薬師として生きていく
「お兄様。私はこれより、薬師として生きていきます。そして、お兄様の病気は私が治すわ」
「え?ヴィオが?」
目をまんまるにして驚いているクリスフォードに再度自分の決意を伝える。
「はい。前世のミオの世界は、この国の医療よりも遥かに発展していました。しかも、治癒魔法に頼らず、数多の医療知識と薬を用いて、人の手でたくさんの怪我や病を治していたのです」
「魔法に頼らず病を治す!?そんな事ができるの?」
「ミオの世界では魔法自体が存在しないのです。その代わり、科学という技術で生み出された魔法のような道具が沢山存在していて、その道具と、薬と、膨大な医療知識を駆使して、人の手で治療するのです」
「・・・・・・魔法を使わず人の手で・・・?もしそれがこの国で実現したら、この国の医療が土台からひっくり返りそうだけど・・・それを、ヴィオがやるつもりなの・・・?」
「はい。今の私にはミオの知識があります。なれずとも、かつては医者になるべく勉強した医学知識、薬師としての知識も仕事をしていた経験もある。なんの因果か、今世の私も医師を輩出する家系の生まれであり、領地の産業は薬です。この知識を生かすべきだと思いました」
「・・・・・・・・・」
「・・・お兄様?どうしたの?」
「ううん。何か・・・、やっぱり前のヴィオと違うなって思って・・・。口調もそうだけど、見た目は子供だけど、なんか大人と話してるみたいだ」
「────嫌になった?」
「ううんっ、そうじゃないよ!ただ、なんか置いていかれたような感じがして、ちょっと寂しくなっただけ・・・」
クリスフォードは眉を下げて肩を竦める。
確かに、ミオの記憶が戻ってから精神年齢は上がったので、そう見られてもおかしくないかもしれない。
それでも、ヴィオラがクリスフォードの妹であり、兄を想っていることに変わりはない。
「お兄様。確かに私には28歳のミオの記憶があるので多少は前世の自分に引っ張られてる所があるのは否定しません。でも、私はお兄様の妹です。私がお兄様のこと大好きなのも変わってないです。だからお兄様のこと治したいの。私のたった1人の家族だから」
クリスフォードの手を握り、顔を見上げる。
その体温から、兄を大切に思っている事を伝えると、クリスフォードはへにゃっと嬉しそうに、安堵したように笑った。
「ありがとう、ヴィオ」
「まずは、お兄様の病気を特定することから始めましょう。それから領地の薬草や精製している薬についても調べたいけど、誰に聞けばいいのかな・・・」
「執事のロイドに聞けばいいよ。父上の代理で領地経営をしているから詳しいはずだよ。ただ、ヴィオが頑張るのはいいけど1つだけ約束して」
「約束?」
「ヴィオがやろうとしてることを母上に気取らせないこと。バレたら絶対潰される。それから僕付きの侍女や侍従は信用しないで。今は寝る時間で使用人下げた後だからよかったけど、彼等がいる時は今の話はしちゃダメ。わかった?」
「わかったけど・・・信用できないって、どうして?」
ヴィオラが訪ねると、クリスフォードは困った顔を見せた。しばらく考えこんでいたが「今のヴィオなら話しても大丈夫かな」と決心したようで、ヴィオラにある事を打ち明けた。
「母上はね、僕の事なんか微塵も愛してないんだよ」
それはヴィオラに想像もつかない、驚きの事実だった。
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