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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第二章 〜点と線 / 隠された力〜
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王都からの呼び出し





父が王都に戻って1ヶ月半が過ぎた頃、グレンハーベル帝国へ行く準備が出来たので王都へ戻るよう知らせが届いた。



2年半ぶりに王都に戻れる。




(ルカディオに会える!)




ヴィオラは嬉し過ぎて出発の1週間前からソワソワして落ち着かず、クリスフォードに呆れられた。


ルカディオに手紙で王都に戻る事を知らせたところ、とても喜んでくれて到着時間を見計らって会いにきてくれるそうだ。



(嬉しい。早く会いたいな)








クリスフォードはあれから新薬を飲むのをやめ、体力回復に努めた。やはり飲むのをやめた途端、徐々に回復の兆しを見せている。


最近では王都にいた時のように邸内でどこでも歩き回れるくらいには回復した。まだ走ったり等はできないが、それでもほぼ寝てるか座ってるかの生活に比べたら大分元気になったと思う。


ただ、やはりたまに動悸が酷い時があるみたいで、それが何かの病なのか魔力暴走の前触れなのかは未だわからない。


新しく来た侍医はヴィオラ達の魔力の事は知らないので相談は出来なかったが、バレットより人柄が誠実な人で腕も良く、信用できそうな人だった。




今の邸は、母がいた頃の殺伐とした空気は何処にもなく、邸内の廊下を堂々と歩けるのも嘘のようだ。


食事も、食堂でクリスフォード達と食べるようになった。今までは母と顔を合わせるのが嫌で部屋で食べるか、クリスフォードの看病をしながら2人で食べていた。


最初はロイド達やカリナは遠慮していたが、ミオの記憶があるヴィオラは皆でわいわい食べる食事を前からやりたかったので、『寂しい』を連呼して頼み込み、使用人も交えて皆でお喋りしながら食事を楽しんだ。


クリスフォードも殊の外楽しかったようで、それから皆で食べる事が増えていった。




*******





「この商会の使途不明金、工場で精製した毒を密売して得た金っぽいね。科目がマッケンリー公爵家への返済金になってるものがあるけど、ウチあの家に借金してたっけ?」


クリスフォードが集めた証拠を見比べて見解を述べる。



「いえ、製薬工場の建設の際に出資はしていただきましたが、今現在返済しなければならないような金銭取引はしていないですね」



ロイドの執務室にはクリスフォード、ケンウッド、ヴィオラが集まり、4人で例の件について話し合っている。




ペレジウムの毒はやはり量産され、密売されていた。


だが売人と購入者の間に何人も人を挟んでいるようで、必ず途中で邪魔が入り、本当の購入者を未だに特定できていなかった。


マッケンリー公爵と購入者の売買取引の証拠を見つけなければ、オルディアン家が事業で毒を精製して闇取引をしてると疑われかねない事態だ。



「何なんですかねコレ・・・もう絶対にこれ、オルディアン家を潰しにかかってますよね?」



ロイドが頭を抱えて項垂れている。問題の規模が大き過ぎて頭で処理できていないようだ。


「いや、潰そうとしてるっていうより、これはマッケンリー公爵がオルディアン家の薬事業を隠れ蓑にして、闇取引で儲けてるよね。売り先がどこの誰なのかで、また罪の重さが変わりそうだけど」



クリスフォードの推理に他の3人の顔から血の気が引く。




そして、ヴィオラの頭の中にふと一つの国名が浮かんだ。





「────グレンハーベル・・・」



ヴィオラが小さく呟いた言葉にロイドがハッとする。




「お嬢様、もしかしてこれは、密輸出ですか?」


「ヴィオ、どういうこと?」



クリスフォードが2人の会話に入り、先を促す。



「ペレジウムの材料が、グレンハーベルの輸入品じゃないかって前にロイドと話してたの。粉末に精製さえしなければ農薬や殺虫剤として正規に輸入する事は可能だから。だから材料を輸入してオルディアン領で精製して毒にし、それをまたグレンハーベルに輸出して戻してるのかもってちょっと思っただけ」


「確かにそれだと、購入者が捕まらないのも納得ですね。あっちは内戦続きで戦のプロがどこにでもいる。購入者を特定させないのもお手の物でしょう」



ケンウッドがヴィオラの考えに賛同する。影の報告では売り先はとても用心深く、邪魔の入り方などを見るに組織的な、かなりの手練れの者達だという報告を受けていたらしい。


オルディアン家の預かり知らぬところで闇取引が行われている事は既に父にも報告を上げていて、今後の対応については王都で話し合う事になっている。



「もし売り先がグレンハーベルだったら厄介じゃない?また内乱起こそうとしてる輩だったりでもしたら幇助罪に問われかねないよね」


「ああもう・・・・・・目眩がしてきた」



ロイドが片手で顔を覆い天を仰ぐ。



調べれば調べるほど規模がどんどん膨れ上がり、この先を思うとヴィオラも恐怖を感じる。



(どうしてこうなるまでに手を打てなかったの)



「ほんと、父上のポンコツ過ぎにも程があるでしょ。動くの遅すぎなんだよ。子供に尻拭いさせるなって言ったそばから何この大事件。どうすんのコレ」



双子から怒りのオーラを感じ取ったケンウッドは手早く資料をまとめ、早々に話を打ち切ろうとしている。



「と、とりあえず、これらの証拠を持って王都に戻りましょう。マッケンリー公爵家も影が調べているので新しい情報が入るかもしれません」


「グレンハーベルで確かめなきゃいけない事が増えたね」



「3人ともお気をつけて。私は領地でお帰りを待ってますので・・・・・・」



ロイドはこの数十分でだいぶ老けたような気がする。気持ちはわかる。規模の大きい謀略に絡め取られて既にオルディアン家は身動き取れない事態に陥っているのだ。



ここから父はどう挽回する気なのだろう。

あの父に出来るのか、不安しかない。




「そうだロイド、私たちがグレンハーベルに行ってる間に揃えて欲しいものがあるの」



ヴィオラはロイドにメモの切れ端を渡す。そのメモを見たロイドは怪訝な顔をした。



「お嬢様、これで一体何をなさるんですか?」



「私とお兄様の商会で扱う最初の商品の材料よ」




私達が自立する為の第一歩になる商品だ。






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