発熱② 雫Side
玄関の扉を開けて入ってきたのは、あの女だった。
「山崎さん!聞こえますか?」
体をゆすって、もう一度声をかけてきた。
「山崎さん!山崎さん!しっかりしてください」
すると、ご主人んは目をうっすらとあけて私のことを見た。
「し・・雫・・?」
もうろうとしているようである。
ようやく、目をさましてくれた・・・
「大丈夫ですか、山崎さん。」
「あ・・・高木さん・・・」
「すごい熱ですよ、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい・・・ついこんなところで寝てしまったらしい・・・」
「ちょっと待っていてください。」
あの女は、和室の押し入れを開けて布団を敷いた。
そしてご主人を布団に寝かしつけた。
そのあと、ご主人の額に濡れたタオルを置いた。
「すみません・・・ご迷惑をかけて」
「いいですよ、体温計ありますか?」
「リビングのテーブルの上に・・」
なにやら、ご主人の体に触れて何かしている。
やがて、山崎さんは寝息を立て始める。
その枕元でそれを見つめることしかできなかった。
「雫ちゃん、大丈夫だからね」
あの女は声をかけてきた。
それまで、不安で不安で仕方がなかった私は、ようやく救われた気がしたのだ。




