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"SERVANT"起動。

ーー俺の人生って、パッとしねぇ…


そんな事を考えながら、俺はいつも通り、学校からの帰路に着く。


俺はきっと生まれた時から、"非凡な何か"など持ち合わせていなかったのだ。


その証拠に、俺の名前。「佐藤太郎」って、テンプレート過ぎるにも程がある…てか苗字はともかく、名前に関しては完全に意図的だろ!


親のテキトー加減には、何度ため息をついたことか……


俺の"THE 平凡ライフ"はこんなものではない。


ルックスは至って普通。クラスの陽キャ女子グループには、"箸にも棒にもかからない見た目"と影で太鼓判を押されていた。


言うまでもないだろうが、俺は"彼女いない歴=年齢"である。


更に言うまでもないだろうが、俺は"そっち"の経験もない。


テストは常に平均点。先生からは、「ある意味、才能」と不名誉すぎる才能を見出してもらった。


運動に関しても、著しく下手でもないが、決して上手くもないという一番中途半端でつまらないパターン。


このように、俺の人生は何を為しても普通のいや、"普通すぎる"人生なのだ。


ーー俺もアニメの主人公みたいに非凡な人間になりたかった……



でもそんな"普通すぎる人生"の幕引きは、思ってたよりもはるかに意外なものだと、この時の俺はまだ知らなかった。………




そんな考え事に耽っている時だった。俺が横断歩道を渡ろうとすると、そこに突然クラクションの音が響き渡った。


眩しい光がその目に差し込むと、刹那、体に鈍痛が走った。



「ドンっっっっ!」



ーー何だか…周りが騒がしいな……


「誰か救急車を呼べ!!早く!!!」


ーー救急車……?


しばらくして、体に異常な寒さが走った。そして、その時初めて、俺は自分が車に轢かれたことに気づいた。


ーー俺……車に轢かれたのか……


霞む視界を鮮血が染め上げる。


ーーうわ…血…すご……


俺はこの時、直感的かつ明確に自分の「死」を悟った。普通の人ならこういう時、自分の人生を回顧したりするのだろう。 


しかし残念なことに、俺は今際の時でさえ、自分の人生を回顧することが出来ないみたいだ。


ーー俺の人生……やっぱりパッとしねぇ…………


さっきまで騒がしかった周りが、急に静かになった。


不思議と寒さも感じない。


ーー次はもっと…非凡な人間になれますように……



こうして、俺の"THE 平凡ライフ"は実に呆気なく幕を閉じた。





【……"Administrator,佐藤太郎様"の生命反応の消失を確認。】




【System Call…… "SERVANT" 起動します。】





脳内に機械音が響いた。そして俺が目を覚ますと、そこには真っ暗な世界が広がっていた。


「何も見えない…俺…死んだのか?」


【いえ、厳密には、佐藤様はまだ死んでいません。】


「うわぁぁぁ!」


突然、機械的な女性の声が俺の言葉に答えた。


「だ、誰だ!?」


【私は、"Administrator,佐藤太郎様"のリクエストを完璧な形で遂行する"完全自立思考型従属システム:SERVANT"です。】


俺の理解力が乏しいせいだろうか。言っていることが1ミリも理解できなかった。


「……どういうこと?」


【簡単に言えば、「佐藤様の願いを何でも叶えることができるシステム」ということです。】


マルチ商法の勧誘くらいの胡散臭さを感じる。


「ふーん…そいつは、大層なシステムだな。」


俺は嫌味ったらしい口調と表情で、システムを侮った。


「じゃあSERVANTさんよ、これは一体どういう状況なのか説明してくれ。」


【はい、2021年10月10日16時45分。佐藤太郎様は失血性ショックにより死亡しました。】


やはりあれは夢ではなかったようだ。


【そしてSERVANTはその生命反応の消失を確認すると同時に起動、佐藤様の"魂"をこの精神世界に留めることで現在の意識伝達を可能にしています。】


SFじみた話だが、確かにそれなら今の説明がつく。「普通すぎた人生だ。こんなサプライズも悪くない。」俺は無理矢理自分をそう納得させた。


「要するに、俺は今半分死んで、半分生きてるみたいな状態なわけね。」


【その通りです。】


「で、俺の魂とやらをここに閉じ込めてどうするわけ?追悼でもしてくれんの?」


【そうではありません。結論から申し上げると、佐藤太郎様には今から、"異世界に転生"して頂きます。】


「………………………………は⁉︎」


俺は思わず、間抜けな声を上げた。こんな十分ファンタジーな状況においても、その響きはあまりに非現実的なものに思えたからだ。


「異世界転生⁉︎ってなんで急に⁉︎」


【はい。SERVANTは原則、リアルワールドに干渉することが出来ません。したがって、システムによる損傷したリアルボディの修復は不可能です。ですが、システムでアバターを作成、そのアバターに佐藤様の魂を適応させ、異世界へ転送すれば理論上、生前の記憶を残したまま蘇生することが可能になるのです。】


"魂を別の器に移し替えることで蘇生を実行する"。この理解がなされた時、俺の中を埋め尽くしていた"困惑"は"形容し難い高揚感"に姿を変えた。


狂わしいほどに憧れた"非凡な人間"になれるかもしれないという高揚感に。


「異世界ってことは、"魔法"みたいな特別な力とかがあったり……する?」


【はい。現在転送を予定している異世界には、"魔法"や"魔王"といった現実世界では空想上の産物とされているものが存在しています。】


「マジか!!!!!!!!!!」


この時、俺は胸躍るような昂りに浸ると同時に初めにSERVANTが口にした言葉を思い出した。


「SERVANT…お前は初め、『俺の願いをなんでも叶えることができる』システムって言ったよな?」


【はい。SERVANTのメインタスクは佐藤様のリクエストを完璧な形で遂行することです。】


「じゃあ、転生する俺をマンガの主人公みたいに特別で、強くてイケメンで、女の子からもモテモテの"非凡な人間"にデザインすることは可能か?」


【当然、可能です。アバターの設計に先ほど列挙した要素を組み込みます。】


「きたきたきたぁぁ!!これでもう、『普通』だの『箸にも棒にもかからない』だの言われる人生とはおさらばだぁ!!」


俺の平凡すぎる人生は、実に呆気なく幕を閉じた。


【アバターの作成が完了。アバターと魂の接続を確認、異常ありません。】


何の面白みもない人生だった。


【転送準備……完了しました。】


そして、そんな人生から一転。今から俺の"華々しく、波瀾万丈な人生"が幕を開ける。



【転送を実行しますか?】



俺はこれから異世界で、アニメの主人公のような非凡な人間として生きていくんだ!!



「YES!!!!!!!」



【佐藤様の許諾を確認。転送を開始します。】


SERVANTがそう言うと、先ほどまで真っ暗だった世界が一瞬にして、眩しい光に包まれた。






















































初連載作品です。こちらが初めての執筆活動となりますので是非温かい目でご一読ください!感想とか頂けるととても励みになります!

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