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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第二章 〜点と線 / 隠された力〜
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許さない



「うあああああっ、なんて事だっ、何でこんな・・・っ」

  



誰か説明してほしい。


久々に会った父親が、自分達に会うなり床に崩れて突然号泣しだした。一体どういう事なのか。


クリスフォードとヴィオラは顔を見合わせてどうすべきか目線だけで会話をするが、良い案が何も思いつかない。


着飾った母はというと、泣き崩れる父に寄り添おうと手を伸ばしているが、さっきから振り払われている。



(何このカオス・・・)




2人はロイドに視線を送り、何とかしろと訴えるが勢いよく首を横に振られ、仕方なさそうにクリスフォードが口を開いた。



「お久しぶりです、父上。何やかんやで7年ぶりでしょうか?ご活躍はかねがね聞いておりますよ。お元気そうで何よりです」



どう見ても元気そうじゃない父親に対して、初っ端から嫌味をかましているクリスフォード。


その横でロイドは白目を剥きそうになっている。




ヴィオラは改めて父の顔を見た。


ヴィオラとしては、ルカディオとの婚約手続きの際に会ったきりなので実際には2年ぶりなのだが、前世の記憶を思い出してからは初めてだ。


正直、2年前は母イザベラがずっと隣にいたのと、久しぶりに会った父親に、話すどころか目も合わせてもらえなかった事にショックを受け、ずっとルカディオだけを見てあの日を乗り切った記憶がある。


改めて見る父の顔は、やはり自分達にそっくりだった。クリスフォードとは黒髪も瞳の色も同じで、兄が大人になったら父のような容姿になるのだろうと誰もが疑いもしないほど、とにかく似ていたのだ。



そしてその父は未だ泣いていて、兄の挨拶にも返事が出来ないでいる。ずっと手を振り払われ続けている母が、何故かこちらをすごい形相で睨んでいる事も、意味がわからない。





本当に、誰か説明してほしい。





*********




「さっきは取り乱してすまなかった。・・・久しぶりだな2人とも。・・・大きくなったな」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」




応接室のソファに、ローテーブルを挟んで父と向かい合わせに座っている。そして父の後ろにケンウッド、ヴィオラ達の後ろにはロイドが立っている。



この話し合いの場に、父が母の同席を頑なに拒んだので再びカオスな状況になった。最終的には先日の鞭打ちの件を持ち出して反省の色が見えないとし、母にしばらく部屋に謹慎を言い渡して今に至る。



既にこの場にいる全員が疲れていた。




「────わかっている。お前達はさぞかし俺を恨んでいるだろうな。今まで帰らなくて申し訳───」


「あの、そういうの要らないんで、さっさと本題に入ってもらえませんか?」


「・・・お兄様」



父エイダンの言葉を遮り、クリスフォードは謝罪は受け付けない旨を明確に示した。


エイダンの顔が悲しげに歪む。

傷ついているのが見て取れた。


どういうことだろう。父はヴィオラ達の事を愛していなかったのではないだろうか?だから長年放置してきたのではないのだろうか?



「ケンウッド」


「かしこまりました」



クリスフォードの呼びかけに、ケンウッドはいつものように風属性の遮音魔法を部屋にかけた。



「単刀直入に言います。僕の長年の体調不良の原因は魔力酔いの疑いがあり、更には母上に毒を盛られている可能性が高いです」


「・・・ケンウッドから聞いている。お前からの手紙を読んで魔力については俺も驚いた。今こちらの方でお前達の判定を行った司祭を探しているが、既に10年近く経過しているため苦戦している」


「判定の捏造の証拠を探すより、僕達の魔力判定を行った方が早いと思いますけど」


「そんな簡単な話ではない。魔力測定器は教会預かりで厳重に保管されている。イザベラの独断犯行の証拠を掴まない限り、魔力保持者の申請をしなかった罪は免れないんだ」



はあ・・・と深いため息をついてエイダンは片手で顔を覆った。前代未聞の不祥事に頭を痛めているらしい。



「お父様は、魔力判定の時にいなかったんですか?」



ヴィオラは思い切って聞いてみた。


100日目の洗礼式は前世でいうところのお宮参りみたいなものだ。両親が生まれた子にする初めての公式行事でもある。


その場に父はいたのか、神に自分達の幸せを願ってくれたのかを聞きたかった。でも、予想通りの答えが返ってきた。



「・・・すまない。私は仕事で行けなかった」


「でしょうね。もし貴方が行っていればこんな面倒な事にはなってないでしょう。で?どうするんです?このまま地道に母上の不正の証拠を探すのか、秘密裏に魔力判定を行うのか、どちらにしろ早くしないとそのうち僕らは魔力暴走起こして、反逆者の烙印を押される事になりますよ」



情けない父親の返答にクリスフォードは苛立ちを隠しもせず、詰めるようにエイダンに決断を迫った。



「分かっている。そう急かすな。俺も今は混乱していて頭が正常に働かない。詳しい話は明日にしよう。とりあえず・・・・・・これだけは言わせてくれ。すまなか──」


「許しませんよ」



再びクリスフォードがエイダンの言葉を遮り、

拒絶した。


憎悪を露わにして、エイダンを睨みつける。

子供とは思えない鋭い眼光に、エイダンは息を飲んだ。



「許すわけないでしょう。こっちはこの10年ズタズタに傷つけられてきたんだ。たとえ、ヴィオが許したとしても僕は絶対に許さない。せいぜい貴方は僕に爵位が移った時に尻拭いさせる事がないよう、今後はしっかり当主としての使命を果たして下さい」



部屋が沈黙に包まれる。

それはとても長い時間のように感じられた。



そして、







「────そうだな・・・」




父のか細い声が聞こえた。


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