発熱④
目が覚めた。
明るくなっている。
ここは・・・和室のようだ。
いつの間にか和室の布団で寝ていたらしい。
右の脇に暖かな体温。
見ると、雫がピッタリと寄り添っている。
そして、8畳間の和室の向こうの端では高木さんが服を着たまま寝ていた。
昨晩、たしかに高木さんと話した気もするが、朦朧としていてぼんやりとしか覚えていなかった。
「ニャー」
縁側からハナちゃんが呼びかけてきた。
いつの間にかハナちゃんも来ていたらしい。
その声を聞いて、高木さんも目を覚ましたらしい。
「高木さん、おはようございます。すみませんご迷惑をおかけして。」
「いえ・・・体調はどうですか?」
「おかげさまで・・・昨日よりかなりいいです。」
体温計を渡されたので測ってみる。
37.4度。良くなってきている。
「安心しました。昨日は救急車を呼ぼうかと思ったくらいでしたから。」
「申し訳ありません。ご迷惑をおかけしてしまって。」
「大丈夫ですよ、困ったときはお互い様ですし。ご飯を作りますね、念の為おかゆでもいいですか。」
「はい、すみません・・・」
その間も、雫はピッタリとくっついて離れない。
こちらをじっと見てくる。
「雫ちゃん、昨日からずっと離れないんですよ。お水も飲みに行ってないんです。」
そうか・・心配させたんだね。
雫の背中をなでてやる。
ゴロゴロと喉を鳴らす。
「雫、もう大丈夫だよ。ご飯を食べておいで。」
こちらを心配そうに見てくる。
「大丈夫。ご飯を食べて、お水を飲んできてね。」
雫はしかたないと行った感じで立ち上がり、和室を出ていく。入り口で、振り返ってまた見る。
「大丈夫だよ」
声をかけると、仕方なく出ていった。
しかし、しばらくするとすぐに戻ってきて、またピッタリとくっついて来る。
「ほんと、雫ちゃんも私も心配したんですよ。」
高木さんは笑いながら言う。
「じゃあ、ご飯を作ってきますね。それまでは寝ていてください。」
横になって、雫の背中をなでながら、ぼんやりと天井を見る。
「雫。心配させてごめん。」
「にゃあ・・・」(心配させないでよ)
小さく鳴く雫。
するとハナちゃんが元気に鳴いてくる。
「ニャー」
怒られたのだろうか?でもなんとなく嬉しそうな声にも聞こえる。
しばらくすると、高木さんがお盆に器とレンゲを載せて運んできた。
「かんたんなもので申し訳ないんですけど。」
「いえいえ、美味しそうです。」
おかゆなんて久しぶりである。
「美味しいです。」
「それはよかったです。」
「布団を敷いてくれたんですね・・大変だったでしょう。ほんとに迷惑をかけてごめんなさい。」
「いえいえ、良くなったてきて良かったです。」
「ありがとうございます。」
「念の為、今日は一日寝ていてくださいね。」
食べ終えた器を運びながら高木さんが言う。
「はい、そうします。」
「じゃあ、お昼ごはんに食べたいものがあったら言ってくださいね。」
「え、いやそこまでしてもらったら申し訳ないですよ。」
すると高木さんは笑いながら、有無を言わさぬように
「病人はおとなしくしていてくださいね。大丈夫ですから。」
と言うのだった。
するとハナちゃんも嬉しそうに鳴いた。
「ニャー。」




