毎回こんな言い争いを繰り広げているのだ。



爵位ではルカディオの家の方が格上な為、ヴィオラは毎回ハラハラしているのだが、当の本人達はどこ吹く風。


一見仲が悪いように見えるがお互い本音を言い合える気安い相手であり、よく2人で冒険者や英雄の本から戦術などを読み取って話に盛り上がっている。


言い争っていても、なんだかんだでルカディオはクリスフォードにも懐いていた。




「このくそシスコンめ!」



「教えてもらってる分際で随分な態度だね。別に僕はルカが脳筋バカでも一向に構わないよ。ルカが父親にテストの点で怒られるだけだしね」



「それはダメだ!父上の拳骨は痛すぎる!」



「じゃあ頑張りなよ。ヴィオだって脳筋バカより頭が良い男の方が良いよねぇ」



「え!?えっと・・・」



「そんな・・・ヴィオ・・・っ」




急に話を振られて慌てるヴィオラは直ぐに反応出来ず、その間がルカディオの不安を煽った。



「ち、違うよ!ルカはそのままのルカでカッコいいよ!」



「ヴィオ!」



ヴィオラの言葉にルカディオは頬を染めて喜ぶ。最近のルカディオは3年前と比べて背が伸び、今ではヴィオラの頭一個分ほど高い身長になっていた。


まだ8歳だが3年前から剣の稽古をしているため、同年代の子供よりもしっかりとした体躯に育ってきている。


また話し方も成長するにつれ、「僕」から「俺」に変わり、公の場合は「私」と第一人称を変えて話すようになった。



まだまだ発展途上なので、成人する頃には逞しい体躯の騎士になるであろう事は、彼の父親を見れば容易に想像がつく。



「つまり、脳筋バカは認めるって事?」



「おい!」



「お兄様!」




ケタケタと兄が笑い、それに悪態つきながらも双子と同じ時間を過ごしてくれるルカディオ。


ヴィオラは、以前と比べてとても幸せだった。



太陽のように明るい笑顔で照らしてくれるルカディオがヴィオラは大好きで、ずっとこんな時間が続けばいいのにと思う。



現実は、そうならないと分かっているけれど。







*******




「ヴィオ!・・・その顔どうしたの・・・っ」



邸の裏手の片隅で、声も出さずに泣いていたヴィオラにルカディオが駆け寄る。



「ルカ・・・」



ヴィオラは1週間前に母親に言いがかりをつけられた際、思い切り頬を叩かれ青痣になっていた。



「しばらく会えなかったのってその怪我のせい?

また伯爵夫人にやられたの!?」



「ルカ・・・っ、声大きいっ」



ヴィオラは慌てて口元に人差し指を当て、小声で静かにするようルカディオに懇願する。


どこで母親の手の者が聞いているかわからないのだ。自分の家の問題にルカディオを巻き込んで迷惑をかけるのだけは避けたかった。


負担をかけてルカディオに嫌われるのが怖いのだ。



「ご・・・ごめん、でも・・・っ。そうだ、クリスは?クリスは知ってるの?」



「・・・・・・・・・」



「ヴィオっ」



「・・・・・・お兄様は・・・・・・、私の代わりに怒ってお母様に文句言ったから、怒りで興奮してまた発作を起こしてしまったの。一昨日から寝たきりになってて・・・・・・っ」



「くそっ、夫人は何でヴィオに酷いことするんだ!

ヴィオは何も悪い事してないじゃないか」



「お母様は、お兄様の健康な体を奪ったのは私だと思ってるから・・・」



「そんなわけないじゃん!」



「・・・っ、ルカ・・・どうしよう・・・っ、お兄様がこのまま目覚めずに死んでしまってたらどうしよう・・・っ、怖いよ。お兄様いなくなったら私1人になっちゃうっ。お兄様ぁ~・・・っ」



「・・・っ」



耐えきれずに小さく嗚咽を上げて泣くヴィオラが痛ましくて、ルカディオはぎゅっと抱きしめた。



「ヴィオは1人じゃないよ。俺がいる。そうだ!ヴィオは俺のお嫁さんになればいいよ!お嫁さんになって俺の家に来れば夫人に虐められなくてすむでしょ!」



「えっ」



「父上に、ヴィオを婚約者にしてってお願いしてみるよ」




驚きすぎて涙が止まる。

大好きな男の子から突然のプロポーズ。


意味を理解すると急速に顔に熱がたまる。




うれしい。

すごく嬉しい。




「お・・・お嫁さんにしてくれるの?」



顔を赤く染めて自分を見上げてくるヴィオラの視線に、ルカディオも耳まで赤く染め、「うん!」と頷いた。




この数日後、2人は正式に婚約した。


代々騎士団を束ねる国の盾であるフォルスター侯爵家にとって、医療の最先端をリードしているオルディアン伯爵家との縁談はまたとない良縁だった。


優秀な医師の派遣事業や領地の主要な産業である薬草の栽培や薬の精製は、怪我の絶えない騎士団でも多大な恩恵を受けている。



そしてオルディアン伯爵家にとっても、盗賊や魔物による薬草栽培の被害をフォルスター侯爵家から派遣された騎士に警護してもらう事により、収穫量が増え、利益が見込めるのは明らかだった。



2人の婚約は誰もが喜んだ。





たった1人を除いて。





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