暇つぶしってときにとんでもないネタを生み出す
「前にさぁ、台風の日にベランダに閉じ込められたことがあるのよ。」
「え、なにそれ?危険じゃん。」
何も代わり映えのない一日、今日も何もなく終わると思うとなんとなく憂鬱になった俺は幼馴染の彼女と電話してた。
別に付き合ってもいなければ頻繁に連絡しているわけでもない。ただなんとなくお互いに連絡することがあるだけだ。
ちょっと天然なところがある彼女と話でもすればなんとなく気が晴れるかなぁ?ぐらいの感じだったが、ちょと面白そうな話が出てきた。
「外がどんな感じか気になってね。ちょっとベランダに出たんだけど、そのときに窓の鍵をしっかり開けてなかったのよ。そしたら窓閉めたはずみに鍵かかっちゃって。」
「うわぁ、そんな話漫画とかでしか聞いたことないようなこと本当に起こるんだ。」
よくもまあそんなシチュエーションになれるもんだ。やはり彼女は持ってる。
「それで当然ながら携帯とか持ってなくて…台風だからベランダに吹き込んでビショビショになっちゃって。」
「え、大丈夫だったの?」
「1時間ぐらいベランダに居たんだけど、たまたまお隣さんが気づいてくれてね。もちろん部屋の鍵も掛けてるから、大家さんに連絡してくれて合鍵で開けてもらったんだよね。」
「よくお隣さん気づいてくれたね。めっちゃ運が良かった…のか?いや、そもそもベランダに閉じ込められるなんてよっぽど運が悪いぞ。」
「うるさい。でもまあ無事に帰れたから今笑い話に出来るんだけどね。」
「まあ確かに無事で良かったね。」
いやはや本当に良かったとも思うが、そんな体験談を持ってる彼女はある意味すごい。
俺達は笑いながら言い合ってから電話を切った。
その数週間後のことだった。
テレビで猛烈な台風が関東を直撃するコースになる可能性が高いと盛んに報道していた。
俺はなんとなく彼女にメッセージを送っていた。
『関東台風直撃コースらしいね』
『見た、大変みたいね。仕事めんどくさい~』
『電車止まったら休みでしょ?』
『わかんないけどね』
そんなどうでもいい会話をしていたが、ふといたずら心が芽生えた。
『猛烈な台風らしいから今回は閉じ込められないようにねw』
さてどんな返しが来るかな。
『閉じ込められたいよ!』
『ドMかっ!!』
俺はすかさず返信した。
『間違えた、閉じ込められないよ!』
天然だとは思っていたがここまでだったとは…以来彼女は俺の中で天然ドMとして名を刻んだのだった。




