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うちの猫は早く寝ろと催促してくる  作者: 三枝 優
第3章
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お盆

「山崎さんは、夏休みは何か予定はありますか?」

夕食を食べながら、来週の休みの話をする。

「実家に行くのと、お墓参りに行こうと思ってます。まぁどちらも日帰りですが。」

実家といっても、車ですぐのところ。墓参りも日帰りで行けるところである。

「高木さんは予定はあるのですか?帰省とか。」

「そうですね・・・母からは顔を出すように言われているのですが・・」

「せっかくだから帰るのはどうですか?」

帰りたくない理由があるのだろうか。

「まぁ1日くらいは帰ろうかと思います。」

「ハナちゃんなら預かりますから大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます。でもまぁ1泊くらいで戻る予定にします。」


----

実家に戻ると、両親と近所に住んでいる妹夫婦に歓迎された。

両親は・・年老いているがまだ元気そうではある。

パソコンの調子が悪いとかで、見てほしいといわれた。

「それで、相変わらずあの家で一人で暮らしているのかい。」

「まぁ・・ね。雫もいるから寂しくはないけれど。」

高木さんのことは、話さないでいる。

どんな関係と話しにくいからだ。

「だが、一人であんな広い家で大変だろう。こちらに帰ってきてもいいんだぞ。」

「通勤が大変になるからなぁ・・・」

「まぁそうかもしれないけれど。」

両親もかなりな年だから、心配ではあるが。

実家は駅から自転車で20分ほど。通勤時間が長くなりそうだ。

それはちょっと困る。

「まぁ、考えておいてくれ。」

「そうだね、もうちょっとしたら定年だし。」

「あぁ。もうそんな年か?」

「もう定年まで10年もないよ。」

年を取ったものだ。

まぁ妹が近くに住んでいるから、両親はそれほど心配ではないのだが。


昼ご飯を一緒に食べ、夕方になるころに家に戻る。

雫とハナちゃんは縁側でくつろいでいた。

エアコンをつけてきたとはいえ、暑くないだろうか。


----

(高木さん視点)

母の家では、義父も母も歓迎してくれた。

また、義父の連れ後である子供もいろいろ話しかけてきてくれる。

「お母さん、そのあと体調は大丈夫なの?」

「もう全然大丈夫よ、心配しないでね。」

「手術をしたんだから。無理しないでね。」

「で、こちらには何時までいるの?」

「明日には帰るわよ。」

「ゆっくりしていけばいいのに・・」

「猫も待っているしね。明日には帰るわよ。」

「猫を飼ってるの?どんな猫?」

それから、スマホで撮った写真をみんなに見せる。

ハナちゃんは大人気である。

「あれ?この猫も飼っているの?」

あ・・・

ハナちゃんの写真に雫ちゃんも映っているものがあった。

「これは・・友達の猫ちゃんですよ。ハナちゃんと仲がいいの。」

山崎さんのこと、なんといえばよいのか。

友達・・・?


その夜、母の家に泊めていただいた。

お客さん用の部屋のようである。


ここは、母の家。

でも、私の家ではない。

ここでは私はお客さん。母の家族の家ではあるけれど。

母と私はもう家族ではないのだろう。

では、私の家族はどこにいるんだろう。誰なんだろう。


眠りにつくとき、脳裏に・・

キラキラとした瞳で見つめてくるハナちゃんと。

雫ちゃんを膝に抱いて微笑んでくる山崎さんの顔が浮かんだ。


----


ここは、高台になってきて見晴らしがよい。

夏の日差しは熱いが、木々を通ってきた風は少し心地よい。


「雫は元気にしているよ。ちょっと足腰が弱ってきたようだけれど。」

話しかける。

線香の香りが漂っている。

「最近は階段の上り下りがつらくなってきたようでね。夜は和室で寝るようにしたよ。」

「まぁ、私もあと何年生きられるかわからないけどね。」

手を合わせる。


少し、奥さんのことを思い出して目頭が熱くなる。

いつまでも、忘れられるものではないな。


「じゃあ、また来るよ。」

もう一度手を合わせる。


次に来るのは、秋のお彼岸だろう。

君の好きなお菓子でも供えられたらいいのだけど。

最近はカラスや動物が荒らすということで禁止らしい。

仕方がないので、家の写真の前にお供えするので許してほしい。


家に帰る途中で、お菓子屋さんによって帰ろう・・・

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